２人のコンビネーション…音夜と唯香
ライバルからそして…⑫
翌日。昼食後には音夜が旅立ち、唯香は目を赤くしながら仕事に励んだ。刑事は２人一組が鉄則だ。何かあった時には１人は危険すぎる仕事だからだ。
部署も変わったが、音夜の代わりに唯香の新しいコンビが挨拶に来た。
「冬積結城と申します。音夜さんと入れ違いになるとは残念ですが、よろしくお願いします」
丁寧に下げる頭だが、音夜に感情を乱すモノを持っていた。
「音夜さんと組んだ事があるの？」
その名を聞いただけで、唯香に微かに笑みが漏れた。
「いえありませんが、同じ部署に属した事がありまして、頭の切れの良さやフットワークの良さに憧れます。勿論、追い付く目標としてですが…」
冬積は笑みを浮かべるが、憧れではなく追い越すつもりだ。
「…やってみたら良いわ。目標にもなる人よ。でも簡単にライバルにはならないわよ。音夜さんは」
そう言って唯香が浮かべた笑みは、音夜に簡単に追い付ける訳がないと言っていた。音夜が本物の刑事だからと誇らしげだった。
そして、彼が自分をライバルだと認めてくれたからこそ、彼の横に立って事件を解決し、離れていても気持ちはひとつだと強く思った。
「彼は本物だから、憧れるだけじゃなくて本物になることね…」
唯香の大人しそうな目が、音夜の強さを語る時は強く光った。
＊ ＊ ＊
そして３年後、音夜の勤務が一息吐けたことで、２人はやっとお互いのリングの誓いをした。
時折は時間を縫って会うことは出来たが、離れてしまえば互いの家でゆっくりすることもままならない擦れ違いが多かった。それでも僅かな時間に心を抱き締め合い、お互いしかいないと…会えない時間がより強く心を寄り添わせていった。
「思ったより早くて良かったな」
教会で…予定では聞こえない筈の声が、誓いを立てる２人の耳には聞こえてきたが無視した。
「そうか？ 若い時の３年は結構キツいぞ。好きな女に自由に会えないなんて、若い分キツいもんだぞ～。同じ男ならわかるだろ？」
「ああ、そういう意味か。それなら３年は長いな…。どちらにとっても遠くて長い時間だったろうな～」
しみじみと…祭壇の前で幸せに浸りたい２人だったが、２人が付き合いだした時の部署の仲間で、耳の早い仲間が勝手にやるなと２人の式を見守りに来た。
本当は２人だけで誓いを立て、部署の方には後で報告をする予定だった。まだ静かに見守ってくれるならいいが、当たらずとも遠からずの２人の３年をネタにして遊んでいるとしか思えない声だ。
「ゴホン！」
神父が咳払いをして少しばかり静かになると、２人は誓いのキスを交わした。
唯香は近くの部署に落ち着く事が出来るようになり、音夜もあのアパートから通える範囲への警察署に暫く落ち着いた。だがまだ本腰の落ち着きではないが、２人にはそれも分かったうえで此処にいるのだ。
「これからの一生を、良いコンビとして、良い夫婦としてやっていこう」
「私で本当に良いの？」
今更のように唯香が音夜に尋ねた。
止めたと言ったら唯香が泣き出す事は目に見えているのに、音夜との差を目にする副署長クラスの上着も気になる。正式とは言い難い簡易の式は、音夜は上着だけを制服で、唯香は白いワンピースにベールで即席の花嫁花婿の出来上がりだ。もう少し落ち着いたら本物の式を挙げるが、唯香と歩き出す為の音夜なりの男の見栄だ。
「指輪も用意したのに、今更それは無いだろ？」
音夜が用意したリングは、唯香が心を込めて手作りした可愛らしいリングピローに細いリボンで結び付けられていた。
「唯香。これってリングの座布団みたいに見えるけど？」
「座布団？ 夢のある人だとは思ってなかったけど、私達がお互いの指にリングを交わすまで見守り、そしてこれからの私達のどちらかがリングを外す日が来ても、もうひとつのリングも見守りながら、再び揃った時には一緒に天に昇るのを見送ってくれるの」
「俺達が離れることがないように？」
「そう。ずっと一緒にいられるように…」
音夜はリングを外して、そっと唯香の薬指にリングを填めると、唯香もリングピローから音夜の指にリングを填めた。
「一生のコンビを、一生の誓いをこのリングに込めて…」
「一生をコンビでありライバルとして…過ごせますように」
言葉を唇に重ね互いの唇も重ね…２人は再び永遠の愛を誓った。
生涯の誓いに、唯香は泣きながら最高の笑顔を浮かべた。
ドラマ FIN
「ＯＫ！収録アップ！」
監督の言葉に歓声を上げ、収録の終了を周りは歓んだ。
≪つづく≫
ドラマはやっと終わりましたが、皆様分かりましたかしら？
めちゃ不安な感じですが、お話はもう少し続きます(^▽^;)；；；；；
あと、書きあがってはいますが、もしかしたら予定通りのアップからずれるかもしれませんのよろしくお願いします。体調がたまに微妙で。書けてはいますが…(;_:)
