熱い夜が過ぎた朝。

 

 

窓から差す朝の光が深い眠りにいた私を

 

 

夢から引き上げる。

 

 

うっすらと目を開けて、

 

 

目に入った隣の彼女はまだスヤスヤと寝息を立てて、

 

 

可愛い寝顔で眠っている。

 

 

な「かわいい、、」

 

 

柄にもなくそんなことをこぼす私は

 

 

起こしたくないと思っていても、

 

 

彼女の頬に手を伸ばしてしまう。

 

 

柔らかくてよく伸びる頬。

 

 

布団の下はきっと生まれたままの姿であろう私達。

 

 

それだけで私は

 

 

どうしようもないくらい胸がいっぱいになった。

 

 

ゆ「んぅ、なぁちゃん?、、、」

 

 

頬に添えた私の手にホカホカの彼女の手が重なって、

 

 

温かい、もうそれは涙が出るほどに温かい朝を過ごす。

 

 

ゆ「なぁちゃん、おはよ」

 

 

な「うん、ゆうちゃん、おはよう」

 

 

初めての情熱的な夜、

 

 

初めての甘い甘い朝。

 

 

私達は相当後ろ髪を引かれながらも、

 

 

お仕事の都合でそろそろ、と体を起こす。

 

 

ゆ「あちゃ〜、なんもない」

 

 

冷蔵庫を開けたゆうちゃんがそう困ったように言って、

 

 

気になって覗いてみるとまぁ見事なくらいに

 

 

中はもぬけの殻。

 

 

その空っぽさに多少苦笑いをこぼしながら、

 

 

ゆ「じゃあ、ゆう買い出し行ってくるよ」

 

 

それなりに目が覚めたころ、

 

 

彼女は、一緒に行きますよ、とぐずる私を

 

 

仕事でしょと制して行ってしまった。

 

 

その間にも刻々と迫る出勤時間に私は背中を押され、

 

 

寝巻きの自分をスーツへと

 

 

寝癖が付いた髪をまぁ人前に出れる程度に整えた。

 

 

準備が終わった頃には帰ってくるだろうと

 

 

ソファに腰を下ろしたのに

 

 

連絡も一向に帰ってくる様子もない彼女に

 

 

少しだけ胸のざわつきを覚える。

 

 

な「あぁ、もう!」

 

 

執着し過ぎちゃダメだと

 

 

必死にメッセージを送りそうになる自分を

 

 

自制していたのに

 

 

結局その我慢も水の泡、

 

 

私はいつの間にか凄い勢いでメッセージを送信してた。

 

 

20分経っても、既読でさえ付かないそれに

 

 

私はいよいよ胸が爆発しそうなほど焦ってくる。

 

 

茂木さんに連絡しても、こっちには来てないよと。

 

 

これ以上迷惑をかけるのも気が引けて、

 

 

分かりましたと電話を切ると、

 

 

私は帰ってこいと呪文のように唱える。

 

 

その時は、

 

 

彼女と過ごす一瞬のようにすぎる時間とは

 

 

比べ物にならないほどゆっくり永遠のように続いていた。

 

 

な「おかしい、絶対おかしい」

 

 

半ばそう叫びながら、私は彼女の部屋から飛び出した。

 

 

鍵を閉めることも忘れ、

 

 

どこにいるかも分からないくせに

 

 

ただがむしゃらに走り続ける。

 

 

スーパの行き道、少し暗い路地で

 

 

私は即座に足を止める。

 

 

あぁ、感じたことのない絶望感。

 

 

彼女の上着らしき服と

 

 

私の大好物ばかりが詰まったビニール袋が

 

 

床に乱雑に置かれているのを見たその瞬間。

 

 

私はその場で崩れ落ちた。