【6-4】月宮の系譜・外伝2~bi-eye(片青眼) 第6章 亭国皇宮 no.4 | yuz的 益者三楽

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秀麗な男は秦玉風(引凰華)が驚く様子を気に掛けず、秦玉風(引凰華)に向かって言う。「美しい歌声だ。だが、可憐なそなたには楊貴妃より趙飛燕の姿の方が似合うであろう。」

 

秀麗な男は秦玉風(引凰華)を称賛し、詩の次句を吟じ始める。

 

一枝紅艶露凝香   一枝の紅は艶があり、香は芳しい

雲雨巫山枉斷腸 (楚の襄王が夢の中で恋い慕った)巫山の神女も悔しがるほど

借問漢宮誰得似  漢の宮にもこれ程の美女がいるだろうか

可憐飛燕倚新粧  (これに敵う者は)可憐な趙飛燕 くらいであろう

(清平調詞二 李白)

 

 

吟じ終え、秀麗な男はゆっくりと秦玉風(引凰華)に近づいてくる。

秦玉風(引凰華)は一歩退き、秀麗な男との距離を一定に保ちながら言う。「あなたがなぜここにいるの?」

 

秀麗な男は秦玉風(引凰華)の問いに答えず、更に彼女に近づく。

秦玉風(引凰華)は先程より更に強い口調で言う。「放肆!(無礼者)これ以上近づくと、兵を呼びますよ。」

 

秀麗な男は秦玉風(引凰華)の言葉を聞き、可笑しそうに笑い出す。

秦玉風(引凰華)はなぜ秀麗な男が笑いだすのか理解できず、眉を潜めて問いただす。「何がおかしいの?」

 

秀麗な男はひとしきり笑い、ゆっくりと言う。「兵を呼ばれて困るのはそなたの方ではないのか?ここは本王の宮、そなたこそ勝手に本王の宮で寛ぐとは不届き千万なのではないのか?」

 

!?

どうして、私は便殿にいたのではないの?

本当に ここは彼の宮だというの?

 

皇帝のいる亭国宮殿で独立の宮が持てるのは王族のみ。

それはつまり、彼が王族である事を示しているという事。‥‥確か、亭国の王族は少なく、この広い宮廷に住んでいる王族は二人‥‥皇帝楚北捷陛下と長王 楚長笑 殿のみ。

年齢からして彼は長王 楚長笑 殿だというの!?

では、ここは東宮殿!?

 

様々な疑問と、便殿にいるはずの自らがなぜ別の宮にいるのか理解できず、秦玉風(引凰華)は茫然とする。

 

若しかすると先程沐浴をする為に移動した際に誤って別の場所に連れて来られたとしか考えられなかった。

秦玉風(引凰華)は、この場所にいる事が故意ではなく、手違いによって起こったことである事を証明したくて辺りを見回したが、既に彼女をこの場所まで連れてきた侍女たちは跡形もなく消え去り、彼女がこの場所になぜいるのかを証明するものはいない。

 

しかし、例えそうだとしても维昊大国の使者の随身としてこの亭国宮殿に赴いた以上、この様な失礼は赦されることではない。

ましてや、ここは東宮殿、長王の私的な場所である。

 

秦玉風(引凰華)が茫然としていると、秀麗な男はいつの間にか彼女の目の前まで来ていた。

 

秦玉風(引凰華)は急いで身を低くし、非礼を詫びる。「手違いでこの場所に案内されたようです。長王殿下、大変失礼いたしました。私はすぐに退出させていただきます。このお詫びは改めて维昊大国の使者である太子よりさせて頂きます。」

 

長王(楚長笑)は、急いで立ち去ろうとする秦玉風(引凰華)を押し留めて言う。「いや、その必要はない。そなたはこのまま この宮に留まるがよい。」

 

秦玉風(引凰華)は彼がなぜそのような事を言うのか分からず、問い返す。「えっ?今何と言われたのですか?」

 

長王(楚長笑)は、ゆっくりと先程の言葉を繰り返す。「そなたは维昊国の侍従‥‥つまりは男子として宮殿に入っているが、その実 女子である。性別を偽ることは即ち 天子への背信行為、その上 本王の宮に勝手に立ち入った。これは罰を受けても仕方ないことである。それ故、この道理をもって、本王はそなたを以後この宮に留置く事とする。」

 

秦玉風(引凰華)は驚いて言う。「長王(楚長笑)殿下、お戯れが過ぎます。亭国皇帝(楚北捷)を欺くなどそのようなつもりはございません。‥‥それに、妾(女性の謙譲語)は维昊大国の正使ではなく、単なる随身に過ぎません。」

 

「いや、戯れではない。本王は以後、そなたをこの宮で養育し、加笄(女子の成人の儀、簪をさす儀)を行った後、本王の香妃として封じるつもりだ。」長王(楚長笑)は事も無げに言う。

 

秦玉風(引凰華)は色の異なる美しい双眸を見開き、言葉が出ない程驚き、驚きの余りよろめいて 近くの卓に寄りかかりながら言う。「‥‥‥長王(楚長笑)殿下、お戯れが過ぎます。妾(女性の謙譲語)は维昊大国の者で中原の者ではございません。それ故、長王(楚長笑)殿下に仕える道理はござません。」

 

長王(楚長笑)は、また数歩 秦玉風(引凰華)に近づいて言う。「そなたが偶然 この宮に迷い込んだとするならば、これは老天の采配。それ故 天意に従って、そなたを我が香妃として封じるのが道理である。女子として生まれたのなら天子に仕える事は過分な誉れ、そなたの爹娘(両親)もこれに同意しよう。」

 

「妾(女性の謙譲語)は未だ加笄(女子の成人の儀、簪をさす儀)を済ませてはおらず、妾(女性の謙譲語)の一存では決められません。どうか、妾(女性の謙譲語)を维昊大国太子の許へ帰して…‥」彼女が言い終える前に、長王(楚長笑)は秦玉風(引凰華)を抱き寄せ、口づける。

 

!!

秦玉風(引凰華)は長王(楚長笑)を押し退けようと必死に抵抗する。

だが、父皇帝 楚北捷に面差しがよく似ている長王(楚長笑)は長身で屈強な体つきをしており、まだ幼く非力な秦玉風(引凰華)がそれを払いのける事が出来るのだろうか?

秦玉風(引凰華)は必死に両手を動かし、彼から逃れようとするが身動きすらできなかった。

 

不意に 長王(楚長笑)は眉を寄せ、秦玉風(引凰華)を抱き寄せる手を離し、秦玉風(引凰華)の身体は床に崩れ落ちる。秦玉風(引凰華)が倒れた拍子に椅子が倒れ、大きな音を立てる。

長王(楚長笑)の唇から一筋の血が流れ落ちる。

 

室内の異変に気が付いた侍従が部屋の中に入ろうとした時、長王(楚長笑)は手をあげて彼らを下げ、自らの唇の血を拭って言う。「‥‥些か性急すぎたようだ。‥‥よかろう。従順で人形のような桃花より、生き生きとした香を放つ桃花の方が趣がある。この宮では自由に振舞ってよいぞ。」長王(楚長笑)は、漆黒の色を湛えた双眸を一瞬 鋭くし、言葉を継ぐ。「但し、この宮を離れる事は許さない。」

 

そういうと長王(楚長笑)は维昊国の使者を歓待す宴に出席するため、足早に東宮を去って行った。

 

秦玉風(引凰華)は唯一人 東宮に取り残され、長い間 その場所から動くことが出来なかった。

 

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※楊貴妃・趙飛燕

中国の有名な美人、楊貴妃は唐の玄宗皇帝の愛妃、趙飛燕は前漢の成帝の妃。

※清平調詞 李白

https://kanshi.roudokus.com/Seihei1.html

http://japanese.china.com/chinese/peotry/1666/20150422/352661.html

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端役設定:  

〇亭国王朝

楚渾犼:陳府では滁渾と名乗る。漠然と引萝の子、渾犼と双子の兄、

楚青籟:陳府では滁青と名乗る。漠然と引萝の子、渾犼と双子の弟、楽天家

楚北捷:東林王族で後の鎮北王、楚雨露の同母弟。鳳凰の予言と玄武の名を持つ巨星の運命,亭国皇帝 

楚漠然:(本篇)楚北捷の随身、亭国 跨虎大将軍 

     (外伝)楚晧月の息子。代王、七星宝剣の主、王妃:引萝、青籟(滁青)・渾犼(滁渾)の父

罗尚:(本篇)楚北捷の随身、楚北捷自身が鍛えた者、東林王都陥落後、漠然と共に東林王后を守る。

   (外伝)楚青籟と楚渾犼の最初の師父。亭国の将軍の一人

〇陳府

引天籟:秦香霧と维昊族 引宜公子の息子、野生児、天が鳴らす音楽の意(荘子の造語)

秦香霧:秦亮と陳暁娟の子、商隊長、神狼団の首領。息子:秦天籟、、夜霧の意

    玉風(ユーフォン)の別名をもつ、引宜公子の正妃

周傑:楚漠然の父・楚晧月の腹心の部下、陳府の長老、

周 天佑:周傑の養い子

若溪:秦香霧の侍女、秦亮の乳母の娘

〇维昊族

引宜:(本篇)维昊族の公子・太子→大王

   (外伝)秦香霧の恋人、秦天籟の父、青籟・渾犼の伯父

引凰華:引宜と秦香霧の娘、秦天籟の妹公主

引子睿:引宜の息子、黒髪に蒼い瞳の公子        

☟故人  

〇東林王朝・亭国

白娉婷:亭国皇后、

楚煌耀:晧月の父、楚漠然の祖父、代王,先の東林大王の末子、驍騎将軍

楚晧月:東林王族の傍系、大将軍、楚北捷の師父・漠然の父、秦亮の異父弟 

    煌耀と婵娟の子、

楚雨露:東林王族で後の東林大王、楚北捷の実の兄、※天子の恩恵の意、安寧王→太子→大王

罗漢:罗尚の息子、楚青籟と楚渾犼より年上で兄的存在

〇北漠王朝・陳府

婵娟 :秦亮と晧月の母、北漠の珠明公主、北漠大王の妹 ※美しい月の意 chán juān  

秦仲 :秦亮の父、北漠の名家出身、高奴城守、楚煌耀により戦死

秦亮 :秦仲と珠明公主の息子、北漠の名家出身、秦家ただ一人の男子、晧月の異父兄 、神狼上将軍

陳暁娟:秦香霧の母、秦亮の妻にして商隊を率いる。北漠の天女の異名を持つ商人

〇敵対部族

伊蘭公主:维昊族に滅ぼされた国の公主、仏教では煩悩と例えられる樹  

     以前、女子と知らずに玉風(ユーフォン)に言い寄った過去がある。

     伊蘭とは、花は紅色で美しいが、花や実を食べると苦しみ死んでしまうといわれる木、

胡衡:伊蘭公主に篭絡された敵の部族長

〇维昊族

引萝:(本篇)维昊族の第一公主  (外伝)楚漠然の妻、青籟・渾犼の母