2021年12月18日

 

映画“偶然と想像”を見た。第71回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(審査員グランプリ)を獲得した、3篇の短篇からなるオムニバス映画。

これって、映像にする必要があるんだろうか。脚本だけで作品として完成している。あえていえば、映画よりも舞台劇に向いているんではなかろうか。いや、でもそうすると、舞台のあの大仰な身振りとセリフにこの脚本は耐えられない。静かな、抑制した俳優たちの演技はまるで演技をしていないような、逆に生きている人間はこんな風だという安心を見ている者に与えてくれる。ト書きもあまり要らないような、会話だけでストーリーを紡いでいく手法は、最近の目まぐるしく場面展開をくり返す騒々しいフィルムとは一線を画している。特に第二話で、作家にして大学教授の瀬川を演じる渋川清彦は、こりゃセリフ棒読みでないの、とまで感じさせる抑揚のないセリフまわしであった。

 監督、脚本を務めた濱口竜介は、「ドライブ・マイ・カー」(原作 村上春樹)でカンヌ国際映画祭で脚本賞、ニューヨーク映画批評家協会賞の作品賞を獲得している。映像よりはストーリーで勝負するタイプなのか、もし、これに映像の美しさが加わったらどうなるのだろう。

 来週「ドライブ・マイ・カー」を見に行くことにした。179分の長尺。水分控えていった方がいいかな。