も「綺麗な栞だね、貰ったの?」

 

 

会社からの帰り道、同僚の茂木と歩きながら

 

 

私は一冊の本を持っていた。

 

 

そこに挟まれた古びた赤い栞を指差した茂木は、

 

 

興味深そうに聞いてきた。

 

 

ゆ「あぁ、これ?

 

すっごく昔にいとこから貰ったの

 

多分12年くらい前かな」

 

 

も「へぇ、粋なことする子もいるんだねぇ」

 

 

ゆ「そうだよね!あの頃はまだあの子8歳だったのに

 

でも素直で優しくてね、すっごく可愛がってたんだけど

 

海外に移住しちゃったんだよね笑」

 

 

も「ほぉ〜そんな可愛い従兄弟が私も欲しかったなぁ〜」

 

 

と羨ましそうに唸る茂木を横目に私は彼女のことを思い出していた。

 

 

 

 

な「ねぇねぇ、ゆうちゃん」

 

 

ゆ「ん〜?どうしたの??」

 

 

な「なんでゆうちゃんはいつも本ばかり読んでるの??」

 

 

不思議そうに首を傾げる彼女が可愛くて、笑みが溢れる。

 

 

ゆ「それはね、いろんな世界を知るためだよ」

 

 

な「本でいろんな世界を知れるの?」

 

 

ゆ「うん、本はなぁちゃんが知らない広い世界を教えてくれるよ」

 

 

そういうと彼女は目をキラキラさせながら、

 

 

なぁも本読む!なんて張りきっていたっけ。

 

 

そしてそれから1週間経った日。

 

 

彼女は少し恥ずかしそうにこの赤い栞を私に手渡した。

 

 

な「ゆうちゃんにこれあげる!」

 

 

彼女はそう言うと私のありがとうに背を向けて、

 

 

走り出した。

 

 

プレゼントに慣れてないとことか、

 

 

まだ子供だなぁなんて笑いながら

 

 

私はその赤い栞を、読んでいた本に挟んで、

 

 

彼女を小走りで追いかけた。

 

 

 

ゆ「そういえば今年でもう20だよなぁ〜」

 

 

も「誰が??」

 

 

ゆ「その従兄弟、

 

大人になったらまた会おうねなんて約束してたの思い出しちゃった笑笑」

 

 

も「案外その約束覚えてるかもよ?」

 

 

ゆ「まさか、、」

 

 

も「しかも超絶イケメンになっちゃってたりして」

 

 

キャーっとテンションの高い彼女。

 

 

ゆ「まずなぁちゃんは女の子だし

 

覚えてるはずないよ、あの子小さかったし」

 

 

も「あっ、そうなの

 

なーんだ、つまんない」

 

 

あからさまにテンションの下がった茂木についていきながら私は思った。

 

 

もしあの約束を覚えているとしたら、

 

 

なぁ「絶対??約束??」

 

 

ゆ「うん、約束、ね?」

 

 

そう交わした小指の約束がまだ私と彼女の間で繋がっているとしたら、

 

 

大人びた彼女を見て、私はどんな顔をすればいいんだろうか。