朝いちばん、角のブーランジュリーに列ができて、紙袋からまだ温かいバゲットの先がちょこんと飛び出す。歩きながらかじると、粉がコートに雪のように積もって、笑いながら手で払う。カフェのテラスでは、頼んだ“café”が親指サイズで届いて「小さっ」と目が合い、隣のテーブルの犬があくび。気づけば一杯で一時間、通りを眺めて過ごしてしまう。
メトロのドアは容赦なく閉まり、ひと駅分を地上で歩いたら、古い扉のノブがやけに重い。蚤の市ではレコードの山に肘まで突っ込んで、知らない歌手のジャケットに一目惚れ。夕方のセーヌ沿い、橋の上から誰かが拍手して、見れば大道芸人の輪。拍手が連鎖して、通りすがり同士がちょっとだけ仲間になる。
そして日曜日。開いている店を探して歩き疲れ、結局、公園のベンチでマロングラッセを分け合う。雨が降れば濡れて、晴れれば眩しく、パンはうまく千切れず机に散らかる。映画のような完璧さは来ないけれど、代わりに“今日だけ起きた細かい出来事”が、じわっとポケットにたまっていく。

 

✅ よくある「フランスあるある」:
・「Bonjour」で始めると空気がふっと和む瞬間に出会う
・バゲットの端っこ(クルート)を帰り道でつまみ食い
・カフェの椅子は歩道向き、通行人ウォッチングが止まらない
・メトロでアコーディオンの生演奏、つり革がリズムを取る
・青空と雲の隙間を狙って写真、次の瞬間もう曇ってる
・蚤の市で“絶対いらないけど欲しい”小物に心を奪われる

 

❌ 実際は…:
・毎回エッフェル塔を仰ぐわけじゃない、ゴミ収集車の朝が主題歌
・テラス席は日差しも風も想像以上、マフラーが主役に昇格
・「水ください」が言えず、エスプレッソでのどがからから
・日曜やお昼どき、店が閉まって石畳をぶらぶら回遊
・美術館で“あと一枚だけ”が三十分コース、足が棒
・お土産のチーズが思った以上に元気、スーツケースが香る

おしゃれなイメージだよな:

あなたの“フランスの一日”はどんな小さな驚きでできていましたか。パンの紙袋の音、テラスの椅子の軋み、見知らぬ人の拍手、メトロの風——覚えている音や匂い、ふと笑ってしまった出来事を一言だけでも教えてください。誰かの旅の記憶とつながって、また別の“あるある/ないない”が生まれるかもしれません。あなたのポケットから、ひとつだけ、今日ここに。