ヒロインの輝き 6

 

 

「…まさかそう行動する人だとは思わなかったからね。場所もシークレットバーだったから、逆にルートも辿れた。お陰で引っかき回されて苦労もしたけど…キョーコに追い付けた」

 

 流石にあの時のキョーコとのアレコレを、蓮は思い出して頭も痛くなったが……。
「それでもあの時のお陰で、絡んだ誤解も解けたし、正々堂々と告白も出来た」
「でもソレで、あっちの彼女の事務所とLMEはノータッチって事と、あちらからの謝罪と、幾らかの違約金ですませたんだろ?」
「変に長引かせる方がキョーコへの影響も悪いと思ったからね。後で分かったけど、別口とのダブルで傷付けた形になってたからね。思ったより早めに終わらせて良かったよ」
 蓮が沈んだ視線で溜息を吐いた。
「え? ダブルって…」
「内容は話せないけど、彼女の性格だと紐が絡みまくったところに別の紐が絡んだら、自分でもっと絡ませる下向きに器用なところもあるからね」
「京子ちゃんが?色々器用だよね?」
「自分の存在については、謙遜で止まればいいけど穴まで掘りそうなところがあるからね」
「そこまでだったっけ? やたらと謝ったりはするけど。料理とか器用じゃん」
「良いところはいっぱい持ってるのに、自分が一番見えてないところもあるんだ」

 

「それにしてもはた迷惑な嫁さん候補だったね」
「まあ好みも違って、俺ならどうにかすると思ったんだろうね。俺も墓まで持っていくつもりにもなっていたけど、タイミングが悪すぎだ。キョーコを悲しませる事にもなっていた。俺だけならどうにか出来た事も無理だ。自分の事は自分でやって貰わないとね」
「その嫁さん候補はどうなったのさ?」
「俺は俺で手一杯になれば、人のとこまで知らないね」
「手厳しいね。博愛主義者の敦賀君にしては」
「博愛主義なんて考えた事ないよ。頑張って自分の道を進む人は応援するけどね。それだけ。信じてるのが真実ならいいが、自分の作った虚構の幸せを作り上げようとするのは愚かだよ。自分で本物を作り上げなければ意味がない」
 蓮の言葉はあの女優には冷たかった。
「まあそうだな」
「貴島君の場合は、そういう事は君の方が経験者は語る…だね」
「敦賀くんの方が知ってそうで、遊んでないから引っかかったんだよ」
「まあそういうことになるのかな…」
「でもさ、ホントに京子ちゃん以外の女性と遊んでないの?」

 

 今まで訊くタイミングが無かったのか、貴島が興味津々と聞いてみた。
「子供の…恋ならしたことはあったけどね…」
 京都の河原の…妖精になった小さな恋。心の宝物の恋。
 ふっと懐かしさに蓮は笑みを浮かべた。
「それで京子ちゃんの大人の恋は君が初めてって事か? ぶぶ…」
「……無粋な言い方だね。彼女は誰にも渡すつもりは無いからいいんだよ」
「恋愛は、役者なら何度か経験するのもいいと思うけどね…」
「そういう出会いがあるなら、ソレも恋になるだろうけど、人に恋して愛する相手がたった1人でも、充実していれば俺はそれでいいと思うけどね」
 蓮の限りなく優しい目に、貴島は口を開けてぽかんと見とれた。
「これはこれは…京子ちゃん一途な敦賀くんだね…。もしかして、プロポーズして結婚式とか決めてるの?」
「口説いてる途中…」
 ぶっと貴島が吹いた。
「この前婚約会見したばっかだろ? 行動早いね。ヘタレじゃ無いじゃん。逃げられないように…」
「うちのお姫様は、天然ですから浚われないように予約をしっかりした方が良さそうだからね」
「はいはい。まあ、そっちも頑張ってね」
「逸美ちゃんは、まず誠実さだよ。本気なら通じるはずだ。仕事中の少しぐらいの自分の嫉妬は見えないフリして、大切なことをしっかりやる娘だからね」

 

「……何だ、君…気付いてたの?」
 貴島は少し驚いた目で蓮を見た。
「まあ…それとなく…。役で恋人になるといっても、サラッと終わらせる恋もあれば、役者でも目で分かる。真面目な娘ほど役に入るからね」
「やっぱりそうだったか。あの時押しておくのはな~んか止めたんだよね。正解だったな」
「そこは貴島君も逸美ちゃんを真剣に見ていたからじゃないのか?」
「俺モテるからなぁ~。女の子が勝手に寄って来るもんな~」
 両腕を頭の後ろで組んで、自分のせいではなく寄ってくる女性のせいにしたいらしい。
「本気なら人のせいにしないで彼女だけだと、自分の中でも確認してアピールするんだね。真面目なタイプだから君も彼女に対しては真面目に行かないと、彼女は無理だよ」
「う~~ん。逸美ちゃんなら…頑張ってみるかな…」
 貴島なりに本音を心に入れたのか、蓮から見ても頷いて納得をして見えた。

 

「しかし京子ちゃんは変わんないね」
「ホントにね。無自覚程怖いモノはないよ。自分には魅力が無いって、まだ言ってるからね…」
「それは君の教育次第でしょ?」
 キョーコの教育というのなら、恋人になっても先輩として尊敬する蓮の役目だとふってみた。
「……教育で治るなら、天然と無邪気はこの世からいなくなるよ」
 自分でもキョーコの性格を考えれば、もう少しどうにかしたいところだが、それが最上キョーコという女性の良さでもあるのだから直すのは無理だろう。…というより直るとは思えない。
「あぁ、なる程。…それは言えるかもな…」       

 

 蓮の言葉に貴島はかかかっと笑って、「まあ旦那の頑張りだな」と何度目かの背中を叩いた。

 

「それとさ…古賀くんプレーボーイなのにお堅い感じもするよね。ホント天然にコケそうだね。どっか軽そうでお堅いとこ持ってるヤツって、天然さんに知らずに引っかかりそう。まさに皮肉屋…」

 

 ククッと貴島が笑って古賀の顔を思い出してみた。

「まず顔に出てるだろ? 目が少しばかり吊り目でさ、相手を見る時は上から目線。敦賀くんに関しては上から見えないから、引いて上から見てるフリしてる」
「だからそんな目線してたのか…」
「ははは…。君はそう言うのを順位で見ないからね。京子ちゃん以外は」
「もちろん。キョーコは渡さないよ。誰にもね」
「俺はあの1回で懲りたから。それよりも周りから君と京子ちゃんを見ていた方が面白いからね。今まで見なかった、敦賀蓮の新しい顔を見えるしね。額にゴン!っとかね」
 貴島に言われて蓮は不思議そうな顔をした。
「俺の新しい顔?」
「京子ちゃんが関わると出てくる、本当の敦賀蓮の顔かな?」
 ニヤニヤと貴島が楽しそうな顔をするが、蓮は反対に嬉しそうな顔になった。
「キョーコは俺にとっての唯一の存在だから、俺の中からも新しい俺を呼び起こしてくれるのかも知れないね。俺の中から良いモノを、もっと引き出してくれる原動力。彼女にしか出来ないことだ…」

 

 

 

≪つづく≫

 

 

 

すみません、まだヤローのお話が長い(^▽^;)

一部本誌絡みネタバレか?と思わせつつ妄想膨らませてますので、どうなるのかしら?( *´艸`)

 

 

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