13日朝、伊丹空港を出発した高知空港行き全日空ボンバルディア機1603便(乗客56人、乗員4人)が着陸の際、前輪が出なくなり、約2時間にわたって同空港上空を旋回した後、午前10時54分、後輪を使って胴体着陸した。機体は火花を散らせながら滑走した後、滑走路上で無事停止。乗客、乗員にけがはなかった。空港には消防や医療、警察関係者らが多数待機するなど緊迫した。

 全日空によると、1603便は今里仁機長(36)が操縦し、同日午前8時21分、伊丹空港を離陸。同8時55分に到着する予定だった。

 国交省や全日空によると、機長から前輪の不具合を示す計器表示があったと連絡があり、高度約900メートルで手動で車輪を出そうとしたが出なかった。同10時25分、高知空港の滑走路に接地し、すぐに上昇する「タッチ・アンド・ゴー」のショックで前輪が出ないか試みたが出ず、もう一度上空に戻った。

 全日空高知空港所によると、同便は乗員判断で伊丹空港に引き返さないことを決め、着陸時の出火の危険を避けるため上空旋回で燃料を消費した上で、後輪と胴体だけで着陸した。

 政府は同日午前9時45分、首相官邸に情報連絡室を、県警や県、高知空港事務所も対策本部を設置していた。

 この機体は、カナダ製プロペラ旅客機のボンバルディアDHC8―Q400(客席74席)。全日空によると、平成17年6月に製造され、総飛行時間は2966時間52分。全日空子会社「エアーセントラル」が運航している。

 全日空はボンバルディア機を13機所有し、YS11の後継機として主にローカル路線に就航しているが、故障や不具合が相次いでおり問題視されていた。国交省航空・鉄道事故調査委員会は同日、調査官2人を高知空港に派遣、原因調査を進める。

 【写真説明】滑走路に機首が接触し、火花を散らしながら胴体着陸するボンバルディアDHC8―Q400型機(13日午前10時54分、高知空港)

 ボンバルディアDHC8

 1980年代初めにカナダのデハビランド・カナダ(現ボンバルディア)社が開発、生産を始めた双発ターボプロペラ機。全日空のホームページによると、大阪―高知間を運航するQ400は、全長32・8メートル。巡航速度は時速約650キロ。乗務員は運航、客室各2人。

 エアーセントラル

 愛知県常滑市の中部国際空港に本社がある全日空の子会社。名古屋空港を中心に小型機を運航していた中日本エアラインサービスが前身で2004年11月に全日空が持ち株比率を上げて子会社化した。現在、ボンバルディアDHC8とフォッカー50の2機種のプロペラ機を運航している。全日空便として、中部国際空港から秋田や福島、米子、徳島、福岡などを結ぶ便が中心。大阪空港からも高知のほか、新潟や松山に就航している。

 高知空港は閉鎖

 高知空港事務所によると、全日空機の胴体着陸で高知空港は13日、閉鎖が続き、羽田発の最終便を除き欠航が決まった。

 3社に点検指示 国交省大阪航空局

 国土交通省大阪航空局は13日、前輪が出ないトラブルのため高知空港に胴体着陸した全日空機と同じボンバルディア機を運航するエアーニッポンネットワーク、エアーセントラル、日本エアコミューターの3社に対し、着陸装置の点検を指示した。

 機体検証、原因解明を

 航空事故に詳しい清水喜由・NPO法人航空フォーラム代表の話

 今回トラブルを起こした機体は旧来のボンバルディア機と比べコンピューター制御が進んでいる。コンピューターに何らかのトラブルが発生し車輪を下ろす装置にロックがかかった可能性がある。ただ手動操作や着地の衝撃でも前輪は下りておらず、部品が引っ掛かったなどの原因も考えられる。いずれにしてもこの型の機体にトラブルが集中していることは問題だ。機体を検証し、早急に原因を解明する必要がある。

 極めてまれな事例

 航空評論家の青木謙知さんの話

 前輪が出なかった原因は、ロックが外れなかったか、格納室の扉が開かなかったなどが考えられるが、海外で起きた同種のトラブルでは手動で対応できており、極めてまれな事例だ。機長はやるべきことを丁寧にやった。胴体着陸まである程度の時間があり、消火活動などの対応も適切に行われたと思う。