景徳鎮焼き物の原点:青白磁・影青(インチン) | 船橋市茶文化資料室

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現在、景徳鎮では高級ブランド茶器のお値段がますます高くなる一方である。有名なブランドと言えば、春風祥玉、小雅、九段焼、陶人臨古、芸林堂、まだまだ沢山ある。これらの工房のラインナップを見ると湯呑み一つの値段が安いものでなんと6万円、高いものになると10万円以上もするものがずらりと並んでいる。一流原料を使い、一流の絵付師を雇い、千年の歴史を持つ景徳鎮焼き物の最高峰を復活させたいと夢見る「窯主達」である。ところでこんなん高い茶器をいったい誰が買うのだろう?と思ってしまうが、いやいや、この二十年間、国内に富裕層が増え、毎年、窯開きとなると、人々がぞくぞくと集まってくるのであるから驚きだ。

 

これらの高級ブランドについていつも思うのはインチン(影青)系の茶器が少ないこと。もちろんそれぞれの窯元に得意の分野がある。例をあげると九段焼なら染付(青花)、芸林堂な色絵(粉彩)が得意。でもインチンなら染付や色絵ほど手が込んでいるわけでもないのに、案外、著名な窯元には作品が少ない(暁芳窯にすこしあるが)。なぜだろうか、

 

今日のお茶は徳島の阿波番茶。景徳鎮の影青のガイワンで

高級茶器の工房(窯元)のラインナップにあまりないが、景徳鎮に行けば青白磁、つまりインチンの茶器がどこでも売られている。お値段も高くても日本円で一万円内で良質なものを購入できる。最近景徳鎮の原点に戻って宋王朝頃の青白磁を再現することに頑張っている窯元も増えているという。

 

"十一世紀の景徳鎮の製品は、青みをおびた透明な釉薬がかかった、いわゆる影青である。この俗称は、もともと彫りもように青みをおびた透明な釉薬がたまって、淡青色にみえるところからおこった呼名と言われている、、、また青白磁とも言われている。なおこれを白磁とはちがったもののようにいう人もいるが、青みが強くても弱くても、もちろん白磁であって、別種類の磁器というわけではない。影青・青白磁は白磁の一種なのである。”(長谷部楽爾『中国のやきもの景徳鎮』89頁)

 

うまく撮影ができず青くみえていないようだが手に取ってみる青白磁であることはすぐわかる。

景徳鎮窯が初めて歴史に登場するのは初唐ともいわれるが、実際名声を博したのは北宋時代に焼かれた青白磁からである。当時景徳鎮は饒州の管轄下だった。景徳鎮の青白磁は”饒州の玉”(”景徳鎮的陶器有饒玉之称”。清『景徳鎮陶録』)に例えられ、その美しさは当時の人々の心をすっかりひきつけ、魅了したに違いない。

"景徳窯は宋の景徳年間の焼造なり。土は白壌にして埴、質は薄くして膩、色は滋潤なり。真宗命じて御瓷に進ましむ。器底には景徳年製の四字を書し、その器もっとも光致茂美なり。当時則ち効い、海内に著行す。是において天下成く景徳鎮の瓷器を称す”(長谷部楽爾『中国のやきもの景徳鎮』91頁)

 

「光致茂美」は『景徳鎮陶録』の著者、清代・昌南(景徳鎮の別名)出身の藍浦が青白磁を表現する時の言葉。当時の青白磁の美しさを思い浮かべながら改めて景徳鎮焼き物の原点は青白磁・影青であることを再確認した。6月の茶会の時、この青白磁に対する思いを皆さんに伝えたいと思う。

 

北宋時代青白磁 → 京都博物館・青白磁瓜形水注

 

阿波番茶は美味しかった。