ブックカバーチャレンジ

Day2

 今日ご紹介したいのは写真の本の左側の人、関岡英之氏である。学生時代、私この人の家庭教師をしたことがある。当時中学生の彼は大人びた・・というより妙に老成した雰囲気の少年だった。母方の祖父が商法の権威石井照久法学博士。私も法学部の学生のはしくれだったから商法の講義は受講したが、教授の名前は覚えてない。しかし、テキストの著者として石井照久の名前はなぜか鮮明に記憶している。東大教授退官後に成蹊大学に招かれ法学部を創設、間もなく学長に就任したというエラい人である。

 関岡氏が作家デビューしたのは2002年の『なんじ自身のために泣け』で同書で蓮如賞を受けている。ただ、この時は全く知らなかった。2004年刊行の『拒否できない日本』(文春新書)で年次改革要望書の存在を世に知らしめ、政財界の注目を浴びた。同書はいまだに版を重ねるロングセラーである。一時Amazonで入手困難になったときは、小泉改革の推進により日本市場拡大を図るAmazonが、政権に不都合な事実を知られたくないために、わざと売らないのだと話題になったことがある。へー、あの時の彼がこういう本を書くようになったかと、なんとなく自慢したくなるような気分だった。

 関岡氏と私はほかにも縁があって、彼は慶応大学法学部を卒業後、東京銀行に入社、1996年に私が勤務していた三菱銀行とその東銀が合併し、同僚となったというわけである。ただし『拒否できない日本』を読むまでその事実を知らず、合併後ほどなく退職した彼とは会社では全くのすれ違いであった。

 この分野の作家としては寡作で、マスメディアに顔を出すこともほとんどない人なので、必ずしも一般の知名度は高くない(と思う)。それでも、緻密な分析と冷静でユニークな批評により、前述の通り評論家として一定のポジションを確立している。写真の本は2013年の経済評論家三橋貴明氏との対談で、私が関岡氏の本で読んだ中では最も新しい出版である。三橋氏は2010年に自民党公認で参議院の比例代表で立候補するも落選、選挙ならびにその後の自民党のケアが足りなかったのか、徐々に政府批判に姿勢を変えてきている。関岡氏は、必ずしも反政権というわけではないが、自己の信ずるところに従って是々非々で発信できる人物である。基本は中国共産党を批判、TPP反対であり、保守派論客として今後さらに活躍が期待される。

 と、ここまで書いて、wikipediaで関岡氏を検索してみた。

 昨年亡くなっていた・・知らなかった。ショック。

 実家で倒れていたところを父君が発見したという。私が家庭教師で通っていたあの家で・・

 交流があったのは40年以上前だから、私が覚えていても彼が私を記憶しているかどうかは自信がなかった。会えればうれしい、関岡さん、これを見たら連絡ください、と書くつもりだった。もう、何を書こうが永遠にその機会はなくなってしまった。

 

合掌