緑色の部屋 …人間は二度死ぬ? | YUUYAの徒然なる電影欣賞

緑色の部屋 …人間は二度死ぬ?


YUUYAの徒然なる電影欣賞
【映画鑑賞日記 No.014】

『緑色の部屋 』 
…1966年 【フランス】
[原題:LA CHAMBRE VERTE/THE GREEN ROOM ]


<人間は二度死ぬ? ・・・重い映画テーマ>


人間は二度死ぬ
---「人間には命が消えていく死と、名前が人の記憶から消えて行く死」の二つだ。

砲兵隊として第1次世界大戦に参加した主人公・ジュリアン(F・トリュフォー)のゆっくりとうつむく顔。背景はその戦争情景もブルーを基調とした色彩で映し出される。
ジュリアンは「生存している人間」に興味がなく「死者を愛し忘れない」頑とした人間。
と人が変わった原因は「愛妻の若すぎる死」に加え「戦争で大勢が死に自分だけ助かった悔恨」の念が重畳されているのだろう。
「私の友達はみな戦争で死んだ。死者の代わりはいない。思い出の中にいるだけ。」
冒頭から「人の死」に纏わるこの会話だ。会話のテーマは重い。
★棺に収まった死者を目前にした神父に対し、
「愛は永遠に耐えて待つことではない。必要なことは死者をすぐ蘇らせることだ。」
★彼と同じく妻を亡くした男に対し、
「愛は死者を蘇らせる。君次第だ。愛があれば死者は生き続ける。」


<グレー・ゾーンで生き続けるということ①>


ジュリアンはこれだけでなく、「死者への愛」を持たない、持ち続けない人間も排他し、
現実の世界と隔絶した領域、グレー・ゾーンで生きている。その決意は固い。
しかも自分が「愛す・守るべき死者」、そうでない「死人の扱い」線引きも明確だ。
★かつて友人で裏切られた政治家・ポール・マシニーの死に対し、
「彼は私に人間の醜さを教えてくれた。憎んでなんかいません。それ以上です。」
「私は学んだ。人生は残酷な生存競争だとね。うんざりです。むしろ傍観者のほうがいい。」
傍観者として生き続ける」ということは、「人」との触れ合いを絶ち、「人生の楽しみを避けて続け」て、流れ続ける時間の中で記憶を止めたままにすることであり、「生」と「死」の中間で現実社会を生き続けるということだろうか?


<「許す/赦す」を認めて生き続けるということ②>


★この主人公に対し妻の形見の競売品売り場で知り合った女性・セシリアの見解。
自分が愛し、または信頼した人間が豹変し、裏切ったとしても・・・それを忘れ、或いは許す時期は訪れる・・・
「うまくいえないけど、忘れることも必要だと思うの。私は死者だけでなく生きている人も愛します。」
「誰かが死に誰かが生まれる。死んだ友達の代わりに新しい友達ができる。
それが人生よ。一つの愛を失い、もう一つの愛を見つける。自然の摂理よ。」


<自分の解答は見出せず&言葉にもまとめられず・・・>


本当に人を愛したことがなく(愛が足りない)、または「心の貧しさ」からであろうか?
自分にとっての死者は生きている空間の中に現れないし、現実の生存者のように人物印象が変わりもせず、幕引きしたまま不変である。確かに死者の思い出は記憶の中に残っており「二度目の死」が来ていない状態にも関わらず・・・生き続けた状態ではない。
自分の死に対し深く考察した事もなく、死後の存在を信じていないからだろうか?
自分の死後を「敬う」人間がいなくても、忘れ去られて二度目の死が来ても構わない。
今は現実社会で前進することを躊躇していない

この社会で裏切り等の「人間の醜い心」に出会う事、自分の方がそれを曝け出すことも避けられないだろうが、その逆にも多く出会えるはずだ。
例え誰かを愛したとしてもその人の「死」を恐れて愛することを止めてははいけない。
確かに自分が、愛する人が死期を迎える事の想像すると・・・

その時はその時。間違いなく、その苦しみ・恐怖は多くの人と同様、自分にも乗り越えられるはずだ。


<ラスト・シーンの意味するものは・・・?>


この映画のラスト・シーン、どう解釈すれば良いのだろう・・・未だに整理がつかない。
(1)主人公が死の間際に「人の罪の赦し」の心を抱いたのだろうか?
(2)主人公が愛する死者の眠る「死者の祭壇」を維持する為に「憎むべき人間」でも蝋燭を立てたかったのか?
(3)主人公が最後の土壇場で「生きる人(=セシリア)」に対する愛情の心を持ち、彼女の愛する死者の蝋燭を立てることを許容したのだろうか?


<追記:N・アルメンドロスの撮影とN・バイの美しさ>


撮影の名手と誉れ高い「ネストール・アルメンドス」の映像は御覧あれ。この映像美だけで作品の鑑賞価値あり。
ナタリー・バイは最後のロウソクが照らされるエンドロールは無論、「(私に会う)資格が欲しいなら試験をするわ。私の目の色は」・・・と手で目を隠すシーンが印象的。本当、ベッピンさんだな・・・これも一見の価値ありか?