ブックカバーチャレンジ

Day3

 今日はこの本。“「好きなことだけ!を仕事にする経営」” アウトドア愛好家で知らぬものはいないスノーピークの山井太(『ふとし』ではなく『とおる』と読みます)代表取締役会長の著書である。

出会いは20年以上前、私が銀行の新潟支店にいたころのこと。当時優良企業の新規開拓を担当していた私は、三条に本社のあるスノーピークに通っていた。当時山井さんは社長を引き継いだばかりで、社名もそれまでの『(株)ヤマコウ』から現社名に変更して間もないころだった。父で創業者の山井幸雄氏が、金物問屋であった山井商店をアウトドアレジャーメーカーとして相応の規模に発展させてはいたが、折しもアウトドアブームに陰りが見えてきたころ、不安と悩みは尽きない時であった推察される。山井さんはそんなようすは微塵も感じさせず、跡取り息子というよりは、意気軒高なベンチャー企業の経営者という風情であった。

 その後成果の上がらぬ私に同情してくれたか、新規の取引はいただくことができた。事業展開に大きな夢を語り、私が銀行でエラくなったらご祝儀に何億円でも預金してあげるよと言ってくださったが、私の方はまさにジリ貧で、異動のたびに閑職に追い込まれていった。一方スノーピークは一時的な停滞を抜けた後は順調に成長を遂げ、山井さんが社長在任中に売上はおよそ8倍、株式上場も実現し、今や海外20か国に進出、世界的にもアウトドア用品のハイエンドブランドとして揺るぎない地位を確立している。就任当初はブーム下降期でいろいろご苦労もあったはずだが、山井さんを支えたものは、アウトドアに対する情熱と品質に対する絶対的な自信であったはずだ。なにしろ、スノーピークの製品は保証期間無期限である。なぜなら『壊れないから』(使用者の過失、経年劣化は除く)。本社敷地にオートキャンプ場を設け、自ら泊まり込むことも多いという。まさしく“「好きなことだけ!」を仕事にする経営”を実践している。羨ましいなどと部外者が単純に言ってすむ話ではもちろんない。メディアに採り上げられることも多く、さらに2013年 日刊工業新聞主催「第31回優秀経営者顕彰」において最優秀経営者賞を受賞、「2015年日経ビジネスが選ぶ次世代を創る100人」に選ばれるなど、業界の注目度も高い。

 今年社長の座を令嬢に引き継ぎ、ご自身は会長に就任し米国市場の本格的開拓に取り組まれている。私が2016年に帰国したとき、海外営業のお手伝いをする機会があればいいなと思って山井社長(当時)に連絡したが、スノーピークの社員は自らがアウトドア愛好家であることが絶対条件だ。小学校のときの林間学校以来アウトドアの経験のない私はまるっきりお呼びでない。

 あ、でもヨーロッパ進出はまだでしょ、私、ええ仕事しまっせ。

ますますの社業隆盛をお祈りしております。