イオンの話しと言っても、スーパーマーケットのイオンではない。化学で言うところのイオンである。そしてそれが人間の生活や営みに大きな影響を及ぼしている。アルカリイオン水とか言う言葉もあるが、その意義は後でわかるだろう。

 

専門家は以下の説明に眉をひそめたり、正確に言うとそうではないとおっしゃったりされるかもしれないが、専門家という人の説明はとかく一般人にはわかりにくく、本質を把握させ得ないものが多い。下記はそうではない。

 

まず前説明として、元素と分子の違いを少し。元素というのは、炭素とか水素とか酸素とか、鉄とか金とかマグネシウムとか、物質の最も小さい構成要素である。自然界では、それ以上分解できない。しかし我々人間の生きている環境では、元素ではなく分子となって存在する。例えば酸素元素はOと記すが、実際空気中ではO₂として、つまり酸素元素二つがくっついたものとして存在する。それを酸素分子という。また水素元素はHであるが、人間の生きている環境では、やはりH、つまり元素一つで存在する。つまり水素は元素記号はHで、水素分子もHとして表わす。金属は大抵、元素1個で分子を構成する。金はAu、銀はAgと表わす。しかし他の元素とくっつくと話が違ってくる。例えば水はよくご存じのようにH₂Oと表わすが、水素元素二つと酸素元素一つで構成される。酸素であるOは単独ではO₂として存在するが、他の元素とくっつくとなると、O元素一つがH元素二つ分とくっついて水H₂Oとして存在する。

 

ではイオンと何か。わかりやすく言うと、化学反応を起こす際に、関わる物質はイオン化する。そしてイオン化して、分解したり結合したりする。すべての元素からなる分子は、イオン化する。つまりイオン化というのは、すべての元素からなる分子が持っている仕組みと言える。

 

わかりやすい例から考えよう。鉄を空気中に放置したままにすると、錆びが出てくる。錆びるというのも一種の化学反応である。鉄の元素記号がFeだが、鉄がイオン化するとFe+と表わす。鉄イオンはプラスイオンなのだ。鉄と触れることによって、空気中の酸素もイオン化する。酸素イオンはO-と表わす、すなわちマイナスイオン。そして必ずプラスイオンとマイナスイオン同士結合する。この場合、Fe+とO−が結合してFeOになる。FeOとは酸化鉄、つまり錆びの一種である。ちなみに水と鉄が反応した場合、Fe(OH)₂という錆ができる。水酸化鉄という化学名がついている。(厳密に言うと、FeOもFe(OH)₂も幾種類かある。詳しく知りたい人はウィキペディアなどを見てください)

 

他の例を取り上げよう。最近よく取り上げられる水素水。体にいいとか、アンチエイジング効果があるとか、ないとか、よく言われる。効果のほどは別として、水素水の発生の仕組みは、水(H₂O)を電気分解や化学反応でH+水素イオンと、O-酸素イオンに分解し、水素イオンを水中に存在させ続けてそれを飲用するというものである。論理的にはH+のまま飲用して、体内に入り、体内の活性酸素(簡単に言うとある種のO+)と結合して、H₂Oになって排出されるというものである。つまり水素水というのは水素分子のHを飲用しているというよりも、H+イオンを飲用していることになる。ちなみにH+が多くなると水はやや酸性になる。水素水が世の中に台頭してきて、それとは逆にアルカリイオン水が売れなくなった気がする。水素水が酸性なので、アルカリ性が体にいいという根拠が薄れたように思える。

 

人間の体内というのは、人間が生きている自然界とは全く異なる状態で、化学反応や分解や結合の連続である。つまりいろんな要素がイオンのまま存在していることが多い。前述の活性酸素というのは、他の要素とくっついて変化させたり破壊したりする悪玉酸素と言われている。他の要素に影響を及ぼしやすいので、イオン化しやすい、あるいはいつもイオン化しているとも言える。それを水素イオンH+とくっつけて除去しようというのが、水素水である。活性酸素が人体にどれほど存在して、どれほど悪影響を及ぼしているのかは、はっきりしないところが多いが、活性酸素が悪玉というのは確かである。

 

イオン化に話を戻すと、元素や分子によってイオン化しにくいものとしやすいものがある。金属で言うと、金やプラチナまた銀はイオン化しにくい。つまり化学反応を起こしにくく、錆びにくい。前述したように、鉄はそれらよりも錆びやすい、つまりイオン化しやすい。イオン化しやすいのをイオン化傾向と化学では習う。もっとイオン化しやすいのは、生のマグネシウム。空気中に置いておくだけで、空気中の酸素と反応して酸化してゆく。こう考えると、酸化のしやすさはイオン化傾向の強さと言っても過言ではないだろう。酸素は人間が生き続けてゆく上で不可欠だが、一方でそのようにものを腐食させていったりする作用がある。

 

復習しよう。イオンというのは、物質が他の物質と反応したり結合したりする際に、その物質の元素や分子に生じる変化した状態である。鉄が空気や水と反応すると、鉄イオンや酸素イオンが生じ、別の物質を生じさせる。なぜイオン化するのか。簡単に言うと、イオンになる際、電子がその分子から飛んで行ったり、反対に加わったりする。電子はマイナスなので、電子が減るとプラスイオンになる(H+)。電子が加わるとマイナスイオンになる(O+)。なぜ電子が減ったりくっついたりするのか、そうなっている仕組みを人間が発見したからとしか言いようがない。あるいは神のみぞ知る、というところか。

 

おわり