2022年11月14日

アルゲリッチ&フレンズ(すみだトリフォニーホール) 

  

 

昨日(11月13日)の森麻季/錦織健デュオリサイタルに続き、今日はアルゲリッチのコンサートへ。

 

 ネームヴァリューからいってアルゲリッチをリードにもってくるのは当然としても、個人的には今日のメインは辻彩奈さんであった。辻さんはまだ若い(25歳)けれども、演奏そのものはもちろん、立ち姿、表情、歩き方など、貫禄というか風格というかオーラを放っていて、それが力強い演奏と相まって、聴衆の心をわしづかみにするのであった。圧巻でしたね。演奏終了直後、正に割れんばかりの拍手。コロナ禍前であれば、ブラボーの声が溢れたことだろう。アルゲリッチとは今年の6月に、すでに”Homage to Ivry Gitlis”で今回と同じすみだトリフォニーホールで共演の実績がある。今回、だから「イヴリー・ギトリスへのオマージュ、再び」というタイトルになっている所以である。しょうもないことだが、同じ「ギトリスへのオマージュ」なのに、前回は”Homage to Ivry Gitis”で、今回は”Remembering Ivry Gitlis”となっているのは何か意味があるのだろうか? 

 辻さんの前にフォーレのヴァイオリン・ソナタを演奏したのが、15歳の村田夏穂さん。15歳には見えぬ幼い容姿で、なおさら天才少女ぶりが際立つとはいえ、比べるのも申し訳ないが、その直後に10歳年長の辻さんの、情念あふれ出る圧倒的な演奏を聴いてしまうと、霞んでしまうのはやむを得ないところだ。

 辻さんは、ピアニストの阪田知樹さんと10回に及ぶデュオ・リサイタルで全国ツアーを行っており、私は7月14日のトッパンホールに行った(7月24日の北九州公演が千秋楽)。今後も注目していきたい。

 

 アルゲリッチさまも、最終プログラムでは若い弦楽カルテットを従えて、引率の教師の如く、余裕かましつつ、かと言って手は抜かず、81歳とは思えぬ力強い演奏だった。驚異的でありますね。

 今回のメンバーでは、弦楽四重奏のカルテット・アマービレが2017年にMOA美術館の能楽堂で共演したことがある由、私、このときその告知を正にMOAで見て、アルゲリッチかぁ、行きたいなぁと思ったのでありますよ。実は今回のチケットは、友人のご母堂が事情があって急に行けなくなったものを、前日に急遽お譲りいただいたもの。これぞ僥倖。

 いやーいいものを聴かせていただきました。

 

 

出演

 マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)

 海老 彰子(ピアノ)

 辻 彩奈(ヴァイオリン)

 村田 夏穂(ヴァイオリン)

 カルテット・アマービレ(弦楽四重奏)

  篠原 悠那(ヴァイオリン)

  北田 千尋(ヴァイオリン)

  中 恵菜(ヴィオラ)

  笹沼 樹(チェロ)

 

曲目

 モーツァルト:4手のためのピアノ・ソナタ 二長調K.381(ピアノ;アルゲリッチ、ピアノ;海老)

 フォーレ:ヴァイオリン・ソナタ第1番 イ長調op.13(ヴァイオリン;村田、ピアノ;海老)

 フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調(ヴァイオリン;辻、ピアノ;アルゲリッチ)

 シューマン:ピアノ五重奏曲 変ホ長調op.44(ピアノ;アルゲリッチ、弦楽四重奏:カルテット・アマービレ)

 

 アンコールは最終プログラムのシューマンの後半部分。

 

会場;すみだトリフォニーホール