２人のコンビネーション…音夜と唯香
ライバルからそして…⑦
『自信が無いならアイツは止めておいた方がいい』
ジョン役のポールが、キョーコが１人でいる時に話しかけた。
『何故？』と答えるキョーコには動揺はない。
『アイツはいつも、自信たっぷりだ』
『そうですね』
『黒髪のせいかエキゾチックな色気に、向こうでも人気があった。いつも女が追い掛けて一緒に消えることもあった』
キョーコは流石にドキッとした。ポールは意地悪な笑みを浮かべたが、キョーコが引っかかったと思ったからだ。
『アメリカで？』
いつ？ホント？キョーコは顔に出ない様に必死だった。そして「アイツを信じるな」と言う言葉を思い出した。
『ああ。だがそれだけじゃなくて、自信に溢れて多くの人を惹き付けた。ライバルだと思って勝とうとしても、気付けばその魅力に魅了される』
『彼らしいですね』
『つまりアイツの周りは、気付けば君のライバルでいっぱいだ』
『………』
『そんな女性にもキミは勝てるのか？ アイツの心をキミだけで独占出来るのか？』
『それは…わかりませんね。彼の魅力に心を奪われた１人ですから。でも彼が私だけと言ってくれるなら、頑張ります。私にとっても彼だけだから、お互いだけだと言ってくれるのなら…』
ポールが意地悪な笑みを浮かべていった。
『その言葉がダミーだとしてもか？』
「俺はキョーコにはウソは吐かない。それに俺には彼女だけだ！」
英語でポールと話していたキョーコを、不安に陥れようとしていたポールの言葉を、蓮が後ろから現れてバッサリと否定した。
キョーコは揺れた心に笑みが戻った。
『何だ。もう少しでキョーコを騙せそうだったのに』
『キョーコは騙させない。そして騙されない』
蓮はキョーコを抱き締めながら、ポールを強く睨んだ。
『えらく本気だな。わかったよ。キョーコはお前だけのモノだ』
『違う。キョーコはキョーコ自身のモノだ。俺のモノでもあるが、俺だけのモノじゃない』
『自分だけのモノと言って束縛しながら、振られたくないだけだ。役者としても女性としても彼女はまだ成長する。それを束縛しながら振られたらみっともないとでも思ってるんだろ？』
ポールの言葉は蓮を挑発しようとしていたが…。
『キョーコを俺１人で束縛出来るとは思っていない』
その言葉にポールは顔をしかめた。
『何故だ？女性としての彼女が別の男を選んだらと、怖がっているのか？ どうする気だ？』
ポールは面白半分に訊いてみた。
『彼女がそれを望むのなら、それが本気なら手を離そう』
「蓮！」
『だが、俺が負けるとは思っていない。彼女を理解して幸せにするのは、俺だけが出来る事だからな』
自信満々の蓮の笑みに、ポールも負けたとばかりにニヤッと笑った。
『お前が女性にそんなに執着するとはね。見えない良さも隠しているのか？』
『彼女の良さは本気で惚れれば分かる。彼女は彼女のままだ。そして俺を救ってくれる。愛してくれる。誰と居る時より幸せにしてくれる。向こうにいて色々あった事も、彼女がいたから救われた。まだ遣るべき事はあるが、彼女とならどんな事でも乗り越えていける』
『向こう？ アメリカで何かあったのか？ まだ連続ドラマでは俺と共演した仕事だけだろ？』
ポールと蓮が共演したのは、日本人敦賀蓮として共演した過去以外は知らない。久遠としての凍り付くような…大切な友人を亡くした時の事は知るよしもない。
『君は知らない事だ。君は俺に堂々と体当たりで共演してきていいドラマになった。あの後、他に出ないかとモデル以外のオファーも増えた。今回もいいドラマを作りたいのだが？』
『俺が主役並みのいいドラマをな』
『そう言っていられるのは今だけだ。日本のドラマもなめるなよ』
『そんなつもりは無いさ。唯香がどんな女性か楽しみだな』
ジョーク半分で口にすると、蓮の顔つきが真顔から冷たい視線に変わった。
『ジョークだよ。ジョーク』
『どうだかな…』
『お前のフィアンセだって事は聞いたよ。それも付き合うまで時間が掛かってやっと付き合い始めたのは、お前が情けなかったんだって？ 笑えるね！』
『どうとでも言え！ 大切だから言葉にして伝えるのが怖かった。失いたくないからな。彼女だけは…』
『なんだ。お前にしては弱腰か？ それだけ本気だからか』
『彼女に代わる女性などいない。それに彼女が居てくれるから俺も此処に居る』
『ただの惚気か？』
『俺にとって、彼女という存在の事実だ。まだ惚気話を聞きたいか？』
『あ～ぁ。もう止めておくよ。あと彼女を口説く事もね』
『それが正解だ。彼女だけは、唯一無二の俺のモノだ』
≪つづく≫
今回少し短めです。
次は桃です( *´艸｀) 桃の８話は１７日となります。
読まなくても話は通じます。
(久し振りだからアメ神落ちないといいけど)←落ちた(''Д'')
変則的ですが、９話は１８日で通常の２日おきの日で揃えてます。
