ハリウッド映画の中心地ロサンゼルスでアダルト映画撮影の際にコンドーム使用を義務付ける条例が提案され、論議を呼んでいる。法案を推進する側は、6月の住民投票実施のために必要な署名を集めて市に提出。これに対して市の法務当局は、住民投票の前に解決すべき法的問題があるとの見方を示した。

「アダルト映画業界におけるセーフセックス条例案」は、血液などの感染性物質からスタッフや関係者を守ることを目的に、アダルト映画の制作者に対して撮影中のコンドーム使用などを義務付ける内容。条例の制定を訴える非営利組織(NPO)のAHFなどエイズ感染防止に取り組む団体が、有権者の署名を集めて市当局に提出した。

市は23日に、住民投票実施のために必要な署名が集まったと発表。AHFなどが提出した署名は7万人分を超え、必要数の4万1138人を上回った。

AHFによれば、アダルト映画業界では2010年に俳優のHIV(エイズウイルス)感染が発覚し、映画数本の制作が中止になった。04年にも俳優4人のHIV感染で制作が中止になったことがあるといい、「これはポルノの問題ではなく、労働者保護の問題だ」と同団体は訴える。

これに対して市の法務局は、コンドームの使用はカリフォルニア州の州法にも定められており、市にこうした法律を執行できる法的権限があるのか、それとも州法が優先されるのかがはっきりしないと指摘する。440万ドルの予算を投じて住民投票を実施する前に、この問題を解決する必要があるとした。

推進側は、市が条例を制定すればさらに規制を徹底できるとの考えだが、条例案に反対するアダルト映画業界は訴訟も辞さない構えで、「検査と自己規制によってHIV感染防止対策は多大な成功を収めている」と強調している。

アダルト映画業界では性感染症が以前から問題になっていた。AHFによれば、この業界の関係者が性感染症に感染する確率は10倍に上っているという。