りんごが踊っている。


眩しい光の中で笑いながら

時にはコミカルに

時には力強く


他の仲間たちと一様に

キラキラ輝いて

笑顔が眩しい18歳の女の子





この卒業公演の

少し前にあった

卒業式でも同じように

キラキラ輝いていたなー




舞台を見つめながら

感動している自分も確かに居るのに

頭の中が妙に冷たくて



緊張してたのかなあ、私



回転した後少しフラッとしたり

息が上がって目の色が暗くなったり

そんな細かな発作の兆候を感じて

胸がドキッと苦しくなるのは

相変わらずで


一曲一曲終わるたびに

今日で終わるんだなあ…

やっと卒業するんだなあって


まだ終わってほしくないような

でももう終わりにしてほしいような

なんとも複雑な気持ちでした




曲の合間に

卒業生たちのビデオメッセージが

スクリーンに写しだされるのだけど


りんごは

相変わらずのりんご節で

微妙な笑いをとってきて

苦笑してしまう私。


でもそんな笑顔が終盤に

くしゃっと崩れて



中学生の時の自分に

見せてあげたいです

大丈夫だよって

言ってあげたい


と言って泣きました。




りんごのメッセージを

撮っていた先生は
その場で泣いたらしい。



私はというと

相変わらず苦しみながら
練習に出かけていくりんごの
アップダウンに付き合って
最後の最後まで出られるか
はらはらさせられた後だったから

初めはなんだか呆然と
その姿をみていました。


ふと頭をよぎったのは
中学生の最後に彼女が書いた作文でした。



一番大事なのは私自身を
好きになってあげることです。
私の心は私のことが大好き。
だからいくら傷付けても怒らないで
私が自分の心を好きになるまで
待っていてくれるのです。



青ざめた顔で作文を書いていた
あの時のりんごを思い出した時
涙が流れました。



いつも想像してたんですよね
卒業公演でもし
この苦悩に満ちたりんごが
笑顔で踊って卒業できたら
そのステキな姿に
感激して大号泣してしまうだろうなと。



でも違ったから、びっくりした。



私は薄暗い部屋に座っている
過去のりんごに思いを馳せて
泣きました。

大丈夫だよって
頑張れって


人間って複雑なものですね
その場になるまで
自分がどう思うかなんて
わからないんだなあって
実感しました。


舞台は続き、
泣きながら踊る仲間たちと
泣きながらも
一緒に最後まで笑顔で踊りきって

幕は降りました。


割れんばかりの拍手喝采
その場にいた全ての人が
感動していることを感じていました。





弱音を吐きながらも
初めて
同じ学校で
同じサークル活動を続け

完走したりんご

今になってようやく
じんわりと嬉しさを
感じています。



りんご、卒業おめでとう。



そして次の日から
息つく間もなく
次の大学に向けての
慌しい日がはじまりました。

なんせ卒業公演が大変すぎて
一ミリも準備できてません。


りんごも不安定になったり
またまた予定を詰め込もうとしたり
そんなこんなで
昨夜は久々に
大げんかしちゃいました。


あー


続くの?これ…?



昔カウンセラーさんに
言われた言葉が浮かびます


先生、だいたいいつ頃まで
不安定な感じなんでしょうか…?


と恐る恐る聞いたら


うーん、そうねえ
20歳ごろまでは
まだまだ子どもかなあ!


って言ってたなあー!!オエーオエー



新生活どうなることやら…
と恐れつつ

ネクストステージに進みます!