これは数年前、当時付き合って彼女(O)と一緒に瀬波温泉にドライブに行った時の話です。
この日は天気もよく晴れていたので、以前から行きたいと話していた瀬波温泉♨までドライブに行くことになりました。
実はOはまだ瀬波温泉に行った事がないらしく、前から1度行ってみたいと言っていたのです。
この頃お互いにあまりお金の無かった自分とOは、ホテルや旅館に泊まったり温泉に入るのが目的ではなく、ただ温泉街の風景や海岸線の海の景色を楽しみたいというものでした。
しかし、瀬波温泉に行く理由は実はもうひとつありました。
それは以前にネットのあるサイトで、『瀬波温泉に幽霊の出る廃墟のホテルがある』という情報を入手していたのです。
その噂に興味を持った自分は、ついでにその廃ホテルも探してみようと思ったのです。
地元の新潟市からバイパス(国道7号線)を通って村上市目指して車を走らせ、およそ2時間ほどしてようやく瀬波温泉街に辿り着きました。
O:『ここが瀬波温泉かー。良いところだね!』
自分:『そうだね。風情があっていい感じ』
温泉街の景色を眺めながら車を走らせていくと、丁度前方に観光案内所があったので、そこの駐車場に車を停めて少し散歩してみることにしました。
すると高台の上に、やぐらのようなものとモクモクと白い湯気が涌き出ているのが見えました。
O:『ねえ、あの湯気が上がってる所ちょっと見てこようよ』
自分:『うん、いいけど』
その涌き出ている湯気が少し気になり、高台を登って見てくる事にしました。
高台を暫く登っていくと、そこには大きなやぐらと小屋のようなものがあり、そこから湯気がすごい勢いで涌き出ていました。
どうやら瀬波温泉の源泉が涌き出ているらしく、更によく見てみると『温泉たまご』と書いてあり、ここで温泉卵を作る体験が出来るようでした。
O:『へー、ここで温泉卵作れるんだね』
自分:『そうみたいだね。ちょっと食べてみたいな(^q^)』
とそんな話をしていた時、林の奥の方に、タイル張りの大きな名残のような空間を見つけました。
自分:『なんだこれ?何かの名残かな?』
O:『そうみたいだね…。ここに何か建物でもあったのかな?』
自分:『あっわかった!これ大浴場の名残だ。ほら、あそこに浴槽の跡が残ってるし、階段もある』
O:『あーなるほど💡確かにそんな感じするね』
自分:『多分、昔ここに温泉旅館とかがあったのかもね』
どうやらそれは、昔の旅館かホテルの大浴場の名残だったように感じました。
そして軽く散策を終えると、いよいよ噂の廃ホテルを探すため、再び車に乗り込み温泉街周辺を回ってみることにしました。
先程の観光案内所から海沿いの方向へ少し車を走らせていくと、突然助手席に座っていたOが、
O:『あっ!ねえ、今山の上に廃墟のホテルみたいなの見えたよ』
と言いました。
自分:『え?!マジで?』
O:『うん、だってさっき窓ガラスが割れてるの見えたもん…』
Oがそう言うのでUターンして戻ってみると、確かに山の上に大きな廃墟らしきホテルが聳え建っているのが見えました。
(※画像は使い捨てカメラで撮った写真を、再度スマホで撮影したものです)
自分:『あー💡多分あれの事だ』
噂にあった廃ホテルを早くも見つけ、早速坂道を上がって廃墟のある方へ近づいてみることにしました。
坂道を上がって廃ホテルのある方へ近づいてみると、前方に入り口らしきゲートの柵が見えてきました。
O:『ここがホテルの入り口みたいだね…』
自分:『うん、そうみたいだね。あそこにホテルすずきヶ池?って書いてある』
柵の所には『ホテルすずきヶ池』と書かれていて、左側に管理人宅らしき建物と、奥には大きなホテルの建物が見えました。
ゲート(柵)の前に車を停めて、早速廃ホテルを見てこようと準備をしていると、突然、後方から坂道を上がって車がこちらに向かってきました。
その車はすぐそこにある民家の前に停まり、中から老夫婦らしき二人が出てきました。
どうやら民家の住人が帰ってきたらしく、廃ホテル入り口の目の前にいる自分らを見て、少し不思議そうな様子でした。
するとこの時Oは何を思ったのか、突然その老夫婦に話しかけました。
O:『こんにちわ』
老夫婦の女性:『あ、はい。こんにちわ…』
その老夫婦は少し驚いた様子で返答し、車の中から荷物を取り出すと家の中に入っていきました。
Oは不審に思われたくなかったのか、敢えてこちらからその老夫婦にあいさつをしたようでした。
しかし今自分らがいる廃墟の入り口ゲートの辺りは、その老夫婦の住む民家からほぼ丸見えでした。
O:『よし、じゃあ廃墟見てこよっか』
自分:『うん…。でもさ、今そこの家に人いたし、なんか入りづらいな…😅』
O:『普通にあいさつもしたし、多分大丈夫だよ』
自分:『そうかな…?通報されたらヤバイし…😅』
O:『うーん…。じゃあ、他にもホテルに行く道があるか探してみる?』
自分:『そうだね。まだ入れるルートがあるかもしれないし。裏とか探してみよう』
すぐそこに人の住んでる民家があるため、表からの侵入は厳しそうだったので、裏側に回って他に経路がないか探してみることにしました。
先程上がってきた坂道を引き返していると、左側に山の方へ続く道があったので、試しにその道を行ってみることにしました。
そして暫くその道を進んでいくと、次第に道幅が狭くなっていき、鬱蒼とした森の山道に入っていきました。
自分:『なんかこの辺り怪しいね。どこかにあの廃ホテルの裏に続いている道がありそうな感じがする…』
O:『うん、確かにね』
すると途中、道が二手に別れている狭い山道のT字路に差し掛かりました。
自分:『あれ?これどっちだろう?』
O:『うーん…。わかんないから、ちょっと車降りて歩いて見てくる?』
自分:『そうだね』
どちらに進んでいいかわからなかったので、とりあえず車を降りて歩いて確かめる事にしました。
車を降りてまず右側の道に行ってみると、そこには何もない広い空き地になっていて、道は行き止まりになっていました。
自分:『こっちはただの空き地みたいだね。じゃあやっぱり左側の道か』
右側の道はただの空き地だったので、次は左側の鬱蒼とした森の道を歩いてみる事にしました。
左側の森の道を暫く歩いていくと、突然目の前に『ゲートらしき鉄柵』が姿を現しました。
よく見るとそこには、この先関係者以外立ち入り禁止と書かれていました。
しかもその鉄柵は何故か開け放たれていて、簡単に入れるようになっていました。
自分:『あっ!多分ここだよホテルの裏口!』
O:『そうかもね。柵も開いてるし、行ってみよっか』
この先の道が廃ホテルの裏口へ続いていると確信し、ゲートを抜けて更に森の道の奥まで歩いてみることにしました。
すると次第に道は狭くなっていき、路面は水溜まりや大きな石、木の枝などが落ちていてとても荒れ果てていました。
そして荒れ果てた森の道を暫く歩いていくと、前方に白い大きな建物が見えてきました。
自分:『あっ、なんか建物見えてきた!多分あれかも!』
O:『ホントだ!大きいね!』
早る気持ちを抑えながら早速建物に近づこうとしていると、突然Oがこう言い出しました。
O:『ねえ、この道車でもなんとか通れそうな感じだし、1回戻って車乗ってここまでこようよ』
自分:『えっ?!マジで?😲この道結構荒れてるけど、大丈夫かな??』
O:『うん、多分。なんとかいけそうな気がする…』
Oがそう言うので、仕方なく一旦車まで引き返す事にしました。
そして車まで戻ってくると、今度はOに車の運転を代わり、もう一度荒れ果てた森の道を進みはじめました。
(※この頃、まだ自分は免許取り立てでした)
途中大きな石などを避けながら、荒れ果てた森の道を慎重に車を走らせていくと、なんとか無事に廃ホテル手前の広い場所にたどり着きました。
車を停めて見てみると、その大きな建物に思わず驚きました。
O:『大きいね…。これがさっき下で見えたすずきヶ池の建物かな?』
自分:『うん、多分ね…』
よく見ると通路らしき扉が壊れて開いていたので、そこから中に侵入してみることにしました。
壊れた扉から通路の中に入ってみると、左側の通路の奥は露天風呂♨になっていて、浴槽内は雑草が生い茂り、まるで池のように雨水が溜まっていました。
自分:『うわーこの露天風呂、もう池みたいになってるじゃん(笑)』
O:『ほんとだね…。でもここから海も見えるし、営業してた頃はきっと良かったんだろうね…』
露天風呂跡を後にすると、いよいよ次はホテルの本館に続いている通路の右側の方へ向かいました。
とその途中、通路から外へ抜ける道を発見したので、そこから外へ出てみました。
通路から外に出ると、そこにはホテルの外観が見渡せる原っぱの場所に出ました。
そしてそのホテルの外観を見た自分らは、思わず驚きました。
自分:『あれ?この建物、さっき下の方から見えたすずきヶ池の廃墟と違うような気がするんだけど…』
O:『うん、確かに!なんか違う気がするよね?』
原っぱからホテルの外観を見てみると、そこには大きな白いホテルの外観が見えたのですが、それが先程山の下から見えた『ホテルすずきヶ池』の建物と、どうも違うように感じたのです。
自分:『これってもしかして、別のホテルの廃墟かな?』
O:『多分、そうかもね…』
少し不思議に思いながらも、いよいよホテルの内部へ続く右側の通路の方へ歩いていきました。
するとそこには半開きになっている扉(ホテルの入り口)があり、そのすぐ左側には外階段がありました。
自分:『扉開いてるみたいだし、ちょっとだけ見てこよっか?』
O:『うん…ちょっとだけなら…』
扉を開けて建物内に入ると、奥には真っ暗な長い廊下が続いていて、廊下を挟んだ左右には客室の部屋が幾つも並び、壁には『7F』と書いてありました。
自分:『うわぁ…不気味だなこの廊下…』
O:『うん、ちょっと怖いね…』
あまりの不気味さにOが怖がりはじめたので、廊下を避けて左側にある外階段から上に上がってみる事にしました。
外階段を上がって7階から8階に上がってみると、やはり先程の7階と同様、真っ暗で不気味な廊下が奥に続いていました。
恐る恐る廊下を歩いて行くと、客室の部屋の扉が所々開いていたので少しビビりました。
客室の部屋を見てみると、何も物は残っておらずガラガラでした。
↑客室には物は何も残っておらずガラガラだった。
自分:『中はなんにも無いみたいだし、どの部屋も造りが一緒だな…』
O:『そうだね…。でも以外と中は綺麗な感じだね』
客室を1部屋ずつ順に見ていきましたが、どの部屋もだいたい造りが同じで同様にガラガラでした。
そして客室を一通り見ながら長い廊下の突き当たりまで来ると、そこは広いラウンジのようになっていて、窓ガラスがメチャクチャに割れてしまっていました。
割れたガラスから外を覗いてみると、眼下には瀬波温泉街と海を一望することができました。
と、それを見たOが何かに気づいたように突然言いました。
O:『あっ!やっぱりここ、さっき下で見たすずきヶ池の建物だね!そこの窓ガラスが割れてるの見えたもん』
自分:『やっぱそうだよね。位置的にもこんな感じだったき気がするし』
そしてラウンジの隣には止まったままのエレベーターと、その脇に上と下へ続く非常階段がありました。
自分:『どうする?もっと上に行ってみる?』
O:『う~ん…。でももう暗くなってきたし、そろそろ戻ろうよ』
自分:『そうだね…。じゃあこの階段下りて、さっきの7階に戻ろっか』
日も傾きはじめ建物内も薄暗くなり、さすがのOも少し怖くなってきたようなので、そろそろ戻る事にしました。
そして8階から出口のある7階に降りようと、階段を下りはじめた時の事です。
突然、7階の方から、
バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!
バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!
という、何かを叩いているような大きな音がしました。
O:『えっ?!なに?今の音?』
自分:『わかんない…。なんか叩いてるような音したよね?』
O:『うん、した…。もしかしてそこに誰かいるのかな?』
自分:『いや、うちら以外誰もいないと思うんだけど…』
突然の事に驚き、自分とOは思わず顔を見合わせました。
O:『あっ、わかった!多分そこに大きな鳥がいて、うちらの足音に驚いて逃げただけなんじゃないの?あそこ窓開いてるみたいだし…』
自分:『そうなのかな…??』
きっと鳥かなんかだろうと思い、警戒しながらも更に階段を降りていきました。
階段を降りて恐る恐る7階の様子を伺ってみると、そこは『エレベーターフロア』の空間になっていて、右側には広いラウンジ、正面には出口のある長い廊下が続いていました。
先ほど音がしたのは確かエレベーター横の辺りだったと思い、更にフロアに足を踏み入れようとしたその瞬間、またしても大きな音で、
バンッ!!バンッ!!バンッ!!バンッ!!バンッ!!
バンッ!!バンッ!!バンッ!!バンッ!!バンッ!!
という先程よりも大きな音が鳴り響いたのです!!😱
それはまるで、人が両手で床を強く叩いているような感じの音でした。
O:『えー怖い!ねえもう戻ろうよ!これってきっとこれ以上来るなって言ってるんだよ!』
自分:『うんそうだね…。ヤバそうだし戻ろうか…』
さすがにこれ以上いるのは危険と判断し、音がした7階のエレベーターフロアの方には行かず、再び階段を上がって8階の廊下を引き返し、先ほど上がってきた外階段から下って外に脱出しました。
そして車に戻ると、急いで廃ホテルから離れました。
O:『あー怖かった…。ねえあれってさ、絶対これ以上来るなっていう警告だよね?』
自分:『うんそうかもね…。もしかして遊び半分できたうちらに対して、霊が帰れって怒ってたのかも…』
とりあえず近くにあるコンビニにより、少し休憩することにしました。
そして軽く休憩をとると、徐々に気持ちも落ち着いてきました。
自分:『あーあ…。あの廃ホテルまだ全然探索できなかったし、もっと見たかったなー😞💨』
と自分が残念そうに言うと、Oが意外な事を言い出しました。
O:『確かにね…。じゃあさ、今日は車の中で泊まって、朝になったらまた行ってみる?』
自分:『えっ?!マジで?朝までここに?😲』
O:『だって気になるんでしょあの廃墟?またここまで来るの遠いしさ、どーせだから朝までここにいようよ』
自分:『うん…。でも車の中で寝れるかな?😅』
O:『大丈夫だよ。私も昔遠出した時とか、結構車中泊してたし。朝になったらもう一度あの廃墟行ってみようよ。明るい内ならきっとそんなに怖くないだろうし』
自分:『そうだね!あの謎の音も何だったのか気になるし…』
そう決めた自分らは、海浜公園の駐車場に車を停めてなんとか時間を潰し、朝まで車中で過ごす事にしました。
そして翌朝🌄、案の定中々眠りにつけなかった自分は、結局一睡もしないまま朝を迎えてしまいました。
Oが起きるのを暫く待った後、コンビニで適当に朝食を済ませ、再びあの『ホテルすずきヶ池』の廃墟に向かいました。
そしてこの後、いよいよ廃ホテルすずきヶ池の全貌が明らかになるのです。
次回の《瀬波の巨大廃ホテル その② もう一度廃ホテルへ…》編に続きます。