【リク罠153】
書き逃げdeコラボリク罠「危険なドラマ~夏のトビラ~(仮)」
<リク罠あらすじ>ドラマ「夏のトビラ」脚本家募集?的なリク罠です。
魔人の隠密血迷い「危険な番宣」の続きを、ドラマ内容を交えながら書いちゃってください!
まじーん様の拍手御礼小話から、
第1話をかなり書き加えたりしております。
【リク罠】危険な番宣 1話
~ドラマ「夏のトビラ」~
「え? キョーコちゃん?」
社は考えるよりも先に、TV画面に映る少女の名前を呼んでしまった。
慌てて口に手をやってみたところで、ソファーに腰掛けて台本に目を落としていた蓮が、その名を聞き逃すはずはなく、社が付けた消音状態のTV画面に蓮の視線が向いていた。
蓮の忙しさは今に始まった事ではないが、キョーコも忙しさを増してしまい、最近では二人が顔を合わせる事もすれ違うことさえも少なくなってきた。そんな蓮にとって…たった一人の愛しい少女の名前に、TV画面越しであってもその姿を見たくなるのが恋するただの男…。
今日の蓮の予定は、目を通していた放送間近のこのTV局でのドラマ収録。蓮は台本に目を通して収録待ちの楽屋に居た。社も蓮の邪魔をしないようにTVの音は消音にしていた。だが、リモコン操作していたTV画面に映し出された少女を見る蓮に、消音スイッチから切り替えた。
蓮のこの後の仕事の邪魔をするつもりは無かった。少しチェックするつもりの番組であったが、瞬きも忘れて恋する少女を見つめる蓮からスルーしてしまうことは出来る筈も無い。
チェックしたかったのは、今日収録する蓮のドラマの番宣だ。この局だったのを思い出し、来週に出演する予定のバラエティ番組の下見だった。以前にも出た事のある番組だったが、メイン司会が変わるなど、構成、雰囲気も変われば蓮にも伝える必要もあるからだった。
そんな蓮の前で、トークが終わって宣伝のVTRに切り替わると、蓮は固まった。その名を呼んでしまった社も動揺したまま固まっていた。
スタジオでは生出演している京子の姿は、画面の端に小さく映るワイプで確認できる。
その姿はドラマの役柄なのか、まだ19歳とは思えない程大人びていて、とても奇麗だった。そして、蓮には社の存在を忘れるほどに、世界一可愛いく見えているだろう。いつものキョーコよりも、黒と白のレース使いの服装もあるのか、大人っぽくオシャレで役柄の表情なのか少し澄ました表情も、年齢よりも大人びた美少女に見えた。
社も蓮が身動き出来ずに画面を見ているのも、目で見なくとも気配で感じた。
女優『京子』に馬の骨が湧いてくる事は、仕方がない。芸能人であれば歓ぶべき事だ。
だから、そこまでは問題なかった。
問題はTV画面に映るVTRの方にあった。
役名は把握できていないが、ベッドに腰掛けている京子には、問題はない。
服装は今日の番宣と同じ服で、これまた問題なし。
携帯電話で楽しそうに話しているとこは……。
(はぁ?)
社は心の中で開いた口が閉まらない状態になってしまった。
何故なら京子の足元が…イロイロ問題ありだったのだ……。
何故にヒールで…半裸の男を踏みつけながら、電話しているのかな?
どうしてそんなに楽しそうなのかな?
一体どんな役を演じているの…キョーコちゃん!!?
社が心の中で突っ込みながら叫ぶと、はっと気付いて担当俳優を視線だけで振り返った。
それを観て固まってしまったのは、役柄を想像することが怖い蓮と、彼に想像させるのが怖いマネージャーだった。
しかし、それはVTRが終わってからの話。
今の二人の気持ちも反応も、視聴者と共にあった。
スラッと伸びた美しい足がのせられているのが、只の踏石かと思ってしまう程、足元の存在を無視して電話に熱中する役の京子。
男の裸の背中をピンヒールで甚振りながら、その顔には実に美しく、そして無邪気な微笑みが浮かんでいる。
美しいスタイルの良い少女の無邪気な微笑み。その良い足先にある…ピンヒールが甚振る半裸の男が時折動くことで…シュールな現実感。
自分ではないと安心すると同時に、自分があの男だったら…と想像したなら?
逆にその姿に…ゾクゾクとしてしまうM気を刺激された全国の男達が山のように居ただろう。
「………」
「………」
TV局の収録待ちの楽屋で、言葉も発せずにTV画面のシュールな世界を受け止めるには、普段のキョーコを知っているだけに声どころか息も出来ない男達。言葉を発することも出来ない蓮と社に向かって、ふいに語りかけたのは、生出演の京子の声だった。
『今夜10時スタートの『夏のトビラ』、観てくださいね。そして…あなたも夏へのトビラ…開けてみませんか? わ・た・し・と…』
アップで微笑み恍惚とした表情の美女の姿に、体温を急上昇させてしまった男達。可愛いと感じるよりも小悪魔な笑みは、以前に『ナツ』が浮かべていたコケティッシュで男を誘う笑み…。特に最後の「わ・た・し・と…」と言う時に、キレイな人差し指の先を唇に当て…唇をほんの少し窄める仕草は、キョーコの唇に誘っているように見える。
2人の男は画面がCMに切り替わったあとも、暫くは茹だったままの頭と身体を維持していた。そしてその思考は言葉に出来ないほど頭の中で?マークを巻き散らかしていた。
(あなたもって、あなたのトビラ? って言うか、キョーコちゃん? ナツ…ナツになってない? ナツ似だよね? で、どんなトビラだよキョーコちゃん!?)
(あなたのトビラ? 夏のトビラ? と言うか、モデルウォークのナツ? ナツみたいで、君はどんなトビラなの? 俺のトビラは…俺が開けたいトビラは…君の心のトビラだけなんだ!! )
そして2人が同時に思う事は…。
(女優京子としての役作りは、普段の彼女を知る者には別人の妖しさが完璧すぎて怖いぐらいだ。特に、ヒールで半裸の男をグイグイやるところは…ヒールが肌に食い込む処が…シュール過ぎて怖い……)
そんなリアルにはあり得ない世界から、蓮も社も現実の世界に気持ちが戻るには時間がかかってしまうほど衝撃的なキョーコの番宣だった。
CMが明けた画面の中では、すでに番宣のコーナーが終了しており、そこには京子の姿も消えていた。そして司会役の男がキョーコの美しさとドラマへの期待を語って番組は終わった。
キョーコの姿が完全に消えた事で、二人は詰めていた息と共に熱を吐き出した。まるで京子の世界に引き込まれて、やっと現実に戻ったかのように……。
だがそれでも2人は無言だった。
互いに気まずい言葉を迂闊に口にしそうで声にならなかった。社は少女を思う蓮への地雷は避けたくて、蓮は少女への思いがかい間見える言葉が、心配なのか嫉妬なのかとマネージャーたる社に知られて遊ばれたくはなかった。
社は部屋にかかっている時計に目をやった。
(あと10分か…)
蓮の出演するドラマのスタッフが、撮影の用意が出来たことを知らせにくるまでの僅か10分が、2人には経験した事のない長~い10分となった。
《つづく》
今回の話は、私には珍しく連載の形で書こうと思います。
ただ定期的にアップ出来るかわかりませんので、スローテンポでお待ちいただければと思います。
へちょれていた体調が戻ったと思ったら、またヘタレちゃったので、妄想書きながらリハビリします。(^▽^;)
あと、続き妄想もちょっぴり書きたいので…(・∀・)ニヤニヤ