2020514

この白鷺町2丁目の交差点で交通事故が発生した。原因は飲酒運転によるもの。

被害者は、誕生日を前日に控えていた16歳高校生。看護師を目指していたのだという。事件は非常にショッキングであり、一日をかけてその事故が報じられたが、翌日になると何事もなかったような日常に戻る。火はいつか鎮火する。もし鎮火しないものがあるとするのならば、どこかの火山くらいだろう。それと同じだった。


今日もまた、白鷺高校の紋章を身に纏い、通学路を歩き始める。空は晴れているが、そろそろ梅雨の香りがするのだろう。

ふと目を閉じ、気がつくと教室にたどり着いていた。川のせせらぎや風の心地よさに心を奪われていたからだろうか。席につくと松山と榎並が話しかけてきた。

「お前宿題やったか。今日提出らしいぞ。」

「うっそ。まじかよ。」

そんな会話を交わしながら朝の挨拶を済ませる。さて、終わっていない宿題でも進めよう。

その時だった。

『ガラガラガラ』

割と大きめの音で椅子を引いて腰掛ける少女を見た。彼女は席につくやいなや、本を読み始める。彼女には独特な雰囲気を感じた。


僕は彼女のことが気になってしばらく観察していたが、動いたのは小説の1ページだけ。一見どこにでもいる静かなキャラクターなのだが、僕には少しだけ特殊そうに見えた。


「はっ!」


彼女の観察に勤しんでいたら気がつけばお昼になっている。寝てしまっていた。いつもはこんなことないのだが、今日は人生で初めて午前の授業を完全に爆睡してしまった。そんな自分に少し嫌悪感を抱き、机に再び突っ伏すが、忘れていたことが一つある。

宿題だ。

僕だけ提出していないのだけれど、これでいいのだろうか。近くにいた榎並に声をかけたが彼はご飯に夢中なのか全く反応をしない。すると、横から声がした。

「ねぇ。」

彼女だ。おぼろげな表情をした静かな彼女は、僕にこう続けて話した。



「「貴方もゆうれいなんだね。」」