ヒロインの輝き 10

 

 

「京子さんも? どちらかというと敦賀さんの方が積極的だったけど?」
 キョーコは少しだけ興味を持って自分達のことを聞かれて、頬を染めながら下を向いてしまった。
「私の…場合は、子供の時に神様が出会いを用意してくれていたから…かな?」
 嬉しそうで、恥ずかしそうにキョーコは頬を赤らめた。
「子供の時? 芸能界じゃなくて? もっと前なの? ロマンチックそうね。何があったの?」
 キョーコの言い方に逸美は自分の事を忘れて身体を乗り出した。
「あのね…詳しくは言えないけど、敦賀さんとは10年以上前に…子供の頃に会っていたの。でも子供の時で約束も何もしてなくて、それでも巡り会えたから、偶然じゃなくて必然だって敦賀さんが」
 キョーコが本当に幸せそうに言うと、聞いていた逸美の頬まで赤くなった。

 

「ロマンチックでステキじゃない。でもいいわね。そうやってちゃんと言葉にして伝えてくれると、安心じゃない?」
「そ、それは嬉しいけど恥ずかしい時もあるし、それに付き合いだすまでに、ハッキリ言ってもらえるのに時間が掛かって、私も勘違いしたりして、お互いの気持ちをハッキリさせるのに時間が掛かったりしたの」
 キョーコは嬉しくとも恥ずかしい気持ちの方が大きくて、話ながら真っ赤になって肩を窄めて小さくなってしまった。
「敦賀さんでも戸惑ったの? でも、それだけ真剣だったからじゃない?」
「そうかな…」
 蓮にとっては日本に来た一番の目標があり、キョーコのような存在が出来る事は予定外だった筈だ。それでもキョーコを手放す事は出来ないと、直ぐには全て話せない事もあるが、キョーコだけだと抱き締めてくれた。
「敦賀さんにとっては、京子さんはたった1人の人なのね」
「う~ん…そうだと嬉しいかな…」
「敦賀さんの京子さんを離さないって言う視線は、本物よ。今だから言えるけど、ダークムーンの時には敦賀さんに憧れていたの」
「えっ?」
「あ、でも憧れていただけで、好きとかって言うほどでもなくて、恋人役だったのもあったからなだけよ」
 逸美が慌てて言うが、キョーコには分かっていても少しだけ寂しそうな笑みを浮かべた。
「『恋をするなら、本気で恋をさせる人』だから、私が敦賀さんに恋したように、相手の女優さんは恋をしてしまう。役者だからって分かっていても、ちょっぴり心配になるの」

 キョーコは恋人であると公表しても、抱かれたい男№1などまだまだ蓮を諦めきれないファンが多いのは分かっていた。
「敦賀さんの魅力は沢山あるから、京子さんも大変ね」
「…だから…私でいいのかなって時々思うけど、敦賀さんはお互い様だって言うけど、絶対敦賀さんの方が心配よね?モテるもの」

 

 キョーコは本気で心配しているが、逸美はそんなキョーコが可愛く見えた。
「ふふ…。敦賀さんがそう言うだけ、京子さんを愛してるから心配なのよ」

 

「もう。私の事はいいです。百瀬さんの気持ちはどうなの?」
 逸美の相談に乗っている筈が、自分の話になってしまうと恥ずかしくて、本来の相談に戻そうとした。
「そうね…。京子さんの話を聞いてると、まだ『貴島さんだけ』って言うのとは違う気がするわね。軽くて女性を大切にしてくれるのか心配な感じね」
「それを素直に伝えてみたら? 百瀬さんからしたら、もう少し信用出来ません。嫌いではありませんが、私だけを大切にしてくれる人か、分かりませんから!…って」
「そうなの。そう言うと、女性は皆ステキだとか言って、私だけを見てくれているのか分からないのよ」
「それ…貴島さんの悪いところですね…。でも、百瀬さんだけを見てくれて欲しい気持ちもあるの?」
 キョーコが少しニンマリと逸美を見ると、逸美の頬がほんのりと染まった。
「一緒にいると楽しい人ではあるけど、もう一歩というか…」
 迷う逸美にキョーコが感じる事を訊いてみた。
「あとは、一緒にいて安心出来る人かどうか。お家に2人きりというのはいきなりだけど、例えば楽屋でもいいし、気持ちを楽に出来る人か、貴島さんみたいに装って女性に軽く接している人なら、本音で百瀬さんと接したいのか」
「貴島さんって、やっぱり本気で接しているようで、女性にも軽く見せてるのかしら?」
「キレイな女性には興味津々。でも頭も悪い人じゃないから、『この人』って思えたら、襟を正すタイプじゃないかな?」
 逸美にもキョーコの言う意味がなんとなく分かるが、仕事中以外に女性に声を掛ける姿は、やはり軽いナンパをする男の気配は否めない。

 

 逸美が悩み出してしまうとキョーコも考えてみた。
「相性っていうのもあるもの。今回のドラマで久しぶりに会ったのなら、これもタイミングと見て前と変わったか見るのもいいのかも。一緒の時間を過ごせるかどうか…百瀬さんだって役者としても沢山の人と共演してきたからこそ、ホントか嘘か分かると思うけど…」
「ホントか嘘?」
「自分をちゃんと見てくれているかどうか。ナンパな口説きだけか、百瀬さんへの気持ちは本当かどうか。役者だから分かると思うわよ」
「でも…向こうも役者よ?」
「役者でも、瞳は嘘を吐かないと思うわ」
「瞳は嘘を吐かない…」
「百瀬さんなら、本物の役者の1人だから分かると思うわ」
 キョーコが自信を持って言うと、逸美は笑みを浮かべた。
「ふふ…敦賀さんとのお付き合いが、京子さんに自信を持たせてくれているのかな?」
「えぇ?」
 キョーコは声が大きくなりそうで慌てて両手で口を塞いだ。
「互いに思い合える人がいると、京子さんも前よりキレイになったし、自信が持てるのね」
 逸美がキョーコに羨ましそうに言った。
「そ、そんなに自信とかは持てている訳じゃないけど、敦賀さんの横にいられる自分でいたいとは思うようにしてるかな。敦賀さんが選んでくれたのに、情けない女性でいたくないから…」
 頬を染めながら…蓮の隣に相応しい自分でいたいと思った。
「百瀬さんも、貴島さんに限らずに一緒にいたい人を見付ければいいと思うな。一応ね、敦賀さん経由でも…ふふ…貴島さんからアプローチがあるみたいだけど、百瀬さんの気持ちでいいんだから、今回の共演はひとつのチャンスだと思って話をしてみればいいと思うわ」
「チャンスか…」
「私からは、『軽そうだけど悪い人じゃないかも』がアドバイス。百瀬さんにとって良い人かは自分で感じてみて…」
「私にとって?」
「そう。ダークムーンの打ち上げの時、貴島さんが2倍増し美人か確かめたくて私を着飾らせてくれたって言ったけど、私自身は学校の制服で行こうとしていたの」
「制服で!?」
 流石に逸美も驚いて声を上げた。

 

 視聴率も良かったドラマの打ち上げなら、それなりに着飾り目だとうとするのが普通だ。
「制服で行くつもりでホテルの入り口にいたら、『俺の欲望が…』って言いながら、折角の打ち上げだから着飾らせてあげたいと思ってくれたんじゃないかって思うの。それが優しい人と思う一面」
 撮影中にナツとしてすれ違ったが、貴島だけが見損ねて気にしていたのだが、まさかあそこまでの変身になるとは思わず、自分がキョーコを変身させたかのように自慢気だった。
「だからあんなにステキなドレスだったのね。なる程…そういう感じ方もあったのね」
「でも、良い人と相性はまた違うもの。百瀬さんにとっての良い人かどうかは、私にはわからないもの。ただの軽い人を百瀬さんに推薦は出来ませんから」
「照れ隠しで優しい人もいるものね」
「そこは百瀬さんの瞳で確かめてね」
「わかったわ、京子さん。ありがとう」
 決めた訳ではなかったが、逸美はキョーコのアドバイスに少しだけ心が動いた。

 

 

≪つづく≫

 

 

今回、恋愛相談窓口か?(^▽^;)

それも恋愛音痴の筈のキョコに?

蓮様が直したの?( *´艸`)ブブブ…

 

 

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