ヒロインの輝き 4

 

 

「でも京子ちゃん。相変わらず天然というか、掴み所はないし、それでも狙うヤツも少なくならない感じだね。京子ちゃん本人が掴み所がなくってふわふわして見えるけど、芯がしっかりしてるから、敦賀くんの心配も少ないと思うけど?」
「そう思いたいけど、馬の骨は減っては増えるから心配はあまり減らない」
「俺は完全にノータッチだからね。逸美ちゃんならいい子なんだけど、いい男の貴島さんに靡いてくれないかね?」
 半分本気のセリフに、蓮は少し呆れてクスクス笑う。
「自分で言うわけね…。まあ、少しぐらいは助っ人してあげるよ」
「ありがと。君が助っ人してくれると、ハードル低くなるよね」
「……あくまでも援護射撃だよ。悪い男をひっくり返す程のことまではしないからね」
 少し突き放した言い方をすると、貴島の顔が情けないようにガッカリとして見せた。
「冷たいね…。自分はいいとこまでいってるのに…」
「君の力は借りてない筈だが?」
 蓮が澄ました顔で答えると、貴島はニンマリと笑みを浮かべた。
「そうかねぇ…あの時からやっと本気出したじゃないか? 俺に牽制掛けて、遅咲きのスタート切った『抱かれたい男』にやっと春だもんねぇ…。今回顔合わせた連中は春を過ぎちゃって散ってるのもいたけど、京子ちゃんの共演吸引力で集まった役者揃いだ。面白いシリーズになりそうだ」
「そうなるさ…」
 蓮は本気の目で呟いた。

 

「まあ一匹、古賀くん。どうなるかわからんのも混じってるね。役者としては良いとこいって、プレーボーイで浮き名を流してるけど…今更骨になって君に勝負するつもりはなさそうだけどね…」
 自分にはその気は無いと言いながらも、キョーコの演技力を買っている中に馬の骨に変わり得る予備軍だと蓮には見えていた。

 

「それとさ、古賀くんって女性の前ではプレーボーイでニッコリしてるけど、皮肉屋だよね」
「…皮肉屋ね…」
「まず顔に出てるだろ? 目が少しばかり吊り目でさ、相手を見る時は上から目線。敦賀くんに関しては上から見えないから、引いて上から見てるフリしてる」
 貴島が自分の顔で少しだけ真似てみた。
「だからそんな目線してたのか…」
「ははは…。君はそう言うとこで見ないからね。お仕事に真面目かどうか」
「後は骨になるかどうか」
「はいはい、惚気は要らないからね」

  

「そう言えば、古賀くんって『遊び人です』っていうの隠さないタイプだね」
「キョーコが言ってたけど、役にしろ抱かれたい男にしろ、俺の次で2番手にされた事が多くて俺を疎んじてるそうだよ」
「あぁ、そういえば…」

「彼にとっては、男としても役者としても、俺は目の上のたんこぶらしい」

 

 蓮は気にしていない口調だが、貴島は蓮をチラッと横目で見て納得していた。
「俺は彼についてはそこまでしか知らない。役者としても実力はあると思うけど、彼は彼だ。指名があり、やってみたい役なら全力を尽くすまでだから」
 貴島がふっと笑って、蓮らしい答えだと思った。
「ソレは君流の考えだね。芸能人なら1番しか無いよ。競争社会でトップに躍り出ても、直ぐに転げ落ちる事も出来る場所で、来年が無いかも知れないしね。それをトップで保っていられたら、イヤでも目に付く存在だ。敦賀君みたいにね」
「1番どころじゃ無いとこにいた事もあるからわからないね」
「えっ!? 敦賀君が? ウソでしょ?デビュー前?」
「……そうだね」


 此処じゃ無い場所で、キョーコといつか再会出来るとは思ってもみなかった場所だ。
「そっか。敦賀君も苦労したんだ。でも古賀くん、何度も2番手を回されるとそれなりの大人でも拗ねるもんだよ。『あと少しで俺のモノじゃなかったのか?俺はアイツの代わりか?』ってね…」
「当人も分かってはいるそうだから、キョーコにも敦賀の集まりはどうのこうのと邪魔そうなことを言ったらしい」
 蓮が小さな溜息を吐くと、貴島はプッと吹き出した。
「古賀も実力自体はあるヤツだしね。ただどうしても比較対象がいると、気になるのが実力社会の順位。敦賀くんとは俺は競争相手になる気は無いし、持ってるモノが違うから古賀みたいにムキにはならないけどね」
 うんうんと頷いて貴島は納得をしていた。


「古賀のことは俺も偶に比較されるのは知ってたよ。だが似ている部分が比較されるだけで、彼とは別人。違うと思うが、キョーコの実力をかいつつ気にしている感じが、敦賀の集まりがどうとか言いながら、気に入ってるらしいところだけが気になるだけ」
「ははは…。敦賀くんの気になるのは京子ちゃんの馬の骨になるかどうかだけだね。本気の恋は誰にも譲れないってトコか?」
 かかか…と陽気に笑う貴島だが、普段真面目過ぎるほどで大人な役者でいながら、キョーコに関しては少年になったりするほどの一途さが可愛くも見えるのが面白く感じた。
「しかし…敦賀君から京子ちゃんが逃げ出したりしたら、君仕事にならないんじゃ無い?」
 蓮はドキリとしながらも、「勝手に想像してくれ」と無表情を作って話を切った。

 

「しかしさ、古賀くんって仕事は真面目だろ? プレーボーイに抱かれたい男まで称号貰ったら、女性が集まるだろうね」
「それは仕事は真面目にやって、スキャンダルさえ起こさなければ俺は口を挟む気はないよ」
「そう? 彼が敦賀くん憎しのライバルでも、京子ちゃんは天然で引っかけるからね。旦那も目が離さない方がいいんじゃないのか?」

 

 

 

≪つづく≫

 

 

男のおしゃべりパート2 (^▽^;)

今回もだべりが多いです。

 

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