side N

 

 

最初は若いナンパ男達を、バカだなぁ〜、なんて面白半分で見ていたのがきっかけ。

 

 

どうせ女の子も満更でもないんだろうし、

 

 

なんて思って、通り過ぎようとしたとき、

 

 

ぱっと顔を確認したら、クラスメイトの村山さんだったことに気づく。

 

 

可愛い子供顔に少し背伸びしたメイクで

 

 

黒い髪をなびかせる彼女。

 

 

正直そんなに仲良くないし、

 

 

まずまずこんな格好、村山さんに見られて、チクられたりした暁には、

 

 

そりゃもう学校で悪い意味で目立ってしまうだろうと。

 

 

でもこのまま、見て見ぬふりして、何かあったりしたら、

 

 

夢見が悪いし、私は助けるつもりで

 

 

それとなく声をかける。

 

 

案の定、彼女は腕を掴まれている様子で

 

 

助けに来た私を見た瞬間、安心した表情を浮かべた彼女に

 

 

スルーしなくてよかったと、安堵のため息をつく。

 

 

こんなに諦めの悪いやつが良くいたものだと、

 

 

逆に感心してしまうほどにしつこい彼らを、

 

 

彼女のそばに行かせぬよう、説得するが、

 

 

なんとしてでも彼女とお近づきになりたい様子。

 

 

一向に引く気のない彼らに

 

 

流石の私もしびれを切らしかけていたとき、

 

 

彼女は口を開いた。

 

 

”うちのパパ呼んで地獄まで追いかけてもらうよ?”

 

 

なんてそれは予想以上に毒っ気のある響き、

 

 

いつもの柔らかいオーラとは正反対、

 

 

まるで黒い靄が彼女の背後から見えてきそうなほど。

 

 

悪戯げな笑顔を一瞬で満面の笑みに戻し、

 

 

こちらを見た彼女に

 

 

な「あっはっは、はっはっは」

 

 

思わず吹き出す。

 

 

ゆ「?」

 

 

急に笑い出した私にはてなマークを浮かべて、

 

 

首を傾げた彼女は、

 

 

もういつもの村山さんに戻っていた。

 

 

な「いやごめん、ちょっと意外で

 

村山さんってそういうキャラだっけ?」

 

 

なんて言うと、え?、って戸惑いの表情。

 

 

何か気に触ること言っちゃったかな。

 

 

数秒の沈黙の後、

 

 

ゆ「なんで私の苗字、、」

 

 

え?、、、

 

 

その瞬間、あぁ、そういうことか。

 

 

頭の中で妙に納得して、

 

 

それと同時、この人になら言っても別に言いふらそうなんて

 

 

そんな考えにすらならないんじゃないかって。

 

 

な「岡田です、おんなじクラスの」

 

 

この状況がなんとも面白くて、笑いながら告げると、

 

 

ゆ「岡田、、さん?」

 

 

目をまんまるにして、ただ復唱することしかできない彼女に

 

 

私の爆笑メーターが爆発寸前。

 

 

な「ごめんね、驚かしちゃって」

 

 

ゆ「いやいや、全然、むしろ助けてもらっちゃって、

 

でもなんか、、、雰囲気違うね?」

 

 

まるで様子を窺う子供のような彼女。

 

 

な「変かな?」

 

 

ゆ「ううん、どっちも岡田さんだよ?」

 

 

そんな答えに

 

 

あれこの子、こんなに甘い子だったけ?

 

 

なんて心の中で、驚く。

 

 

甘くて魅力的な毒を持つ。

 

 

でもキレイで、清楚な花に見えて、

 

 

トゲがある。

 

 

そう、強いて言うなら彼女は

 

 

「バラの果実」のようだった。