詩1629


「しずくとかすみ」



何で雨が好きなのだろう

そうしずくが言った


うん、

そんだね

私も不思議に思ってた


こんなにどんよりした空から

シトシトと降る雨が

特に好きだった



二人して

色違いの長靴を履いて

傘もささずに外に出たよね


そのあと必ず

しずくは風邪をひく


怒られるのは

いつも姉の私


しずくはいつだって

かすみちゃん、ごめんね

と半泣きになる


うん、いいよって

私はしずく以外からは

見えないようにウインクする


そうすると

しずくの風邪は

あっという間に治るのだ



身体の弱かったしずく

なんの取り柄もない私


二人にとって

雨は平等だ


誰にとっても

平等だ




カーテンを開けると

雲行きが怪しくなってきた

もう一時間もすれば雨が降り出すだろう


しずくは今でも長靴を履くのだろうか



私は年甲斐もなく

可愛い色の長靴を買った


そして、

それまでしずくのことを

忘れていた

と言うことに気がついた



mint