2021年6月17日

 

 6月13日にEテレでオペラ映画“ボエーム”を見た。こういう形の映画は初めて見た。日本でいえばシネマ歌舞伎みたいなものか。アートやスポーツは生で見るのが一番だが、現場に足を運べない状況であれば、こういう楽しみ方もあっていいのだろう。

 この作品は2008年のオーストリア・ドイツ合作映画である。プッチーニのオペラは4幕で約1時間45分だから、映画に翻案するのはちょうどいい尺だと言える。だけど映画の場合、監督が『シーン〇〇、カット××、ヨーイ・・ハイ』なんてやるんだろうか。オーケストラなんて、演奏をぶつ切りにするのはいやだろうし。でも、どう見てもアフレコだろうなというシーンはいくつもあったような。

 当然ながら主役のミミを演じたアナ・ネトレプコがお目当てで、普段見ないEテレを視聴したのだが、やはり存在感は抜群のものがある。ミミの恋人のロドルフォはメキシコ出身のテノール、ロランド・ビリャソン。Face Bookの音楽愛好家グループではあまりいい評価がなかったが、個人的にはなかなかのものだなぁと素直に感銘を受けた。最近は胃の手術を受けたりしてあまり歌ってないとも書いてあった。

 ネトレプコは2011年6月にメトロポリタンオペラの日本公演で、この映画と同じボエームのミミ役を演じる予定だったところ、東日本大震災の福島第一原発事故に対する不安から降板している。元々ロシア出身で、15歳のときにチェルノブイリ原発事故を経験しているので、懸念には無理からぬものがある。余談ながらこの震災が起きた時、ちょうどチェコフィルが来日公演中だったが、チェコ政府はただちに空軍機を2機派遣し、チェコフィルのメンバーを始め、日本滞在中のチェコ人をいち早く帰国させた。日本に一時帰国中だった私の知り合い(夫がチェコ人)もその軍用機で家族といっしょに帰ってきたと後で聞いた。

 で、私はこのネトレプコを2012年の11月にプラハで聴いた。プラハ観光で はずせない、市民会館にあるスメタナホールでの公演。映画のときもすでにふくよかであったが、それからさらに4年が経っていちだんと迫力がましていた。チャイコフスキーのイオランタを、オペラとしてではなく歌曲として演奏するというプログラムであった。オーケストラがステージにいて、歌手たちもオペラの衣装ではなく通常のステージ姿、ただ、ネトレプコは突然客席から登場するという演出で、つかみは上々、仕上げも見事でありましたね。

 その時の写真がこれ、もちろん演奏終了後です。ピンボケの写真ばかりで、一番ましなのがこれなのが残念。

 

 

 

コロナ禍で海外へ出ることがかなわぬ状況。引退後は旅行三昧と思っていたのに実態は閉門蟄居。コロナ鬱気味。