【7-1】月宮の系譜・外伝2~bi-eye(片青眼) 第7章 楚長笑 no.1 | yuz的 益者三楽

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第7章 楚長笑

 

東宮殿

秦玉風(引凰華)は幾度か抵抗したが、長王(楚長笑)の身体は引き締まって固く、彼女が例え暴れたとしても、笑いながら彼女の抵抗を抑え込んでしまうだろう。

秦玉風(引凰華)は直ぐにこれ以上抵抗しても無駄だと感じ、先程の”龍殿”(周 天佑)の言葉を信じて、抵抗をやめ、彼に抱き上げられるままとなる。

 

部屋に入れば直ぐに解放されるわ。

あと少しの辛抱よ。

彼女は心の内でそう念じ、身を固くする。

 

だが、予想に反して長王(楚長笑)は秦玉風(引凰華)を抱き上げたまま、そのまま東宮殿を後にする。

秦玉風(引凰華)は驚いて言う。「私をどこに連れていくおつもりなのですか?」

 

長王(楚長笑)は暫くの間 秦玉風(引凰華)を見つめ、ゆっくりと言う。「そなたに宮を与える。我が香妃にふさわしい宮をな。」

「えっ?」

そのまま、長王(楚長笑)は何も言わず、彼女を抱き上げたまま後宮の奥へと消えていく。

 

 

未央宮 亭国皇帝(楚北捷)の宮殿

亭国皇帝(楚北捷)は先程 正殿での歓待の宴が終わり、礼服から黒みがかった深紫色の綾絹でつくられた夜衣に着替える。

维昊国との更なる友好の約も締結され、亭国皇帝(楚北捷)は心持ち安心した表情で侍従が捧げたお茶を飲もうとしたところで、 跨虎大将軍(楚漠然)とその息子たちの来訪を受ける。

 

亭国皇帝(楚北捷)はこの様な時分に代王家の者達が揃って訪ねてくる事を訝しみ、彼らを居室で待たせるように命じた後、龍の刺繍が施された深紫色の上衣を纏う。

「このような時分に来訪するとは、火急の案件という事か?して、用向きは?」

 

侍従は低く首を垂れ、恭しく答える。「皇上陛下(楚北捷)、跨虎大将軍(楚漠然)は詳細は何も申されず、ただ皇上陛下(楚北捷)に直接 詳細をお伝えしたいとおっしゃっておられました。」

この言葉に皇上陛下(楚北捷)は事が重大な事だと察し、すぐさま居室に移動する。

 

 

亭国皇帝(楚北捷)は跨虎大将軍(楚漠然)より事の詳細を聞いた後、深い溜息をもらして崩れ落ちるように椅子に腰を下ろす。

その髪には白きものが混じり、目じりには深き皺が刻まれる。

 

楚青籟は言う。「维昊族は元々遊牧民族で、彼らは一族の女子を略奪されることを一族全体への挑戦とみなし、血の制裁をもってこれを制します。今の処、我ら亭国は彼らの禁を犯し、彼らの誇りを傷つけております。…‥天籟殿(维昊国太子)は我らの把弟(義弟)、今なら我ら兄弟(楚渾犼、楚青籟)で天籟殿を説得し、事を公にせず収める事が出来ます。どうか 皇上陛下(楚北捷)にて、長王(楚長笑)殿下へかの女子を天籟殿(维昊国太子)へ帰すようご説得ください。」

 

跨虎大将軍(楚漠然)は傅き、亭国皇帝(楚北捷)の意見を求める。「皇上陛下(楚北捷)、すぐさま長王(楚長笑)殿下をお呼びし、詳細を確認されますか?」

 

亭国皇帝(楚北捷)は片手を上げそれを制する。「いや、その必要はない。長王(楚長笑)の事だ、既に我らの動きは承知しておろう。‥‥兵は迅速を貴ぶ…恐らく、長王(楚長笑)は既にその女子に宮を与え、后に封じているはずだ。」

 

跨虎大将軍(楚漠然)の顔に驚愕の色が広がる。「これは難しい問題です。もし仮にそのようになっているのであれば、かの女子は既に我ら亭国の後宮に属する者となり、后に封じた者を他国の求めに応じて返すのは亭国の威信にかかわります。」

 

「では、どの様にすればよいでしょうか。…‥维昊国はあの女子を我らが略奪したことに対して烈火の如き激しい怒りを露わにし、天籟殿(维昊国太子)は戦も辞さない構えです。」楚渾犼は傅き、不安そうに上目遣いで亭国皇帝(楚北捷)を見る。

 

亭国皇帝(楚北捷)は深いため息をつきながら言う。「長王(楚長笑)が現身(うつしみ)の女子に関心を寄せる事は良い事である。これにより我が亭国に世継ぎを得る事が出来る故、只‥‥その女子は维昊国の者という事で、维昊国がそれ程までの怒りを露わにするという事は、誇りを傷つけられた事のみならず、その女子が身分高き女子であるということなのであろう。」

 

楚青籟は頷いて言う。「御意。これらの経緯よるものかは定かではございませんが、维昊国はあの女子を長王(楚長笑)殿下の側妃として正式に我が国に嫁がせることすら拒否しております。」

楚青籟の言葉にその場にいる者達全てが沈黙する。

 

最早 ねじれて絡まり合った、この問題への答を誰もが悩み、進退窮まりなくなる。

 

 

長い沈黙が流れた後、侍従が恐る恐る声をかける。「皇上陛下(楚北捷)、奴婢に良い考えがございます。」

 

皆の視線が一斉に侍従に注がれる。

亭国皇帝(楚北捷)は侍従をみて、頷いて発言を許可する。

 

侍従は息を吐き出し、傅いて言う。「聞く処によると遊牧民は婚姻相手を決める際、その部族が開催する武術大会で優勝したものが女子を得る事が出来るといいます。もし、かの女子を维昊国の法に基づいて我が亭国に留める事を望まれるのでしたら、彼らの法に従い、これを得る必要があります。」

 

跨虎大将軍(楚漠然)は言う。「まさしく、これならば我らの面子も、维昊国の面子も守られましょう。…だが、長王(楚長笑)殿下と维昊国太子(引天籟)が直接の戦闘を行うとするならば、どちらにしても負けた者の名誉は傷つく事になります。そうなれば我が国と维昊国の友好にひびが入ろう。」

 

侍従は跨虎大将軍(楚漠然)の方を向き、恭しく言う。「それならば各々代理人を立て、現在我が国に来訪している他国の者も加えて、表向きは友好の為の親善試合として開催されるのは如何でしょうか?これならばどちらが負けたとしても表向きは友好の為の大会で、各々の名誉を傷つける事はございません。」

 

亭国皇帝(楚北捷)は頷き、裁可を下す。「よかろう。では、早速 準備せよ。」