いじわるな神様に新婚の夫の決断 No.390 1月30日発

　今年30歳になるＳさんは、25歳のＴ子さんと、長距離恋愛をしていた。そのお付き合いはもう三年ほどになる。やがて二人の間には愛がめばえ、結婚の約束をするまでに発展した。
　Ｓさんは、コンピュータ会社のエンジニアで日夜、多忙な生活をしていたので、結婚の踏ん切りがなかなかつかなかった。しかし、毎晩のように帰宅した後、電話やメールでやり取りをしていると、Ｔ子さんの優しさや思いやりが本物であることが次第にわかってきて、どうしても結ばれたい、と思うようになった。
　結婚式は、友人だけで東京で挙げることになった。
　Ｔ子さんの実家は、北海道の函館で、両親や親族は、是非、地元でも披露宴をしてほしい、と切望しているという。だが、とにかくＳさんの仕事が忙し過ぎるので、いずれ休暇を取って彼女の実家でお披露目をすることにしたい、そして一度、二人で行ってみたいと思っていた、道東の摩周湖や風蓮湖を訪ねてハネムーンを楽しみたい、という彼の計画を聞き、彼女もようやく納得したようだった。
【幸せに暗雲が立ち込めた一夜の出来事】
　しかし、どうして神様は、こんな若い二人に意地悪な仕打ちをするのだろうか。
　結婚式の後、友人たちに送られて新幹線で博多まで来た夜のことだった。
　予期せぬことが起こった。新婚初夜に欠かせない儀式でもある愛の交歓が、どうしてもできないのだ。何度、挑戦しても二人は結ばれることができなかった。その夜は、お互いに緊張していることもあるので、そんなこともあるかと気にも留めずに寝たが、翌日も、その翌日もどうしても愛の交歓ができなかった。新婚旅行から帰った東京の夜の生活でも同じように、二人は、初夜を迎えることができない。やがて、夫のＳさんの胸に、妻は何か重大な病を抱えているのではないか、という不安が広がり始めた。
　女性の生理に関しては、ほとんど無知だったが、いろいろな書物を調べてみると、妻の体に欠陥があるらしいことが次第にわかってきた。
【妻が失踪、しかし夫の愛は不変】
　新婚生活がひと月ほど経った頃だった。
　妻のＴ子さんは置き手紙を残して失踪してしまった。手紙には、

「体の不調を打ち明けずに結婚した私の行為が、いかに愚かであったかということを今はっきりと自覚しました。
　実は、私の下半身は、他の友人たちと違って、いつも乾燥していて濡れることがないのです。婦人科にかかることを勧められましたが、怖くてかかる勇気がありませんでした。
　あなたに真実を打ち明けずに一緒になったことを、今は詫びたい気持でいっぱいです。
　どうぞ許してください。私のことを早く忘れて、いい人を見つけて幸せになってください。祈っています。」
「何を言っているのだ。そんなことでオレが君を捨てる、とでも思っているのか！」そう彼は忌々しそうに吐き捨てるようにいうとその手紙を破り捨てた。
【ゼリーとローションで、悩みは解消】
　こうした性の悩みは、とくに高齢化社会では少なくないことが知られている。ある統計によると男性の最大の悩みは勃起不全、女性の悩みはバルトリン腺の分泌機能の不調であることがわかっている。このような女性の症状が、なかなか改善しない時には、専門医の診断と治療を受けるいっぽうで、愛の交歓では、ゼリーやローションを常用することが悩みの解消に役立つことが多い。
　さて、二人のその後の結末だが、Ｓさんは辛抱強く、妻が戻って来ることを待ち望んで、今も一人で暮らしている。それが、愛を貫く男の生き方だと彼は信じて疑わないのだ。

東スポ　男の羅針盤「男の生き方、男の死に方」編より