福建省の歴史と茶⑥閩南烏龍茶・永春佛手茶そしてこうろ茶樹の話 | 船橋市茶文化資料室

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福建省の歴史と茶⑥閩南烏龍茶・永春佛手茶

外観。閩北烏龍茶・岩茶と違う形状をしている。所謂「蜻蜓頭」。閩南烏龍茶の外観は俗にいう「蜻蜓頭」(qing-ting-tou)。閩北烏龍茶(岩茶)の外観は殆ど条形型である。

パーケージ。250g。

後手の常滑急須で淹れてみた。140㏄の急須に6gの茶。

水色。一煎目。

2煎目

清香型の永春佛手茶を選んだため水色はゴールデン色。

永春佛手の茶殻

 

 
永春佛手茶の起源を考える

永春佛手茶は福建省泉州市永春県に佛手種という品種を用いて生産される烏龍茶。「佛手」は品種名である。品種名としての別名は香橼 xiāngyuán種ともいう。無性系品種。灌木大葉型。大葉種、中葉種、小葉種の分類では「中葉種」に分類されている。佛手種には、「紅芽佛手」と「緑芽佛手」2種類がある。永春県は「紅芽佛手」の栽培面積が多い。また県内のコア産地は「蘇坑」。このお茶は「蘇坑」の茶農家の商品である。佛手茶また佛手種の一番の特徴は葉っぱが香橼(日本語でブッシュカン)の葉っぱに似ていて、大きく楕円形であること。福建県内では香橼茶と呼ぶことが多い。

 

永春佛手茶の始まりは一説に清康熙43年(1705年)に県内の達埔狮峰山に最初の佛手種茶樹が植えられたという。ただこれについて確かな史実が見当たらない。史実がはっきりとわかるのは1919年「永春華興種植実業股份有限公司」が、隣の安渓県西坪鎮茶農家林子生から15株の佛手種苗を貰い、県内東関鎮虎巷山に植えたから始まる。その後、圧条法(茎伏せ方法)を使って県内で栽培面積を広めたと伝えられている。現在300年歴史をもつ永春佛手茶という宣伝があるが、福建省の野生茶樹調査リストに永春県は載っていないので古茶樹の発見報告がないため、実のところは永春県の製茶歴史は100年位ではないかと思う。永春華興種植実業股份有限公司はマレーシア華僑李輝芳らによって創られた会社。新中国建国後の1958年、「北硿華僑茶廠」へ改名し、その後長い間泉州市の烏龍茶輸出生産基地として永春県内の大手茶企業であった。

 

佛手茶という名前の由来については、1937年福安茶業改良場の技師庄燦彰氏の《安渓茶業調査》によると”相傳二十年前,安溪第四区騎馬岩(即騎虎岩)上一和尚,取柑橘类之香圆(香橼的俗称)作砧木,接茶穗于其上而得此種,“庄氏によると、ブッシュカンの木を使って茶樹の接ぎ木をしたため、ブッシュカン(佛手柑)の名前から佛手茶になったという。佛手種の葉っぱは大きく楕円型でブッシュカンの葉っぱに似ていることは実ではあるが、近年”似ていることから、ブッシュカンを台木にして接ぎ木をするまで推測するのはやや理解しがたい”との反論が出ている。永春佛手茶の起源は隣の安渓から同種類の茶樹を貰ってすこしずつ増やしたというのは自然な成り行きではないかと近年の研究結果である。

 

余談だが、この永春佛手茶の葉っぱは日本にあるコウロ種の葉っぱに大変似ている。先日埼玉茶業研究所の見本園を見学する機会があった。その時の写真。埼玉県内のコウロ種の茶樹↓

永種佛手茶の茶殻。形は驚くほど似ている。

 

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