side Y

 

 

も「今日は飲もうぜ〜」

 

 

そんな茂木の叫び声で始まった会社員総出の宴会は

 

 

一年に一度のビッグイベントらしく、

 

 

隣で茂木のテンションの上がりように苦笑いしている彼女も

 

 

なんだかんだ言って楽しそうだ。

 

 

時々こちらを見て優しく微笑んだり、

 

 

机の下でギュッと握られた手が

 

 

お酒をまだ全然口にしていないはずの私の頬を赤くさせた。

 

 

な「楽しんでます?」

 

 

ゆ「うん、お陰様で」

 

 

目上の方へのお酌や挨拶に少しだけ出ていた彼女は

 

 

机に戻ってきてすぐに私に目を向けた。

 

 

も「わっちらもいるの忘れてる?」

 

 

お「てか私社長なんですけど、お酌は?」

 

 

なんて私達をからかう彼女たちを横目に

 

 

私は目の前の愛おしい彼女のほんのり赤く染まった頬を撫でた。

 

 

ゆ「酔ってる?」

 

 

な「多少は、、、」

 

 

ゆ「全然変わらないね、、」

 

 

まだ喋り方や表情はいつものままな彼女。

 

 

な「まぁ職業柄、いつ命を狙われるかわからないから、気は抜けないんで」

 

 

と酔っているせいか、

 

 

距離が近づいたのか、

 

 

ところどころで敬語が少し外れている彼女が愛おしい。

 

 

彼はいつもお酒を飲むと激変していたな。

 

 

ワインを開ける音にいつも絶望していたっけ?

 

 

ゆ「私は酔っちゃった、、」

 

 

彼女がいない間、寂しさと周りの楽しげな音にお酒が進んでいた。

 

 

こんなにお酒を楽しんで飲むのはいつぶりだろうか。

 

 

な「お酒、、弱いんですか?」

 

 

コテンと彼女の肩に頭を乗せた私のために体をこちらへ傾ける彼女。

 

 

ゆ「うん、こんなに楽しいのは久しぶりだから

 

お酒が進んじゃって笑」

 

 

普段はこんなに飲まないんだけどね、、、

 

 

なんて言い訳するように言うと彼女は嬉しそうに笑った。

 

 

な「今日くらいいいじゃないですか

 

私が部屋まで送りますから」

 

 

ふわふわする意識の中で彼女はそう優しく囁いたりなんかして、

 

 

あぁ、幸せ、、、

 

 

心が温かく満たされていくのを私は酔っていながらも確実に感じていた。

 

 

絡まる指先。

 

 

甘い雰囲気と彼女の色気。

 

 

この人に触れたい、こんなことを思うのは初めてで、

 

 

優しく微笑まれるその笑顔じゃなにか足りなくて、

 

 

もっと深い何処かへと溺れたくなった。

 

 

ゆ「なぁ、、、」

 

 

な「ゆうちゃん、、、」

 

 

私の異変を察知して、私の名前を呼ぶ彼女。

 

 

私の甘い声とは裏腹に、優しく柔らかい彼女の話し方。

 

 

ゆ「早く二人きりになりたいな、、、」

 

 

肩に預けていた頭を動かし、自分の口を彼女の耳元へ運ぶ。

 

 

ゆ「部屋まで送ってくれるんでしょ?」

 

 

そう囁くと、覚悟を決めたように立ち上がった彼女は

 

 

テーブルに座っていた同僚たちに一礼し、

 

 

私をそこから連れ出した。