公園にある富士岳くらい大きくて、ねずみ色で、足は丸太棒みたいに短く太いのが4本あって、鼻がうんと長いよ?いやいや、もっともっと長い!

生まれてから一度も象を見たことがない人に、象という動物を説明するのはきっと難しい。一晩かかっても個性的な形は上手く説明できないはずだ。

「こういう紙みたいなのが間にあってですね」と、ピアスなしのピアスの穴が何個もあいた整備の人が、見積書を手と手で挟み車の部品に見立てて解説してくれる。
一生懸命説明してくれる人が好きだ。
だから必死でわかろうと努力する。
だけどわたしが知る車の仕組みは、たとえ中に小さな馬がいたとしてもあまり驚かないかもしれない。
帰りに子供のお使いよろしくお菓子セットをもらった。

自宅に帰ってから見積書を手と手で挟んで、水差しのぶーちゃんに修理する箇所を説明する。
「それじゃわかんないよ?」わからないものを説明するのは難しい。
それを聞くのはもっと難しい。

生まれてから一度も象を見たことがない人が描く象を想像した。
わたしは動物園で象を見てしまったから、それが残念でたまらない。