な「これ、超懐かしくないですか?」

 

 

ダンボールの山が私達を囲み、

 

 

空っぽだった部屋を彼女と私の色で染めていく中、

 

 

少し頬を赤らめながら、

 

 

もうそれは懐かしすぎる蝶のネックレスを手に持っていたりして、

 

 

ゆ「あっ、もしかしてそれって!」

 

 

な「ですね

 

あの日プレゼントしたネックレスです」

 

 

ゆ「ずっと探してたの!」

 

 

って彼女の前に立って、髪を持ち上げる。

 

 

彼女は瞬時に私の行動を理解し、

 

 

そっと私の首にそのネックレスを付ける。

 

 

時を経て、増えていく私達の大事なものが

 

 

古いものを記憶の奥底へ押し込み、

 

 

時に何かを忘れてしまうけれど、

 

 

ゆ「やっぱりこれが一番だ」

 

 

な「うん、ゆうちゃんにとっても似合ってる!」

 

 

あの頃に比べて、敬語が取れ、

 

 

素直に感情表現をしてくれるようになった彼女も、

 

 

私を見つめるその目はずっと変わらないままで。

 

 

な「ゆうちゃん、ちょっと寄り道しませんか?」

 

 

大きなダンボールの中から取り出した複数のアルバムを抱えながら、

 

 

彼女は爽やかに笑ってみせた。

 

 

ゆ「フフッ、そうだね~

 

時間はいくらでもあるし」

 

 

な「これ見て、懐かしい!」

 

 

隣で目を細める無邪気な彼女の手を私はそっと握る。

 

 

ギュッと握り返してくれるその温もりが

 

 

愛おしさと共に伝わってきて、

 

 

日々を過ごした記憶の懐かしさも相まって、

 

 

ふいに気を抜いたらもう涙が溢れ出てしまうんじゃないか。

 

 

そんな愛し愛される幸せ。

 

 

ゆ「うん、懐かしいね」

 

 

そう、私達は焦ることなんかない。

 

 

だってもう囚われてなんかいないんだよ?

 

 

こうやってアルバムを開いて一日を過ごしても、

 

 

まだ眠いねって昼寝を何度繰り返しても、

 

 

無駄なんかじゃない。

 

 

だってこれから私達ずっと、ずっと

 

 

一緒にいるんだから。

 

 

 

 

その羽が強く光を放つとき、

 

 

その羽が鈍く暗闇を照らすとき、

 

 

私達はお互いを見つけあった。

 

 

絶望的な崖の淵、硬い虫かごの中、

 

 

状況は違えどずっと何かに囚われていた私達は

 

 

もしかしたら会うべくして、出会ったのかもしれない。

 

 

地獄にでもなんでも、彼女の為なら行ける。

 

 

そこがどんなとこでも

 

 

どこに姿を消そうと

 

 

見つけ出し、またあなたと手を繋ぎ、唇を重ねる。

 

 

でも本当は地獄なんかじゃなくて、

 

 

天国の階段を共に歩きたいよねって

 

 

「ゆうちゃん、誰よりも愛してます」

 

 

「なぁちゃん、絶対に離れちゃだめだよ?」

 

 

そういった彼女と私の

 

 

愛の階段は最初からずっと繋がっていたのかもしれない。