2020年5月20日

ブックカバーチャレンジ

Day7

『Nonsense, Not-No-Sense サラリーマンのたわごと雑学-英語編 』しろがねゆきかず(新風舎)2004年11月

 

 ブックカバーチャレンジ最終日である。今までお読みいただいた方(きちんと全部読んだ人は20人いないと思うが)はお気づきのように、紹介した本の作者は直接面識のある人に限定してみた。必ずしも一般的知名度は高くない人が多かったが、きわめつけは今日のこの本である。まず誰も知らないだろう。一応商業出版の体裁はとっているからISBNコードもあり、国会図書館にも収められている(はず)。ただ、出版社がすでに倒産している。一時は年間出版点数で日本最大だった新風舎。まともな本も出してはいたが、共同出版と称する商法でトラブルが増加し、2008年1月に東京地裁に民事再生を申請、その後破産手続きに移行し、2010年2月には破産廃止で完全に消滅した。

 それはそれとして、Day1で紹介した高島俊男先生は“おもしろい”と評価したし、そのころまだ元気だった私の父も、おもしろかったと言っていた。それがどうしたという話かもしれないが、父は数十年間大学の教員として英語を教えていたから、一応英語に関してはプロフェッショナルである。その父が評価したのだから、最低限のレベルはクリアしていたのだと思う。ただ一つ、大野晋の「日本語の起源」(1957年 岩波新書)に触れた部分について、「比較言語学はいまどきはやらないだろう」と指摘していた。おっしゃる通り。大野先生、りっぱな国語学者だが、このタミル語起源説は学界ではぼこぼこに叩かれている。

その後も業績を重ね、80歳近くになって出版した「日本語練習帳」(1999年 岩波新書)は200万部近いベストセラーになった。今見てみると、私の本棚にもこの「日本語の起源」「日本語練習帳」いずれも鎮座ましましていた。「日本語の起源」の方は1994年に全面改訂された新版で、とすると系統論を捨てて、もっと極端なクレオール説に転向した論を展開しているのだろうか(クレオール語とは、移住民の言語と土着の言語が接触した結果生じた混交語のこと)。どちらにしても比較言語学の正統的方法に従っていないとして、やはり批判を浴びている。7,000キロ離れた南インドの言葉が古代日本でクレオールとして成立したと言われては、素人にも受け入れ難いものがありますが・・。読み返す気は起きないな。

サラリーマンのたわごとでしたね。タイトルに「たわごと雑学」とあるが、著者は雑学のつもりで書いたわけではないと、不満だったみたいだ・・って、これ私が書いたんだよ。銀行から某社に業務出向し、無聊をかこっていたころ手すさびに書いた原稿を持ち込んだ。当然売れるわけもなく、出版社は倒産。古書マーケット以外入手の術がない。皆さんが、新風舎から版権を引き継いだ文芸社に、「読みたいっ!!」と要望を寄せていただくと、奇蹟の復刊増刷がかかるかもしれない。「英語編」というからには続編もあるのか?乞うご期待、なんちって。