なんか、ドレスシリーズという事かな…(^▽^;)

 

 

 

ドレスの前に選ぶ物は?

 

 

 

 もう直ぐ正式に旦那様になる敦賀蓮という…先輩であり、一流の俳優であり、海外ブランドのモデルもしていて、とてもハンサムで、別の名前を持つ人で、でも優しくて、仔犬にもなって、でも…私にとっては最高にステキな夫になる男性だろう。
 ロクな恋愛経験もない私に、手取り足取り…恋も愛も教えてくれた人///。愛し合うことも本当の幸せも教えてくれた。


 そして……プロポーズは私の為に、私好みに考えてくれたのが、少しだけ火照りが治まった頬でやっと分かった。
 あまりに夢のようなポロポーズだもの…夢か現実か分からないぐらいに舞い上がり、少しだけ現実を感じてゆっくりと長い溜息が終わりかけて、現実の恋人に最高に幸せな笑顔で微笑むことが出来た。

 

『はい。貴方の花嫁にして下さい。そして貴方と幸せにずっと…暮らしたいです』

 

 そう答えてからは彼の行動は早くて、既に彼が下準備を幾つもしていると分かった。でもそれは…彼の仕事の忙しさから考えれば納得のいく早めの準備。マネージャーの社さんも一生懸命動いてくれていたのだと分かると頭が下がる。
 芸能界一忙しいと言われる彼のスケジュール管理は、社さんでないと出来ないと言われるほどに、その忙しい分単位のスケジュールから彼の為に、そして私の為に動いてくれていたのだから…。

 


 そして憧れのミューズが加われば、それは私のウェディングドレスから、披露宴のドレスと…まさに夢のようなドレスに埋もれるように選ぶのだが……

 

「あの……ミューズ…」
「ん?何、キョーコちゃん」
 テンはキョーコのこの日が堪らなく嬉しそうだ。
「ドレスと、その…コルセットのような下着…ですが……」
「ん? どうしたのキョーコ?」
 テノールの声が部屋に響いた。
「ミューズがサイズ調整もかねていらっしゃるのは分かりますが、何故蓮がこの着替えに立ち会っているのですか!?」
 キョーコが恥ずかしさで怒り気味の声で言った。
「何故って、少しでも早くキョーコのドレス姿を見たいから時間を作ってきたんだけど?」
 周りにも1ヶ月後には式を挙げることまで公表する恋人は、キョーコの美しさが映えるドレスにも惚れ込んだようだ。
 結婚式は挙げても直ぐにはハニー・ムーンに出掛けられない2人は、せめてハニー・ムーンはゆっくりと出来るようにと半年先に1週間の予定をしていた。これも社の苦労の賜でもある。

 

 

「その…蓮には当日でいいって言ったのに、女性の着替えを覗きに来るとは何ですか?」
 キョーコは少しだけ怒り口調ながら、本気ではない。
「そうは言っても少しだけ時間が空いたし、この頃は家でもゆっくり話せないし、結婚前に離婚はイヤだからね」
「それは私もイヤですよ!」
「はいはい。痴話ゲンカは犬もいらないから、少しキョーコちゃんおしゃべり禁止してて」

 

 ビスチェタイプの真っ赤なドレスは、キョーコには選ぶことは出来ないタイプだと思っていたが、肩に斜めに細めのレースが付けられたドレスだと、微かな可愛らしさと女性らしい色香のキョーコを気に入って、蓮がこれだけは外さないで欲しいとミューズにまで念押しをして決まってしまった。キョーコも細くても1本のレースがあることで、細やかな胸をさらしてしまう失敗はしなくてすむと安堵することにしたが……。

 

「ん? キョーコちゃん?」
「何ですか、ミューズ?」
「蓮ちゃん?」
「はい、なにか?」
「仲良くするのも程々にしてね♡」

 

「「はい?」」
 テンが2人にニッコリと笑みを見せるが、言われた当人達には意味が分からなかった。

 

「このドレスは少しパッドを入れていたから、それを取ればいいけど」

 

「「えっ?」」
 テンの言葉にまたも2人同時に驚いた。

 

「キョーコちゃん。思い切ってこのレースの状の肩掛け、取ってみない?」

 

 聞いた瞬間にキョーコが驚きで目を丸くした。
「えっ!? でもそんな事をしたら…。それにパッドを取ったら…///」

 

 キョーコにとってはちっぱ○胸が見えたら困るという保険なのに、テンはニコニコしながら蓮には微妙に違う視線になっていた。

 

「大丈夫よ♡ 蓮ちゃんに愛されてキョーコちゃん…ふふふ、スタイル良くなったから♡」
「ミ、ミューズ///!!」
「蓮ちゃんには分かってるでしょう? 愛しい愛しいキョーコちゃんの変化だもの♡」
 蓮の視線はテンから横へと逃げて行くが、テンの言っている意味は分かっていた。

 

「でもね、その分お式まで、途中でグラビア撮影もあるし、蓮ちゃんとキョーコちゃん、あんまり2人で遊んじゃダメよ」
「2人で遊ぶ?」
「はいはい、わかってます」

 

 キョーコは少しの間意味が分からなかったが、蓮の横を向いてふて腐れた顔と、テンの少しだけニヤニヤしたような顔で意味が分かると真っ赤に染まった。

 

「少しぐらいはカバーマークとかで誤魔化して上げられるけど、ほどほどにね」
「は…はい///」とキョーコは恥ずかしさでいっぱいだ。
「蓮ちゃんも、とびっきりのキョーコちゃんを皆に見せたいでしょう?」
「それは、勿論です」
「半年先のハニー・ムーンまで、すこぅ~しだけ恋人の時間が延びたと思ったらどう?」
「…なる程。…そういう考え方もありますね」
 蓮がふむふむと頷いて見せた。
「私はあなた達2人が幸せになってくれれば、それで充分。そのお手伝いを少しだけ出来るのも幸せよ」

 

 蓮との付き合いはそれなりに長いが、キョーコとも気付けばそれなりの月日を過ごしてきた…ただの仕事を通じた知り合いではない。

 

「キョーコちゃんも、蓮ちゃんも、必ず幸せになってね…」
 そう言うと、キョーコが泣き出してしまった。
「ミューズ…、ミューズ……」
「もうキョーコちゃんたら…まだ結婚式は先よ? 着付けで泣いて…」
 そう言いながらも…自分より少しだけ背の高い、可愛いくて自分を慕ってくれるキョーコの涙にテンもつられて涙で潤んだ。抱き締め合って、テンはキョーコの背中を優しく叩いた。
「幸せの涙はもう少し取っておきなさい」
「どうもキョーコは、涙腺が緩みっぱなしみたいです」
 蓮はそっとキョーコの肩に手を掛けた。
「それは…キョーコちゃんが今まで苦労した証で、信じられないくらいに幸せを感じているからよ。だから蓮ちゃん…」

 

「はい」
 溢れそうな涙を拭きながら、テンが蓮を見上げた。 
「キョーコちゃんを幸せにしてあげないと、許さないわよ」
「わかってます。でも俺の幸せは?」
 テンの答えなど聞くまでもない言葉を、蓮は合えて口にしてみた。
「キョーコちゃんが幸せなら、蓮ちゃんも幸せになるんでしょう?」
「そうですね。2人で幸せになります」
「2人じゃなくて、子供も生まれて、賑やかで幸せな家族を作りなさいね」
「ミュ…ミューズ…」
「キョーコちゃん。明日の仕事に響くわよ」
「は、はい…」
「まだ1ヶ月もあるのに、キョーコちゃんもしゃんとしなさい!」
「はい」

 

 テンがティッシュ箱をキョーコに差し出し、鼻をかんだり目元を擦らないように拭いたりして、やっとキョーコも少しだけ落ち着いた。
「すみません。ミューズにまでご心配をお掛けして…」
「大好きなキョーコちゃんの為だもの、力になれて嬉しいわ。でも涙を止めたり、女神のように目の腫れを引かせる魔法は持っていないから、泣くのは程々にね。結婚してから蓮ちゃんを困らせたくて泣くのはいいけどね」
「えっ? ミス・テン」
「蓮ちゃんを一番困らせるのは、キョーコちゃんの涙だと思うから…。違わないわよね。蓮ちゃん?」
「あぁ……そうかも知れませんね」
 蓮にとっての一番のウィークポイントであり、一番の大切な宝物のキョーコだからこそ、使える武器とも言えそうだ。
「私も次に会えるのは前日ぐらいになりそうだから、さっきの注意は気を付けてね。特に蓮ちゃん♡」
「少し寂しいですが、我慢します。程々に」
「程々って…」
 その言い方にキョーコが蓮を睨んでみるが、効き目は薄いとキョーコは溜息を吐いた。
「どちらにしても前日も仕事があったはずだから、あま~い夜は式まで少ないんだよ。奥さん」
 寂しいと言いながら、甘い視線にキョーコは視線を外して照れてしまうところが、いつまでたってもキョーコの恥ずかし屋な可愛らしさだ。

 

「2人共、今夜はここに泊まるの?」
 テンが訊くまでもないと思ったが口にしてみた。
「明日は少しだけ朝がゆっくり出来るので…」
「2人の時間を楽しみなさいね。でも蓮ちゃん、キョーコちゃんがお仕事行けるようにしてあげなさいよ」
「それは……」
「「当たり前のことです」よね!」
 キョーコが強く蓮を睨みながら言う口調は、前歴があったとテンにも分かった。
「キョーコちゃんを大切にしないと、後から怖いわよ。特に女性はね…」

 

 テンの流し目の目元が蓮を睨み付け、笑みへと変わると蓮も流石に横を向いてしまった。
「社長をダーリンと呼ぶ人だったね…」
「じゃあ私は今夜は帰るわ。2人共、お仕事も無理しないでね」
「はい。ミューズ」
「蓮ちゃんも程々にね」
「Yes、ミス・テン」
「はい、いい返事でした。おやすみね♡」

 

 

 

♡FIN♡

 

再びミューズ登場乙女のトキメキ

 

さて選ぶものは何だったでしょうか?(^▽^;)

 

 

 

web拍手 by FC2