春は桜、秋は紅葉
朝の車窓が少しずつ色づいていく。窓ガラスに額をくっつけて見ていたら、隣の人も同じ姿勢で笑い合う。到着して最初の一本に「今日イチ!」と言いながら、もう次のカーブでさっきを軽々と越える赤が現れる。
屋台の甘い匂いに吸い寄せられ、熱々のみたらしをふうふうしながら、手はスマホ、目は空、口は「やばい」の連呼。風が通り抜けた瞬間、枝先から葉がまとめて舞い降りて、誰からともなく「わーっ」と声が出る。拾った葉っぱをコートのポケットに仕舞って、歩くたびにしゃらっと擦れる音がうれしい。小さな橋の上では、急に静かになって、川面に映る逆さの赤に見入ってしまう。気づけば指先が冷たくて、自販機の缶コーヒーをカイロみたいに握りしめる。帰り道、ポケットの葉が少し折れているのを見つけて、なぜだかそれも含めて今日の色だったなと思う。
✅ よくある「もみじがりあるある」:
・最初の一本目で「今日イチ!」宣言、すぐ更新
・連写しすぎてシャッター音が合唱みたいになる
・屋台の団子と甘酒に予定を乗っ取られる
・落ち葉の“理想の赤”探しでしゃがみ込む時間が長い
・誰かの肩に小枝が引っかかって、みんなで大笑い
・帰りのバスでポケットの葉っぱをそっと取り出して眺める
❌ 実際は…:
・アルバムを開くと似た構図の赤がずらりで判別不可
・白スニーカーがしっとり茶色に、でもそれも一日っぽい
・橋の上だけ風が別世界、写真がちょっとぶれて却って良い
・“映え木”を探していたのに、脇の小さな一本がいちばん刺さる
・拾った葉は家に着く頃には少し丸まって、やさしい色になっている
・帰宅後、上着のポケットから今日の匂いがふっと立ちのぼる
これぞ、日本の魅力:
連写の中に紛れた一枚より、ふと顔を上げた瞬間の色が、なぜか記憶の真ん中に残りますよね。川のきらめき、誰かの笑い声、手のひらに乗せた葉の軽さ——あなたの“今日の赤”はどこで出会いましたか。思わず立ち止まった場所や、持ち帰った小さな戦利品の話、聞かせてください。読みながら、同じ色の風がこちらにも吹いてくる気がします。次の季節のために、あなたの一瞬をそっと置いていって。
