両親が使っている冷蔵庫はかなり大型ですが、中にはほとんど何も入っておらずガランとしています。

 

父が入院したのをきっかけに、賞味期限切れの調味料や干からびた味噌など三年以上は放置されていた食材を徹底的に片付けたら、母の朝食用の果物と冷凍保管している食パンだけになってしまったからです。

 

ある日、妻が冷蔵庫の中をのぞくと、空のガラスコップと少しだけ飲み残した麦茶の入ったガラスコップがいくつも並んでいました。

 

不思議に思って母に聞いても要領を得ない答え。

 

その後も同じことが繰り返されましたが、それが何を意味するのかしばらくわかりませんでした。

 

☆☆☆

 

「お義母さん、コップ洗うのがめんどうだからじゃないの?」

 

妻の推理は次のようなものです。

 

母は昔から汚れた食器をためてから洗う人でしたが、認知機能が低下してからはそれがひどくなってシンクは汚れた食器の山。

 

そんな母なので、麦茶を飲んだコップは洗わず冷蔵庫に入れておき、次に飲むときにまた使えば洗い物が減っていい、と考えたのでは。

 

ただ、悲しいかな短期記憶が残らないので、コップを冷蔵庫に入れたことを忘れて新しいコップで飲んでまたそれを入れ、を繰り返している・・・。

 

冷蔵庫はガラガラでコップはいくつでも置けるし。

 

***

 

「少しは家事やらさんとよけいボケるで」

 

というのが介護経験豊富な叔母たちのアドバイス。

 

同感だったので、朝食の用意と自分が使った皿とコップの洗い物だけは母に任せています。

 

ただ、あまりにも食器がたまると見かねた妻がまとめ洗いしますが。

 

◇◇◇

 

母は新聞を読まなくなり、あれほど熱心にチェックしていたチラシも見なくなり、通販カタログ誌は封も切らずに放置。

 

老人ホームに入った父のことを話題にすることもほとんどなく。

 

母が認知する世界は少しずつ縮み狭くなっていくよう。

 

無駄に広くなった二世帯住宅の中で。

 

うちの猫~狭いベッドの端っこが好き