実家のケアに行き、本棚に昔の本を発見
このすごい本はクリップしておかねばと思ってメモ
大人向けの本で、全くお子様向けではありませんのでご注意を
 
 
 
 

『永遠のジャック&ベティ』(清水義範)

 

丸谷才一氏に「注目すべきパロディスト」と評された、日本のパスティーシュ(パロディ文学)第一人者、清水義範氏の1988年の短編集

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この『永遠のジャック&ベティ』は、当時の中学校英語教科書に登場していたジャックとベティが50歳で再会した時、教科書に記載されていた日本語訳の奇妙な言いまわしでしか会話できない、という設定

 

 

「あなたはベティですか?」

「はい。私はベティです」

 

 

「一杯のコーヒーか、または一杯のお茶を飲みましょう」

「はい。そうしましょう」

 

 

から会話ははじまり、

 

直訳口調の会話が進むにつれて

中学以降の34年の月日の流れと

厳しい現実が浮かび上がる…

 

 

 
 

 

 

 

当時の英語教科書をおちょくる

爆笑パロディなのですが

 

日本の自動車の輸入、とか

好きな映画女優 ブルック・シールズ、など

会話の内容に今読むと時代を感じました

 

そして

 

4技能重視で中学校の英語教科書も変わり

この抱腹絶倒パロディも

「何が面白いのかさっぱりわからない」

という時代になるのだろうなぁと思いました

 

 

 

 

 

同時収録の『インパクトの瞬間』は、作家の言葉へのこだわりがつまった作品で唸らされます

 

例えば、『インパクトの瞬間』の中に取り上げられているひとつ、

「コクがあるのにキレがある」

(アサヒがビール市場奪還を狙いはじめたドライ戦争の前の時代の、アサヒ生ビールの名コピー)

 


 

 

 

 

 

 

この二律背反的な表現は

決してスルーできるものではなかったらしい

 

“コク”とは

“キレ”とは

 

この二つが

“のに”でつながるということは

 

と延々と考察している5ページ笑い泣き

 

"言葉"に関心がある人なら笑いにむせること間違いなし

 

 

清水義範ファンに人気の作品だそうですが

私もそのインパクトが忘れえぬ

『インパクトの瞬間』です

 

 

ただこれも世につれ

これらの宣伝/コピーを知らなければ

「何が面白いのかさっぱりわからない」

になりますね

 

 

 

 

 

あとがきに書かれている

「創作のきっかけ」

 

こんなことから

「作品になったも同然」になるのかと

 

作家の頭の中、創作の瞬間を

垣間見させてもらえて嬉しかったラブ

 

清水義範氏のサービス精神を感じました

 

 

 
 

 

 

 

 

 

 

おまけ)

 

同じ作家の『国語入試問題必勝法』も、

 

もちろんパロディです

 

 

 

 

 

「きみはその問題を与えられて、まず問題文を読み始めたね。それが間違っている」

「でも、次の文章を読んで問いに答えよ、と書いてありました」
「そんなものは意味のない決まり文句だよ。その通りに受け止めてはいけない。

 


 こうして、一郎は国語問題に強くなっていった。そしてついには、あの曲者の、何字でまとめろ問題にも挑戦していくのであった。
 その種の問題にとりかかる前、まず月坂はこう言った。
 「こういう、内容を三十字にまとめろとか、傍線の文章の意味を五十字で説明しろ、という問題は本当はむちゃくちゃなんだよ。最低の愚問だと思っていい」
 「そうなんですか」
 「そうに決っているよ。三十字で言えることなら原作者が三十字で言ってるはずじゃないか。

 

 

笑いの中に一抹の真実も浮かび上がるような気もします爆笑爆笑