な「ほんと、ありがとうございました」

 

 

妹さんの手を握りながら、

 

 

丁寧に頭を下げる彼女は

 

 

やっぱり重度の礼儀の良さを持っていて、

 

 

ゆ「ううん、全然!

 

むしろ涼羽ちゃんと遊べて楽しかったよ、ねぇ〜?」

 

 

彼女の隣で楽しそうにぴょんぴょん跳ねる涼羽ちゃんに笑いかけると、

 

 

元気よく、うんって頷いてくれて、

 

 

目が細まる笑い方は岡田さんに似てて可愛いな

 

 

なんて柄にもなく頬が緩んだりして、

 

 

な「すっかり打ち解けたみたいですね?、、、

 

ずんちゃん、人見知りなんだけどな」

 

 

ゆ「へぇ、そうなんだ

 

てか、そのあだ名かわいい、私も呼んでいい?」

 

 

首を傾けると、もちろんって、

 

 

私に優しく微笑みかける彼女。

 

 

その瞬間、あの日のように、

 

 

見つめ合う私達の間を突き抜ける涼風のせいで

 

 

私はそこから動けなくなる。

 

 

話を続けたいのに、言葉が出なくて、

 

 

それは彼女も同じなようで、

 

 

無言で瞳を合わせる私達を

 

 

ずんちゃんは不思議そうにそれを見ていて。

 

 

ず「まだ、ゆうと遊びたい!!!」

 

 

ぐずるようなずんちゃんの声で私達は一気に現実へと引き戻され、

 

 

きっと赤く染まっているであろう頬に

 

 

私は恥ずかしくなって俯いた。

 

 

な「わがまま言わないで、、

 

これ以上迷惑かけられないよ、

 

村山さんは今からお家に帰らなきゃだから」

 

 

ずんちゃんと同じ目線になれるようしゃがんだ彼女は

 

 

困ったように笑っていて、

 

 

まだ帰りたくないなんて言葉が口をついて出てきそうになる。

 

 

ゆ「迷惑だなんて思わないよ?

 

もうちょっと遊ぼっか?」

 

 

な「えぇ、でも、、」

 

 

申し訳無さそうな表情の彼女に

 

 

ほんとにこの人は、人に頼るってことに慣れてないんだなって

 

 

なんだかちょっとだけイラついて、

 

 

ゆ「だから、そんな顔しないの!」

 

 

彼女の下がった口角を指で無理やり引き上げる。

 

 

ゆ「たまには素直に頼りなよ、しかも

 

私もまだずんちゃんと遊んでたいし」

 

 

諦めたような、ホッとしたような、

 

 

そんな笑顔で微笑む彼女のこの表情。

 

 

あぁ、この顔好き、、、

 

 

そう本能的に思ってしまうのは

 

 

自分では止められるはずもなく、

 

 

口角に当てていた手を無意識に頬にそっと添えてしまう。

 

 

ゆ「あっ、ごめん\\」

 

 

彼女の驚いた顔に我に返って、

 

 

すぐに手を離そうとすると、

 

 

頬に触れていた手に上から添えられた温かい手。

 

 

な「ほんと、不思議な人ですね、村山さんって」

 

 

さっきのずんちゃんみたいに目がなくなるような満面の笑み。

 

 

な「じゃあ、お言葉に甘えて

 

あと、夕飯も良ければ食べて行ってください」

 

 

なんて甘い声色で私の添えた手と、顔を

 

 

ますます熱くしてしまう目の前の人。

 

 

それは堅物なだけじゃない、

 

 

ちょっぴりズルい、素敵な人。