茶経一之源⑦茶の効用と精行倹德の功 | 船橋市茶文化資料室

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2014年03月16日の記事
タイトル:「陸羽茶経」一之源⑦茶の効用と精行倹德の功

茶経図文版 (唐 陸羽)

卷上 一之源⑦茶的效用

原文
茶之為用,味至寒,為飲最宜精行倹德之人。若熱渴,凝悶,脳疼,目渋,四肢煩、百節不舒,聊四五啜,与醍醐,甘露抗衡也。

現代語
茶的效用,因其性至寒,用作飲む料,最為适宜那些操行端正倹朴的人。倘若有人感熱渴,凝悶,頭疼,眼渋,四肢疲労,関節不舒服,只要飲茶四五口,其效就同飲用醍醐甘露一様不相上下。

(摘自「茶経」鳳凰出版社)

関連単語:
①醍醐:tíhú  牛乳を煮詰めたもの。仏法の素晴らしさの譬えとして使われる。
②啜:chuò 飲む。食べる。


日本語訳

茶の薬効について述べれば、味は極めて寒(体を冷やす性質)であり、飲み物としては、まじめに仕事をし、倹約に努めるような人に、最も向いている「茶の用たるや、味は至りて寒にして、飲たること最も精行倹徳の人に宜し」。熱があり、喉が渇いて、心が鬱屈し、頭が痛み、目が冴えず、手足を動かすのも面倒で、すべての関節がきしむようなとき、とりあえず茶を4,5杯も飲めば、醍醐や甘露にも匹敵する素晴らしさである。

          (「茶経、喫茶養生記、茶録、茶具図賛」 高橋忠彦著 淡交社)


茶は「精行倹徳の人に最も宜し」との記述は、茶人の精神面(茶徳)について最初の記述だと言われている。

君子以倹德辟難,不可荣以禄(君子は倹徳を以て難を避け、栄えるに禄を以てすべからず)の昔中国の教えを思い出す。豊かになってきた中国は、このような古き良き文化が失われてほしくない。


「全唐詩」に陸羽の「六羨歌」が収録されている。捨て子だった彼を育ててくれた智積禅師が亡くなった時、詠んだ歌だ。

「六羨歌」

  不羡黄金罍(盏);(黄金の盃は羨ましくない)
  不羡白玉杯; (白玉の杯は羨ましくない)
  不羡朝入省, (官僚のように朝から役所に行くのは羨ましくない)  
  不羡暮登台;(暮に遊びに興じるのは羨ましく)   
  千羡万羡西江水,(千回も万回も思いを馳せて羨ましいと思っているのは、あの竟陵城に流れている西江水のことだ)

「羨」という字を6回使っていたので「六羨歌」と言われるようになった。
陸羽の志の深さと清らかさに触れる詩である。