2021年10月5日

 

今日はこれ。。日本盛 純米大吟醸 生酒

 日本盛といえば白鶴、大関などとともに灘五郷の一角を担うナショナルブランドである。地酒との区別は?と聞かれると困るが、一般的に、全国的に流通する大手メーカーの製品や、日本酒の主産地である兵庫県の灘や京都府の伏見以外で造られる日本酒のことを指すみたい。江戸時代は、灘や伏見が日本酒の名醸地であり、その酒が樽詰めされて全国に出回っていたのに対して、それ以外の場所で造られた地元の酒は「地酒」と呼ばれ、本場の酒よりも少し格の低いものとして扱われていたらしい。とはいえ今では、地酒といっても規模的には獺祭の旭酒造や久保田の朝日酒造、八海山の八海醸造は、菊正宗、黄桜などに迫る、あるいは並ぶ売上である。最近ではCraft Sakeなんていう呼び方もあるそうだが、地ビールと大手ビールメーカーのブランドの差ほどは違わない。

 地酒というとなんとなく、オートメーションではなく手造りっぽい響きもあるが、これも必ずしも全てにあてはまるわけではない。たとえば、新潟で売上2位の酒蔵である菊水酒造では、製造工程を完全自動化していると聞く。それでも「菊水」といえば、新潟を代表する「地酒」のひとつといって間違いではなかろう。実は新潟での評判は必ずしも高くない。理由はたぶん、新潟県人が手造りを尊重するからだろうと思う。ついでに言うと、昭和40年代に端麗辛口のブームの火付け役となった、あの「越乃寒梅」も、新潟での評価は決して高いものではなかった。どうも新潟県内産米を使ってないらしく、それが理由のひとつかもしれない。越乃寒梅は酒造好適米の王者、山田錦にこだわりがあり、そうなると必然的に兵庫県産米に行きつくことになるので、これはこれで、酒造りの王道を歩んでいると言えるのではないかしらん。一方「久保田」の朝日酒造は本社の目の前に自前の田んぼがあって、そこで採れた米で「朝日農研」なんていう酒を醸している。以前は本社のショールームでしか売ってなかったが、さて今はどうか。

 山口県の旭酒造の「獺祭」は、安倍元総理が、伊勢サミットで各国首脳にふるまったり、パリの3つ星レストランがワインリストに入れたりで、世界的にも有名になった。この酒蔵は、昔 杜氏に逃げられた反省に立ち、個人的な勘やワザに頼らない、完全マニュアル化した製造工程により大量生産を可能にしている。古い蔵と杜氏の職人ワザがあってこそ、うまい酒ができると信じているファンには評判が悪いが、これは大袈裟に言えば産業革命の恩恵を否定して、前近代的な手工業に戻れと言うに等しい。品質を一定させて、安価に製品を提供することを可能にしたのは機械化だろう。そんなに手造りがいいのなら、手植えと手狩りで生育、収穫した米を使えと要求しては如何。

 獺祭がんばれ、菊水がんばれダヨ。


 うまけりゃいいのよ。