疲れ果て目を瞑ったずんちゃん。

 

 

可愛い寝息に癒されながらも

 

 

そっと部屋を出ると

 

 

彼女もちょうど洗い物を終えたようで

 

 

顔を上げ、私に微笑んだ。

 

 

な「寝ちゃいました?」

 

 

ゆ「うん、もうねぐっすり」

 

 

な「ありがとうございました、何から何まで」

 

 

なのでこれ、って差し出してきたのは

 

 

綺麗に個包装された色とりどりのケーキで

 

 

ゆ「えっ、こんなの悪いよ」

 

 

って私が押し返すと

 

 

彼女は首をブンブン振りながら

 

 

受け取ってくださいって

 

 

私の手に袋を握らせる。

 

 

ゆ「じゃあ、ありがたく貰います」

 

 

ここはもう変な意地なんか張らずに正直に

 

 

ありがとうって笑うと

 

 

彼女も安心したように笑って

 

 

身支度する私の横でジャケットを着始める。

 

 

ゆ「どっか行くの??」

 

 

な「はい、送ります!

 

暗いと危ないので」

 

 

当たり前のことのように私を見る彼女に

 

 

ゆ「あっ、ありがとう//」

 

 

照れながらそう言う事しか出来なかった、

 

 

それは7時を回った夜の始まり。

 

 

 

 

ゆ「ねぇ岡田さん、、」

 

 

な「はい」

 

 

ゆ「私たち同い年なんだからさ、

 

そろそろ敬語やめない?」

 

 

もう暗くなった一本道を心なしかゆっくりと歩く

 

 

綺麗な横顔を見つめながら

 

 

敬語が所々に混じった彼女への

 

 

私からのちょっとした提案。

 

 

な「そうですね、あっ、そうだね」

 

 

慣れてなさそうな彼女の返答に頬が綻ぶ。

 

 

な「じゃあ、苗字呼びもさん付けもやめにしません?」

 

 

ゆ「あっ、それ敬語」

 

 

な「あっ、」

 

 

しまった、なんて間抜け顔の彼女と

 

 

目を合わせて、笑い合う。

 

 

それは幸せすぎるひととき。

 

 

ゆ「じゃあなんて呼べばいいですか?」

 

 

わざと敬語を使って話すと

 

 

ちょっと不服そうに眉を顰めるのが

 

 

たまらなく可愛くて、

 

 

こんな表情を学校でされたら

 

 

きっと人気者になっちゃうんだろうな。

 

 

って考えただけで少し胸の奥がモヤモヤしてしまう。

 

 

な「じゃあなぁちゃんってどう?

 

ずんちゃんもそう呼んでるよ」

 

 

ゆ「うん、可愛い

 

私はどうしよっかな」

 

 

な「うぅ〜ん、村山さんは、、、」

 

 

首を傾げ、少し考えた後、

 

 

彼女は楽しそうに手を叩く。

 

 

な「ゆうちゃんはどう??

 

さっきずんちゃんがゆうって呼んでたし!」

 

 

キラキラの目で笑いかけたりなんかされたら

 

 

ドキドキする心臓をもう隠せなくて、

 

 

ゆ「うん、それがいい」

 

 

そんな事を呟くのが精一杯なことに

 

 

なぁちゃんはきっと気づいてないんでしょ?

 

 

な「ゆうちゃん、、」

 

 

ゆ「は、はい//」

 

 

急に名前を呼ばれ、

 

 

温度が上がっていく頬とか

 

 

さらに速さを増すドキドキとか

 

 

こんなの初めてで。

 

 

な「ありがとう、ゆうちゃん」

 

 

何度聞いたかわからないその感謝も

 

 

ごめんなさいって申し訳なさそうな謝罪も

 

 

全部全部、彼女の優しさから来るもので、、、

 

 

まだ一緒にいたい、

 

 

袖を引っ張ってそんなことを言える関係なら

 

 

どんなによかっただろうか。

 

 

ゆ「送ってくれてありがとね」

 

 

だけどここでタイムアップ。

 

 

これでもかと言うほどに

 

 

後ろ髪をひかれながら私は背を向けた彼女を見送る。

 

 

それは彼女が初めて私を

 

 

「ゆうちゃん」と呼んだ夜。