お待たせいたしましたルンルン

更新間隔がかなり空いてしまいすみません!!

地道に更新していきますので、よろしくお願いしますキラキラ

そして、ブログの不具合はまだ改善されていませんもやもやこのままずっと開かなくなってしまったらと不安ですアセアセ

どうか早く直りますように電球














*お願い*

拙い文章や誤字脱字、気になる部分は多々あるかと思いますが、多めに見て頂けるとありがたいです。






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短編小説 「壺」





前回のラスト

美里(みり)と生前の母は、祖母の部屋にある壺により不思議な体験をする。それは“器”になる事を意味するのだろうか。そして、美里は複雑な感情を持て余していた。




第十四話

夕食を終えて、皆で何となくテレビを観ていた。名前もわからない見たこともない芸能人が出ているバラエティー番組だった。私は少しビールを飲んでいた。普段飲まないのだか、何となく現実逃避をしたかったからかもしれない。
今夜はだいぶ冷えてきた。彼女の格好は薄着だったから何か羽織るものを貸してあげることになり、洋箪笥はまだ二階の元の私の部屋に置いてあるので一緒に選んでもらう事にした。
二階に上がり、それほど多くない私の服を真剣に選んでいる彼女の後ろ姿を見ていたら、とてつもない不安が押し寄せてきた。
もし、彼女にあのことを話したら、そして興味を持ったとしたら。私が帰った後で“おばあちゃんの部屋”に入りあの体験をしたとしたら。
そう考えたら震えが出てきた。そんなことは嫌だ。理屈じゃなくて、ただどうしても嫌だった。
やっぱり話すのはやめよう。
「お姉さん、これを借りてもいい?」
くるっと振り返った彼女の顔をまともに見ることができず、慌てて顔を背けてしまった。心を見透かされそうで怖かった。誤魔化すように洋箪笥から別の服を取り出して、「こっちの方が紗音(さお)ちゃんに似合うと思うよ」と差し出していた。
彼女は大きな目を更に大きくして、「わぁ、これいいですね!」と、嬉しそうに受け取った。
とっても良い子なのに、私の心はどんどん汚れていくようだった。ああ、あの壺に浄化してもらいたい。そう思っていた。

彼女は受け取った服をさっと羽織った途端に真剣な表情になった。さぁ、そろそろ話してください!と言っているようだった。
私は、一呼吸おいてゆっくり頷いてから、「まだ、よくわからないことがあるの。だからもう少し考えさせて。ちゃんと話せる時がもうすぐ来ると思うから。」と、本当にその時が来るのだろうかと思いながら表情には出さずに言った。
彼女は少し目を細めてから、うん!と頷いてくれた。
そして私はまた胸が痛くなった。

階下に降りる時、彼女が先に立っていた。一段、二段、降り始めた時、私は彼女の後ろ姿を見ていたら、さっきよりも大きな不安が急激に押し寄せてきた。と同時に何も考えられなくなっていた。
次の瞬間、私の両手は今にもその背中を押そうと前に突き出していた。頭の中は真っ白で、その事を認識できないでいた。
その時、パンツの後ろポケットに入れていた携帯から彼からの電話用の着信音が鳴った。
ハッと我に帰り、同じく音に反応して振り返った彼女と目があった。
動けない。両手は中途半端に下がった位置で宙に浮いていた。
携帯電話にでないの?と彼女の目が不思議そうに言っていた。

私は、携帯が何処でなっているのかも考えることができなくなっていた。曲はまだ鳴り続けている。
ようやく在りかがわかり、もたついた手で電話に出ることができた。
出てからようやく彼からの電話だったと認識でした。

「恭ちゃん。」
そう声に出せた後は、言葉が出なくなっていた。
「美里、大丈夫か?!」
何も知らない彼が最初にそう言ったのだった。

気がつくと、彼女はもう下に降りたらしく視界にはいなくなっていた。
彼の声かけは続いている。
「うん、大丈夫。」
彼が言った“大丈夫か?”の意味は分からないし、今の自分にはそれを考える余裕が無く、
「優斗と紗音ちゃんがきてて、私も久しぶりにビールを飲んじゃったから、ちょっと酔っ払っちゃったのかも」と答えていた。
そうだ、きっとビールのせいだ。酔ってふらつく自分を守ろうとして無意識に彼女の背に手をかけようとしたんだ。
心の中で、そう自分に言い訳をしていた。

その後私は彼と何を話したのだろう。
頭の中は、さっきの自分の行動のことでいっぱいだった。何をしようとしたのだろう。伸びた手がしようとしていた事を考えるのが怖くてたまらなかった。私は、私で無くなってしまうのだろうか。そしていつの間にか電話は切れていた。


暫くして、弟が彼女を見送ってくると言って月の綺麗な夜の住宅街に駅に向かって消えていった。
私は部屋に戻って窓から月を眺めていた。
月は、なんでもお見通しだと言わんばかりに輝いている。周りの星たちもきらきらといつもより多く加勢していた。
そして、壺は青白く私を見つめて沈黙している。
私はいったい何故こんな思いをするのだろう。
まださっきの電話の声が耳に残っている、優しく温かい彼の声の力を借りて、その答えを求めるように私はツボに手を伸ばしていた。


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