安徽省の茶と歴史⑤歙県の珠蘭花茶(老竹大方ブレンド) | 船橋市茶文化資料室

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今日は安徽省歙県(しょうけん)産の「珠蘭花茶」を淹れました。生産地は有名な安徽省黄山の周辺。「珠蘭」(じゅらん)はセンリョウ河の植物で日本語ではチャランと書く場合が多いです。二人静と同じ属の植物。

外観。平ぺったい茶葉は龍井の外観と区別のない程似ている。これは「老竹大方」という扁平形釜炒り茶。この「老竹大方」(現在頂谷大方と呼んでいることが多いが)とチャラン(漢名、珠蘭)の花を混ぜて乾燥させたお茶。

摘みは昨年穀雨頃。故に「珠蘭穀雨大方」という商品名になっている。

ガイワンで淹れました。ガイワンは建窯産。

セットはこんな感じ

90度。

水色は薄い金色。香りも顕著という程ではないです。

水色。大き目な汝窯の飲杯。ジャスミンティーほど濃厚な香りをする花茶ではないですが、淡い、蘭の香りと「老竹大方」本来の「栗子香」も感じられ、美味しかったですね。

チャランはこんな感じ。白い花だが、焙煎されてもう茎しかわかりません。

安徽省には銘茶が多いです。「黄山毛峰」、「太平猴魁」、「婺源緑茶」、「屯渓緑茶」、「祁門紅茶」、まだまだあります。この珠蘭花茶は安徽人でもある程度年配の人ではないと知る人が少ないでしょ。しかし晩清から民国時代に珠蘭茶、また珠蘭花茶は安徽省の一大花茶として多量に海外へ輸出され、国内では北京、山東省など地域でジャスミンティー代わりに大変人気のある花茶でした。主産地の歙県を含む周辺の地域はチャランの栽培も盛んで地元の原料が足りない時蘇州、または広東省や福建省までチャランの調達をしていました。故に福建産の珠蘭茶も出回り、いかに当時珠蘭茶への需要が高かったと思われます。

1919年の『支那省別全誌』第十二巻安徽省の中に「珠蘭茶」について以下のような記述がありました。青字

支那に於いては雨天又は曇天には決して茶葉の採取をなさざるが故に、若し雨天続きて、良好なる天気の日を得ざること」永続せば、穀雨迄に茶葉の採取をなすこと能はず。茶葉益々成長し、粗硬となり香気を失ふ。この場合には勢下等なるものを製するの外なき事あり。依て穀雨後に採取するものに在りては其の香気を添ふるが為めに種々の香料を加ふ。当地に於いては蘭の花を加ふるを以て、支那人は之を珠蘭花窨と称す。(大正8年版『支那省別全誌・安徽省』page452-452)

 

メモ:

窨xūnまたは窨制:香りづけの意味。

メーカー情報

商品名:珠蘭穀雨大方

企業名:黄山市歙県就田茶業有限公司

生産地:安徽省歙县徽城鎮就田村

製造日:2022年4月~7月

ブレンド原料:歙県穀雨大方 + 珠蘭の生花

*20230604【『茶経』を読む茶会】の時飲む予定です。