後ろできゅっと結んだ髪。

 

 

シンプルな青いTシャツ。

 

 

ダボっとしたジーンズに

 

 

無数のピアスと彼女の指で光る綺麗なリング。

 

 

細い腕に入ったバラのタトゥーとか

 

 

鼻腔をかすめる危険な薔薇の匂いとか、

 

 

もうそれは言葉で言いあらわすのにはもったいないくらいに

 

 

「ギャップ」という言葉が似合う人で、

 

 

あっついね、なんて首元の袖をパタパタとする仕草が

 

 

こんなにも様になることがあるんだなって

 

 

地味に感心してしまうほどに、私は彼女に釘付けだった。

 

 

ゆ「ありがとね、助けてくれて、、」

 

 

な「いや全然、助けようと思ってたのに

 

逆に度肝抜かれちゃったよ笑笑」

 

 

まぁ確かによく見たら、格好は全然違うものの、

 

 

丁寧な口調とか、

 

 

どこか高貴さを感じさせるオーラとか

 

 

「岡田さん」を感じるところもあるにはあるわけで

 

 

変かな? って問われた時、

 

 

変なんてとんでもない!!

 

 

むしろめっちゃかっこいいよ! と

 

 

叫んでしまいそうになるのを

 

 

ギリギリのところで堰き止めて、

 

 

“ううん、どっちも岡田さんだよ?”

 

 

って違うけど、変わらないとこもあるよって、

 

 

そう言うと彼女は満面の笑みと共に

 

 

な「村山さんは想像以上に甘いね」

 

 

なんて言ってしまうんだから恐ろしい。

 

 

きっと私の顔は

 

 

今頃りんごのように真っ赤なんだろうなって

 

 

恥ずかしさが加速して。

 

 

そのくせしてそれに気づかず、

 

 

笑っているんだから罪な物で

 

 

ゆ「てかさ、、この前フェンス乗り越えて、何してたの?」

 

 

誤魔化すように、問いかける。

 

 

な「えっ?フェンス?」

 

 

ゆ「学校から帰る時、

 

フェンス飛び越えて行ったでしょ?

 

あれ結構びっくりしたんだからね」

 

 

な「あぁ、あれ村山さんだったんだ、、

 

顔見られちゃまずいって思って、、

 

目合わせないようにしてたから」

 

 

私だったことに気づいていなかったことに

 

 

バツが悪そうな彼女に、

 

 

そこっ? って突っ込みそうになりながらも

 

 

ゆ「何してたの?」

 

 

ともう一度聞いてみる。

 

 

な「実は私さ妹がいて、

 

学校からすぐ迎えに行かなきゃで、、、」

 

 

ゆ「だからってフェンス飛び越えなくても苦笑」

 

 

だよねって笑うから、

 

 

危ないよって揶揄うと

 

 

な「あれが結構使える近道でさぁ〜

 

幼稚園、3時に終わるのに、

 

ご厚意で私の帰宅時間まで預かってもらってるからさ

 

ノロノロ帰るのもなんか違うなって」

 

 

あぁほんとにこんな格好して生真面目。

 

 

だからかなって、

 

 

ゆ「岡田さんって素敵な人だね」

 

 

なんて口から滑り落ちるように出てしまったのは。