「ぁ…の、高月、さぁ…」

 「真奈美って呼んでぇ?」

 「…」


 このまま付き合えば、

 先輩と親友からどういう目で見られるか、

 周りに広まったら俺はどうなるか、

 予想はついていた。

 ―――――が、やはり、可愛い女の子を前にして、

 ほっておける程、俊也も大人ではない。


 「…真奈美」

 「嬉しい♡真奈美って呼んでくれたぁ♡」

 「本当に、本気か?」

 「本気ぢゃなかったらぁ、キスとかしなぃしぃ?」

 「ぁ、そ…」


 真奈美はまた歩きはじめる。

 「俊也くん家ってぇ、どこぉ?」

 「俺ん家は、その角を曲がって…」

 「ぁ、真奈美の家と近いんだぁ♡

  一緒に帰ろうよぉ♡」

 「ぁ、おぉ…」


 そして少し歩くと、白い壁の

 可愛らしい家が見えてきた。


 「真奈美ん家、そこの家だょぉ」

 「あ…じゃ、そこまで送るよ。」

 「やっぱり俊也くんって優しぃ♡」


 門の前まで歩くと、真奈美が振り返った。

 「ねぇ、真奈美ん家、寄ってってぇ?」

  

 別に、用事も無かったし、

 相手がいいならば寄って行ってもよかった。

 だが、相手は親友と先輩の好きな人だ。

 まぁ、一応俊也の彼女であるが。


 「いいのか?だったら…」

 俊也は、理性に負けてしまった。


 門をくぐると、真奈美がドアを開いた。

 「どぉぞ、入ってってぇ♡」

 「あぁ…お邪魔します。」


 1歩踏み出すと、甘い、香水のような

 いい匂いがした。


 「この部屋が、真奈美の部屋だよぉ♡」

 真奈美の部屋は、かわいらしくピンクベースで、

 すごくキレイにまとまっていた。


 「適当に座っててぇ」

 「あ、分かった。」

 俊也は返事をすると、机の側に置いてある、

 ピンクのマットに座った。


 「ねぇ、飲物は紅茶でいい?」

 「俺、紅茶結構好きだから嬉しい」

 「本当?真奈美、嬉しいぃ♡」

 そういうと真奈美は、部屋から出て行った。


 本当に、これでよかったのだろうか。

 俊也は考え直したが、やっぱり、

 今帰るというわけにもいかないし、

 もうめんどくさくなって、考えるのをやめた。