ヒロインの輝き 5

 

 

「古賀くんではなく、俺に指名が来て1番をもってかれる事が多かったとしても、その役に俺が必要かどうかだ。俺にとっては順番はどうでもいい。プレイボーイの役もいらない。それなら当人が納得するならいいと思ってね」
「まあ君は京子ちゃんが手に入った事だし、もう看板もいらないもんね」
「元々№1とかそんなモノはいらなかったよ。そんなモノから転がり落ちたとか言われても、元々俺はそんなイスに座っていない。欲しい彼にあげてスッキリするならそれでいい」
「俺にはくれる気なかったの?」
「今の君も、それよりも真面目な役者としての顔を磨いて逸美ちゃんの手を取る方がいいんじゃないのか?」
「ふん。それは言えるか」
「まあ彼には、熨斗付けて渡すから、彼にはそっちの方が美味しいはずだよ」
「熨斗付けて渡す? 歳暮や中元か?」
「女性にもてる看板が増えれば納得すると思うけどね」
「モテて歓ぶ看板?もしかして『抱かれたい男』の称号とか? 古賀君、もう充分モテるでしょ? まだ看板いるの?」
「まだ身を固めるつもりも無いから、遊ぶにはモテる看板は幾つあっても良いらしい」
「充分モテてるのに、誰情報?」
「キョーコ。【泥中の蓮】で共演した時、俺にも指名があったけど他の仕事があったから、彼に指名がいったらしい。そういうのが何回かあったとも聞いたけど」
「いくらでもモテたいのね、古賀くん」
 同じく女性にモテるのは嬉しい貴島の評価だ。


「俺は役者としての結果で、別名の様に呼ばれる称号は有り難く貰いもするけど、別段欲しいと思っている訳じゃ無い。キョーコとの時間が重なればそちらの方が欲しいぐらいだが、彼にはまだ浮き名を流して楽しみたいらしい」
「俺も一枚看板、欲しいかな…」
「それが本心なら手伝わないよ。逸美ちゃんに本気ならね」
「はいはい」

 

 蓮の言葉にいつになく真剣な顔の貴島に、これは上手くいけば新しいカップルが生まれるかと思った。
「君が逸美ちゃんを、しっかりと幸せにしてあげるなら…のことだからね」
「俺はいつでも付き合った娘を不幸にするつもりなんかないよ?」
「……君のその言い方が、問題なんだと思うけどね。何人もの女性と付き合ったと匂わす言い方は、事実だとしても不誠実にも聞こえる。『この人で大丈夫?』と匂わせる。一度に付き合うのが複数はあり得ないし、次から次もダメだ」
「どこが?」

 

 蓮の口からは「此処にも天然か?」と小さく溜息を吐いた。
「1人の女性ならわかるけど、どの女性でも幸せにするって言うのは博愛主義。逸美ちゃんじゃ無くてもいいって聞こえる」
「可愛い女性なら誰でも守りたくなるモノでしょう?」
 貴島は当たり前なことだとケロッと言うが、蓮は呆れた視線で言った。
「……そこが君の自由主義な処だ。『自分だけが守りたい女性を大切にする事』が大切で、そこで守られる女性は貴島君だけだと強く思って恋人は貴島君に付いていくんじゃないの?」
「他の女性も大切にしたらダメなの?」

 

 蓮が目を瞑り頭痛に近い感覚を覚えた。
(フェミニストじゃなくて博愛主義か!)
 それが貴島故の性格だとしても、特に蓮にとってはキョーコだけという一途さを考えれば、蓮の目尻がぴくぴくと動いた。
「ダメレベルじゃなくて、『君だけ』という意思表示が大切」
「敦賀くんもしてるの?」
 グピッと貴島がグラスを傾けた。
「キョーコは特に自分を下に見るからね。俺は何度でも言うよ。シリーズの主役を貰ってさえも、俺と恋人になっても、最後の自信が持てないなら、何度でも俺が言葉にするのは大切だろう?」
「そういうもの?」
「芸能人なら自分の自信を大きく持つ人が多いけど、素の状態では控えめな人だっている。どちらかというと逸美ちゃんもそのタイプだろ? 気持ちが真っ直ぐに逸美ちゃんを好きなら、『君だけだ』って伝えないと彼女のタイプは特に避けられるよ」
「…そうなのね…」
「それに、君は来るモノ拒まずで、特に女性は諸手を挙げて歓んでるからね。そこも誤解を生むところだよ」
「なる程ね。敦賀くんはニッコリ笑みを浮かべていても、壁ほどはハッキリしなくても、カーテンみたいにさり気なく間を作るのが上手いものね。大女優でも勘違いした新人でも、似非紳士の笑顔で上手く避けちゃうからね。流石、若手俳優トップだね」
 
 貴島は頷きながら、蓮の似非紳士ぶりの方に重点を置こうとしていた。
「俺は本気は本気で出してるからね。勘違いだけで騒がれないように……」
 そう言いかけた蓮が、ふっとイヤな記憶を思い出した。
「一度、向こうから迫られたね。君ともあろう男が」

 

 

≪つづく≫

 

 

 

男のおしゃべり3ページ目。面白くなかったらごめんなさい。

でも、貴島兄ちゃんって天然ですよね、本能に従った(^▽^;)

で…なははは、ゆっくり書き過ぎてちょっとコミックとかヒネ込んでおります(^▽^;)

 

 

 

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