本当はずっと好きで好きでたまらなかったんです。
抱きつきたくて、抱きしめたくて。
目を細めて笑うとことか、鼻をくしゃっとあげるとことか。
全部が愛おしくて、可愛くて。
あなたに伸ばす手を何度引き留めたことか。
そんな私を知らずにあなたは優しく笑ってたよね。
「ゆうちゃんはきっと私なんかよりもいい人がいるよ」
なんてダサいセリフであなたを突き放したのは、
あなたに幸せになってほしいとかそんなんじゃなくて、
ただ私が弱いだけだったのかもしれない。
赤い栞
〜忘れられないその笑顔〜
それは12年前の夏、
当時15歳だった私と
8歳だった従兄弟のなぁちゃんは
快晴の中、公園に遊びに来ていた。
はしゃいで、あちらこちらに走り出す彼女に
負けじとついて行こうと追いかける私。
私に追いつかれまいと、ムキになって走っていたのか。
彼女は段差に足をかけ、転けてしまった。
目の前で突然起きたことに、驚きながら、
眉を八の字にしているなぁちゃんの元へ駆け寄る。
ゆ「なぁちゃん、大丈夫???」
そう優しく声をかけると、たちまち我慢していた涙がポロポロ溢れ始め、
痛い痛い、と泣き出した。
普段は聞き分けも良く、他の親戚の子達よりかは大人びて見える彼女も
本当は転んでわんわん泣き喚きたいこともあって、
そんな私だけに見せる子供な姿に不謹慎にも頬が緩んだ。
ゆ「一緒にお家に帰って、絆創膏貼ろうね??」
泣きじゃくる目の前の子の背中をゆっくり撫でながら、
出来るだけ優しく微笑む。
安心したように頷く彼女をおんぶして、私たちは帰路についた。
な「んぅ、ゆうちゃん、ごめんね、重いよね」
なんて怪我してるくせに私の心配をする。
その姿からは彼女の人の良さを感じた。
ゆ「ううん、大丈夫、なぁちゃん軽いから」
程よい重みを感じる腕、温かい背中に頬を綻ばせながらそう答えると、
なぁちゃんは静かに頷いた。