月宮の系譜・外伝2~bi-eye(片青眼) 第4章 七弦琴 no.8 | yuz的 益者三楽

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「それは?」引天籟は眉根を寄せ、長老(周傑)の謎かけを思案する。
 
「そうじゃな…‥これを失えばこの国が滅んでしまうほどの事と言っておこうかのう。フォフォフォ、国を建てるのは容易じゃが、国を維持し発展させるのは至難の業、時には政略的な婚姻も必要となろう。」
 
「亭国の楚氏は代王を含めても男児は5名、その上 聞く処によると、長王は寵愛するあの側妃以外の子は要らぬと公言しているとか‥‥それは、つまり 亭国皇帝(楚北捷)が我が维昊大国との婚姻を望むのは、一つは我が陳府の情報網の為、二つ目は血脈を得る為という事ですか?‥‥確かに、感情論を抜きにすれば 亭国にとっては一石二鳥の策、亭国皇帝(楚北捷)は维昊大国公主と婚姻することで、亭国を揺るぎない形にしようとしているという事ですね。」
 
引天籟は長老の言葉を聞き、秦玉風(引凰華)の運命が変わらぬことを確信し、溜息をもらす。
 
 
ポローン
七弦琴の音色が再び響く。
 
引天籟は暫しその音に耳を傾けてから口を開く。「そういえば、なぜ天佑はこれまで皆の前で七弦琴を奏でなかったのでしょうか?これ程の腕前なら楽師として生計を立てるとしても十分通用するでしょう。」
 
引天籟の問いに長老(周傑)は静かに答える。「それはあれの母の死に関係しておる。思えばあれも哀れな子じゃ。母を亡くし、自らも死の淵を彷徨った。…‥あの七弦琴はあれの父が、あれの母に贈った品じゃそうじゃ。どの様な理由があるのかは知らぬが、あれの母はあの七弦琴とあれを連れて、亭国帝都から逃れようとしたようじゃ。」
 
「そうだったのですね....。」
 
「あれの心も複雑なのじゃろう。母を憎んでおるのか、普段は形見として残った七弦琴に触れようともせぬ。‥‥じゃがな、時に母が恋しくなるのじゃろうて。あれは母が恋しくなると一人山に入り、七弦琴を奏でておる。」
 
ポローン
また一つ弦が揺れる。
七弦琴は恰も何かを訴えるかのように激しく、濁流の様に心を締め付ける。
 
「天佑はまだ12歳、時に母が恋しくなる時もあるでしょう。」引天籟は止めていた手を再び動かしながら碁石を置く。
 
「そうじゃな、あれの母があのような死に方をせねばもっと違った思いをいだいておったかもしれぬな。」
長老(周傑)は感慨深そうに煙を吐き出す。
 
重苦しい空気が流れ、ただ月明かりのみが寒々しく辺りを照らす。
 
「そういえば、その折の下手人は見つかったのですか?」
 
長老(周傑)は引天籟のさした手に唸り、暫く思案した後に碁石を置いて言う。「いや、いまだその影さえ見えぬ。あの日、あれを抱いた乳母が命からがらこの高奴城に逃げ込んだ後、男たちに襲撃されたといっておった場所に手勢を率いて駆け付けたが、そこにはあの七弦琴と幾人かの躯が転がっているだけで、敵の痕跡は跡形もなく消えておった。あれ程の手際じゃ、盗賊ではなかろうて。」
 
この一句に引天籟は眉を潜める。「…‥盗賊ではないのなら、どこかの国の兵という事ですか?」
 
「ほれ、手が止まっておるぞ。」長老(周傑)に促され、引天籟は碁石を置き、言葉を継ぐ。「どこぞの兵か、或いは我らのような江湖ならその可能性はあります。…‥されど、か弱き母子を殺して何の利益があるのですか?」
 
長老(周傑)は再び 引天籟の碁石に唸りながら言う。「青楼 花喰楼の妓女とその子供、これが重要なのかもしれぬ。‥‥‥知ってはいけぬことを知ったのか?或いは何者かの逆鱗に触れたのか?…‥何れにしても最早時が経ちすぎており、真実を知る者も少なかろう。」
 
「全ては闇の中‥‥‥そういう事ですか?」引天籟は碁盤の反対側にある卓の上にある杯に手を伸ばし、酒を飲み干す。葡萄酒は喉越しよく、芳醇な香りと仄かの甘みを残す。
 
引天籟は碁盤を眺め、微笑を浮かべて言う。「…‥何れにしても、この地に逃れたのは幸運でした。長老様(周傑)、この勝負頂きます。」そういうと、碁石を要(かなめ)の位置にさす。
 
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端役設定:  
〇亭国王朝
楚渾犼:陳府では滁渾と名乗る。漠然と引萝の子、渾犼と双子の兄、
楚青籟:陳府では滁青と名乗る。漠然と引萝の子、渾犼と双子の弟、楽天家
楚北捷:(本篇)東林王族で後の鎮北王→亭国皇帝 、楚雨露の同母弟。
     (外伝)師父は楚晧月、長笑、蓮華の父
楚漠然:(本篇)楚北捷の随身、亭国 跨虎大将軍 
     (外伝)楚晧月の息子。代王、七星宝剣の主、
        王妃:引萝、青籟(滁青)・渾犼(滁渾)の父
罗尚:(本篇)楚北捷の随身、楚北捷自身が鍛えた者
   (外伝)楚青籟と楚渾犼の最初の師父。亭国の将軍の一人
〇陳府
引天籟:秦香霧と维昊族 引宜公子の息子、天が鳴らす音楽の意(荘子の造語)
秦香霧:秦亮と陳暁娟の子、商隊長、神狼団の首領。息子:秦天籟、、夜霧の意
    玉風(ユーフォン)の別名をもつ、引宜公子の正妃
周傑:楚漠然の父・楚晧月の腹心の部下、陳府の長老、
周 天佑:周傑の養い子
〇维昊族
引宜:(本篇)维昊族の公子・太子→大王
   (外伝)秦香霧の恋人、秦天籟の父、青籟・渾犼の伯父
引凰華:引宜と秦香霧の娘、秦天籟の妹公主
引子睿:引宜の息子、黒髪に蒼い瞳の公子        
☟故人  
〇東林王朝・亭国
白娉婷:亭国皇后、
楚煌耀:晧月の父、楚漠然の祖父、代王,先の東林大王の末子、驍騎将軍
楚晧月:東林王族の傍系、大将軍、楚北捷の師父・漠然の父、秦亮の異父弟 
    煌耀と婵娟の子、
楚雨露:東林王族で後の東林大王、楚北捷の実の兄、※天子の恩恵の意、安寧王→太子→大王
罗漢:罗尚の息子、楚青籟と楚渾犼より年上で兄的存在
〇北漠王朝・陳府
婵娟 :秦亮と晧月の母、北漠の珠明公主、北漠大王の妹 ※美しい月の意chán juān  
秦仲 :秦亮の父、北漠の名家出身、高奴城守、楚煌耀により戦死
秦亮 :秦仲と珠明公主の息子、北漠の名家出身、秦家ただ一人の男子、晧月の異父兄 、神狼上将軍
陳暁娟:秦香霧の母、秦亮の妻にして商隊を率いる。北漠の天女の異名を持つ商人
〇敵対部族
伊蘭公主:维昊族に滅ぼされた国の公主、仏教では煩悩と例えられる樹 
胡衡:伊蘭公主に篭絡された敵の部族長
〇维昊族
引萝:(本篇)维昊族の第一公主  (外伝)楚漠然の妻、青籟・渾犼の母、