side N

 

 

ずっと憧れていた人がいた。

 

 

12年前にまたねと言ってくれた人。

 

 

強がりだった私が唯一泣き虫になってもいいと思わせてくれた人。

 

 

小さい頃に私に優しく微笑みかけた彼女の

 

 

手の温かさをいまでも覚えている。

 

 

引越しをして、ゆうちゃんと会えなくなってから、

 

 

その憧れはだんだんと愛情に変わっていった。

 

 

まだ目を細め、鼻をくしゃっとして、笑うのだろうか。

 

 

まだあの優しい声で喋るのだろうか。

 

 

まだあの手は暖かいままなのだろうかと。

 

 

思い出すたび、行き場のない感情を持て余した。

 

 

そして彼女と約束をした日から12年の月日が経ち、

 

 

私は移住して以来、初めて日本に帰ってきた。

 

 

お「なぁちゃん久しぶり!

 

見ないうちに随分変わったね笑」

 

 

そう言いながら私の荷物を半分持ってくれたのは、向井地美音。

 

 

私の家の向かいに住んでいた、いわば幼馴染だ。

 

 

な「ほんっと久しぶりだね〜

 

おんちゃんも随分綺麗になったね笑」

 

 

そう言うと、やだーなんて冗談混じりに照れながら、笑っているおんちゃん。

 

 

目があった彼女と笑い合っていると突然懐かしいこの感覚に泣きそうになった。

 

 

お「髪も金髪に染めちゃって、なんかthe帰国子女って感じだね」

 

 

な「ははっ、なにそれ

 

まぁ一応、帰国子女ですから笑」

 

 

久しぶりに会った友と笑い合う。

 

 

安心する、居場所がある。

 

 

それってこんなにも幸せなんだなぁと実感した。

 

 

お「ゆうちゃんは知ってんの??」

 

 

な「ううん、知らない

 

てかおんちゃん以外はほぼ知らないだよね

 

みんな驚かしてやろうと思って」

 

 

お「へぇ、じゃあ私はお迎えのためにいいように使われたってことね」

 

 

な「そうじゃないよ笑笑」

 

 

彼女の冗談に私が笑っているのを横目に彼女は優しく微笑んでいた。

 

 

お「きっとびっくりするだろうな

 

大人になったなぁちゃん見たら」

 

 

な「そうだろうねぇ、

 

まずは金髪に驚いてきそうだよねぇ」

 

 

お「そりゃそうでしょ、

 

そんなキャラじゃなかったんだから」

 

 

な「まぁ、確かに

 

でもゆうちゃんもきっとすごく綺麗になってるんだろうな」

 

 

そう微笑んだ私に優しい顔を向けて、

 

 

おんちゃんは小さく頷いた。