曇天で見えないとわかっていながら、雲の上にある部分月食を見に出かける。

早くも暑さにやられてしまったのか、満月の38%を飲み込んでしまったみたいにぐったりと熱くて、外の風が気持ちいい。
ご機嫌に自転車で走りながら鼻歌を歌う。
今夜はすれ違う何人くらいの人に風に乗った鼻歌を聞かせてしまっただろう。

もう6月だから梅雨がやってくるはずだけど、気配どころか雨のひと滴さえなくて、紫陽花だけが小さなつぼみを膨らませて、ウェルカムフラワーをすぐにでもサービスできるように準備をしている。

風が吹いて雲という雲を蹴散らさなくても、今夜は雲の上にあるイリュージョンのような黄色い月が見えるみたい。