ゆ「はぁ〜疲れた〜」

 

 

そんな間抜けな声を出しながら、

 

 

生徒会室の扉を開ける。

 

 

想像と反して会長しかまだ来てないことに少し驚きながら、

 

 

笑っている会長に一声かけ、席に座る。

 

 

ゆ「まだおんちゃんだけなんだ?」

 

 

お「うん、なぁちゃんは野暮用があって遅れるってさ」

 

 

2年生なのにも関わらず、数々の3年生を抑え、

 

 

会長になった彼女は

 

 

なぁちゃんと同じ学年の向井地美音。

 

 

生徒会長と副会長を2年生で固められたんじゃ、

 

 

3年生ももう頭が上がらなく、

 

 

いつの間にか会長という座が板についているおんちゃんに

 

 

どっちが年上なんだかと少し苦笑い。

 

 

ゆ「へぇ珍しい、あいつが遅刻なんて」

 

 

お「ね〜っ!あっ、ゆうちゃん筆箱忘れてたよ」

 

 

ゆ「あっ、うん、なぁが届けてくれたよ」

 

 

お「あっ、やっぱ届けたんだ?」

 

 

ゆ「え?」

 

 

ニヤニヤしながら眉を上げる彼女に

 

 

頭に無数のハテナが浮かんで、

 

 

気の抜けた声を出してしまう。

 

 

お「最初は篠崎先輩が届けようとしてたんだけどね」

 

 

なんだ、篠崎なら良かったのに、

 

 

お「どうせ3年の階に用があるから私が行くってさ

 

そん時のなぁちゃんの圧がさもうほんとすごくて

 

篠崎先輩も流石に勝てなかったの」

 

 

ゆ「えぇ〜篠崎かわいそうじゃん

 

篠崎もどうせ3年の教室来るのに

 

てか絶対、どやしに来ただけだよ、あいつ」

 

 

かもね〜、と流石のおんちゃんも苦笑いの中、

 

 

タイミングよく扉が開いて、

 

 

今し方愚痴をこぼしていた相手が

 

 

後輩の大西と入ってきたりして、

 

 

私はビクッと肩を上げる。

 

 

大西「こんにちはァー」

 

 

な「遅れてすいません」

 

 

まぁこれは律儀なことで

 

 

なんて心の中で嫌味を爆発させていると

 

 

彼女は当たり前のように私と大西の隣に座る。

 

 

毎日私をどやすために、わざわざ隣に座る彼女を

 

 

うっとしく思いながらも

 

 

ポッケから気だるそうに出された

 

 

手の行方をなんとなく追っていたのは

 

 

ちょっとボーッとしてたからで

 

 

ん?何あれ?

 

 

コーヒーですか?お茶ですか?

 

 

と私たちに目をくれることもなく、

 

 

そう聞く彼女の袖からチラチラ見える青黒い物。

 

 

落書きでもしたのかな?

 

 

いやでも、あいつの事だ。

 

 

そんなしょうもないことする時間なんてあるだろうか?

 

 

じゃあ何?

 

 

もしかして痣?

 

 

痣だったとしてなんで?

 

 

色んな不信感が広がりつつも、

 

 

始まってしまった生徒会の活動に

 

 

私は彼女に何を聞くこともできず

 

 

ただ時間が過ぎる。

 

 

お「後20分したら下校時間だから

 

鍵当番の人、今のうちに行っといで〜」

 

 

鍵当番とはもう空っぽの

 

 

学校の扉に鍵をかけていく作業で、

 

 

おんちゃんはいつも下校時間20分前には声をかけてくれる。

 

 

な「行きますよ、早くしてください」

 

 

そう彼女は私の肩を軽く叩いて、扉の方まで歩き出す。

 

 

ゆ「えっ?」

 

 

まさか、と

 

 

鍵当番の名前を記す黒板を見ると

 

 

かわいい字体で岡田奈々、村山彩希と書き出されていた。

 

 

絶対おんちゃんでしょ、と彼女を横目で見ると、

 

 

ごめんと小さく手を合わせてたりして、

 

 

もうこうなれば仕方がない。

 

 

生徒会委員なんだからやらないという選択肢もなく、

 

 

私を置いて、

 

 

そそくさと鍵を持って出て行ってしまった彼女を

 

 

私は足早に追いかけた。